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第10話 復讐相手の交換
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ホテルという場所を出るときも扉が勝手に開きます。
タクシーという不可思議な乗り物に乗る時も扉が勝手に開きます。
(カオリの世界はなんでも自動で行ってくれるんですね)
《ん、ああ。自動ドアの事? タクシーは特別だけど……リナージュがいた場所に比べちゃうとね》
全てが珍しく映る世界。それは知識があろうがなかろうが変わることはない。
もっとも何も知らない状態で放り出されたとしたら、頭がパンクしてしまいそうですけど。
このタクシーという自動車も一体どういう原理で動いているのかよく分かりません。
馬が引かないで走る乗り物。カオリの知識ではガソリンという液体を使用して走っているらしいのですが、意味不明です。
色々と勉強したい気がしますが、今は現状を打開していくほうが先。
カオリはどうやらお金に大変困っている様子。
このタクシーという乗り物もお金がかかる。
夜は危ないからと勧められて乗ったのですが、カオリに無理をさせてしまっているのかもしれません。
(カオリのことは大体わかっています。コウジという男性に騙されたこと。借金を背負っていること)
《あ、うん……。嫌な気分にさせちゃったかな?》
(私の事はどうでもいいです。私もあちらで嵌められて捨てられた身。同じ境遇。一心同体。いまや私自身と同じくらいに大切に感じてます)
《そういわれると嬉しいな。私、リナージュに憧れてたからさ》
(ゲームの世界……ですか……。それだけは正直な話解せません。私は私として人生を生きてきましたから)
《そうだよね。そうだと思う。ゲームでは知り得ないことも私の中に流れ込んできたんだから》
一体どういうことなのか。
私がいた世界が本当の世界なのか、こちらの世界が本当の世界なのか、それとも両方偽物なのか、両方本物なのか。
おそらく誰にも結論を出すことはできない問いかけになるでしょう。
ならば、今、この時を見ていかなければならない。
私がいた世界に戻れるとは限らないのだから。
(まぁそれはいいとしましょう。で、ですよ? 借金ですが……なぜご両親を頼らないのですか?)
カオリの知識によるとカオリは中々の家柄の生まれのようなのです。
本来であれば今背負っている借金は、背負う必要もなかったのではと思う程に。
《親に迷惑かけたくなかったというか……心配かけたくなかったというか……。コウジとの将来だけ見てたというか……ね?》
(ね? じゃありませんよ。カオリは私よりも一回りも年上なのですからもっとしっかりして頂かないと)
《う、うぅ。年齢の事は言わない約束だよ。い、今はその体をリナージュが使ってるんだからね!》
それを聞いてカオリのカバンに入っている鏡を取り出して、自分の顔を確認してみることにしました。
《あーあーあー。見ちゃだめー》
カオリは声だけで制止をかけてきますが、全く抑止効果はありません。
鏡に映るカオリの姿は、正直言って美人な方だと思いました。
薄く茶色に染めた髪の毛が僅かに波をうっていて、なんとなくお洒落な感じを出しています。
化粧?というのでしょうか。それをしているようですが、整った顔立ちに中々色っぽい雰囲気が出ていて、こんな風に成長したいと思える程です。
(カオリは美しい方なんですね。なんだか少し嬉しくなってしまいました)
《え、そう……? そういわれると照れるなぁ。リナージュがあまりにも可愛かったから……》
(え、カオリはそういう風に思っていてくれてたのですか? 私も少し照れてしまいます)
《はぁ~できれば私の顔で照れるんじゃなくて、リナージュが照れてるところを見たかったよ》
(そうですか? じゃあ私がカオリが照れてるところを鏡で見てみますね)
《いや、待って! なんかそれおかしくない?》
慌てる様子がおかしくてつい笑ってしまうと、タクシーを運転してくださってる方がチラリと目線を向けてきました。
小さく頭を下げると、照れた様子で前に向きなおしましたが。
やはりカオリが美人だから男性がこのように反応するのだと思います。
先ほどのエレベーターでの相沢さんという方もそうだったわけですし。
(ふふ。それで借金ですが……ご両親に立て替えていただきます)
《え、ええ……。それはちょっと言いにくいというかなんというか……》
(何を言っているのですか? 言うのは私です。カオリは黙って情報だけ教えてくれればいいんです)
《それはちょっと悪いような気が……》
(カオリは言ってましたよね。あちらの世界で私の代わりに復讐してくれると)
《あ、うん、言ったよ。今も戻れるならそのつもりだけど》
(なら、こちらの世界では私がカオリの代わりに復讐するのが筋というものではないですか?)
《ええ!? それは……でも……コウジ……》
(今でも大切に思っていますか? 私もアイゼンのことは正直複雑な気分です。だからこそ復讐相手を交換するのが有効になると思います)
《なるほど……。なるほどね……。私は自分の事よりも、リナージュを嵌めた相手のほうが許せない》
(私はカオリを嵌めたコウジという方を許せません。実は私は少し性格が悪いと有名でしてね……)
《あ、うん、知ってるよ。実際こうしているとそんな風には全く感じないんだけど》
(そういわれると何となく複雑な気分になるんですけどね。結構根に持つタイプなんです)
《う、うん。頼もしいかも。でも、あっちの世界に帰れるかは分かんないよ?》
(別に構いませんよ。私はただカオリを嵌めた人間が許せないのです。ただ、それだけです)
《あはは。ありがと。リナージュがそう言ってくれると心強いよ》
そんなやり取りをしている間にカオリの自宅前まで辿り着き、お金を払ってタクシーから降りることになった。
タクシーという不可思議な乗り物に乗る時も扉が勝手に開きます。
(カオリの世界はなんでも自動で行ってくれるんですね)
《ん、ああ。自動ドアの事? タクシーは特別だけど……リナージュがいた場所に比べちゃうとね》
全てが珍しく映る世界。それは知識があろうがなかろうが変わることはない。
もっとも何も知らない状態で放り出されたとしたら、頭がパンクしてしまいそうですけど。
このタクシーという自動車も一体どういう原理で動いているのかよく分かりません。
馬が引かないで走る乗り物。カオリの知識ではガソリンという液体を使用して走っているらしいのですが、意味不明です。
色々と勉強したい気がしますが、今は現状を打開していくほうが先。
カオリはどうやらお金に大変困っている様子。
このタクシーという乗り物もお金がかかる。
夜は危ないからと勧められて乗ったのですが、カオリに無理をさせてしまっているのかもしれません。
(カオリのことは大体わかっています。コウジという男性に騙されたこと。借金を背負っていること)
《あ、うん……。嫌な気分にさせちゃったかな?》
(私の事はどうでもいいです。私もあちらで嵌められて捨てられた身。同じ境遇。一心同体。いまや私自身と同じくらいに大切に感じてます)
《そういわれると嬉しいな。私、リナージュに憧れてたからさ》
(ゲームの世界……ですか……。それだけは正直な話解せません。私は私として人生を生きてきましたから)
《そうだよね。そうだと思う。ゲームでは知り得ないことも私の中に流れ込んできたんだから》
一体どういうことなのか。
私がいた世界が本当の世界なのか、こちらの世界が本当の世界なのか、それとも両方偽物なのか、両方本物なのか。
おそらく誰にも結論を出すことはできない問いかけになるでしょう。
ならば、今、この時を見ていかなければならない。
私がいた世界に戻れるとは限らないのだから。
(まぁそれはいいとしましょう。で、ですよ? 借金ですが……なぜご両親を頼らないのですか?)
カオリの知識によるとカオリは中々の家柄の生まれのようなのです。
本来であれば今背負っている借金は、背負う必要もなかったのではと思う程に。
《親に迷惑かけたくなかったというか……心配かけたくなかったというか……。コウジとの将来だけ見てたというか……ね?》
(ね? じゃありませんよ。カオリは私よりも一回りも年上なのですからもっとしっかりして頂かないと)
《う、うぅ。年齢の事は言わない約束だよ。い、今はその体をリナージュが使ってるんだからね!》
それを聞いてカオリのカバンに入っている鏡を取り出して、自分の顔を確認してみることにしました。
《あーあーあー。見ちゃだめー》
カオリは声だけで制止をかけてきますが、全く抑止効果はありません。
鏡に映るカオリの姿は、正直言って美人な方だと思いました。
薄く茶色に染めた髪の毛が僅かに波をうっていて、なんとなくお洒落な感じを出しています。
化粧?というのでしょうか。それをしているようですが、整った顔立ちに中々色っぽい雰囲気が出ていて、こんな風に成長したいと思える程です。
(カオリは美しい方なんですね。なんだか少し嬉しくなってしまいました)
《え、そう……? そういわれると照れるなぁ。リナージュがあまりにも可愛かったから……》
(え、カオリはそういう風に思っていてくれてたのですか? 私も少し照れてしまいます)
《はぁ~できれば私の顔で照れるんじゃなくて、リナージュが照れてるところを見たかったよ》
(そうですか? じゃあ私がカオリが照れてるところを鏡で見てみますね)
《いや、待って! なんかそれおかしくない?》
慌てる様子がおかしくてつい笑ってしまうと、タクシーを運転してくださってる方がチラリと目線を向けてきました。
小さく頭を下げると、照れた様子で前に向きなおしましたが。
やはりカオリが美人だから男性がこのように反応するのだと思います。
先ほどのエレベーターでの相沢さんという方もそうだったわけですし。
(ふふ。それで借金ですが……ご両親に立て替えていただきます)
《え、ええ……。それはちょっと言いにくいというかなんというか……》
(何を言っているのですか? 言うのは私です。カオリは黙って情報だけ教えてくれればいいんです)
《それはちょっと悪いような気が……》
(カオリは言ってましたよね。あちらの世界で私の代わりに復讐してくれると)
《あ、うん、言ったよ。今も戻れるならそのつもりだけど》
(なら、こちらの世界では私がカオリの代わりに復讐するのが筋というものではないですか?)
《ええ!? それは……でも……コウジ……》
(今でも大切に思っていますか? 私もアイゼンのことは正直複雑な気分です。だからこそ復讐相手を交換するのが有効になると思います)
《なるほど……。なるほどね……。私は自分の事よりも、リナージュを嵌めた相手のほうが許せない》
(私はカオリを嵌めたコウジという方を許せません。実は私は少し性格が悪いと有名でしてね……)
《あ、うん、知ってるよ。実際こうしているとそんな風には全く感じないんだけど》
(そういわれると何となく複雑な気分になるんですけどね。結構根に持つタイプなんです)
《う、うん。頼もしいかも。でも、あっちの世界に帰れるかは分かんないよ?》
(別に構いませんよ。私はただカオリを嵌めた人間が許せないのです。ただ、それだけです)
《あはは。ありがと。リナージュがそう言ってくれると心強いよ》
そんなやり取りをしている間にカオリの自宅前まで辿り着き、お金を払ってタクシーから降りることになった。
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