二度の婚約破棄の恨みは2倍?4倍?いいえ、10倍です。

こたつぬこ

文字の大きさ
17 / 21

第17話 公爵はリナージュを溺愛してるのね……

しおりを挟む
 私がそう宣言した途端フォレアス公爵はガタンと椅子を揺らして、大声で笑い声をあげた。

「はっはっはっは! リナージュ、三国を滅ぼすと言ったのか? これはまた大きく出たな……!?」

【ええ。父の言うとおりですよ。カオリはそんなことを考えていたのですか? 国を滅ぼすだなんて……】

(だって、そうじゃない? 私利私欲のために公爵家を滅ぼしたんならその報いは受けるべきだよ。
 となると10倍じゃこの国だけじゃ足りいないし、手を組んでたのは三国なんだから)

【確かに言われてみればそうなのかもしれませんが……】

(だって、想像してよ? リナージュが捕らわれて、まぁおそらくはいずれ殺されちゃうはずだった。
 で、ここの家も攻められて、お父さんもアレスくんたちもエルビスさんも皆殺されちゃうんだよ。私は許せないよ、そんなの)

【改めて聞くと私も心に怒りがふつふつと沸いてきました。しかし……大変ですよ? リンガイア帝国はゲームでは関わることのない国でしょう?】

(そうだね。でも、もうそういう次元の話じゃない。だってこの国だけをどうにかしても意味ないし、亡命なんて以ての外。そうじゃない?)

【先ほどカオリが言っていた家を捨てなければというのは……?】

(一時的に……だよ。この家を守れるのならベストだけど……ね。と、あんまり話しているとお父さんに不審に思われちゃうから)

 私は考えていたふりをしていたのをやめ、真剣なまなざしを向けた。

「大きくなんて出ていません。ただ本気でそう思っているまでのこと。
 私は分かったんです。嵌められた恨みは10倍で返すのが礼儀なんだと。容赦をしていてはまた同じことを繰り返されるんだと」

「ふむ……。だが、それが可能だとは思えん。まずどうやってリンガイアと同盟を結ぶ?」

「私が直々に赴いて交渉を行います」

 そう言い放つとフォレアス公爵は椅子から立ち上がって目を見開いた。

「なんだとっ!? リナージュが? 確かにそれは……。いや、まて、まずこの状況をどう切り抜けるのだ?
 それができないとお話にならん。絵に描いた餅だ。それに移動手段も確保できるとは思えん。まず追手がかかるだろう」

「それも私が何とかしますよ。私、目覚めてしまったのです。魔法の理というものに。
 魔力が無限であるなら一人で国を落とすことも出来ると思いますけど……有限なのが残念です」

「な……? 一人で国を落とす……? リナージュ、お前は一体……。いや、流石は私の娘というべきなのか……?
 絶対佳人とも言えるほどに可愛い上に他人が羨む程に優秀に育ってくれて……父さんは涙が溢れてきたぞ」

 そう言って懐からハンカチを取り出すと本当に流れた涙を拭き始めた。
 私のイメージではこんなキャラではなかったのだけど……んん。

(お父さんってこう言うキャラ? リナージュの事溺愛してる?)

【恥ずかしながら父は私の事となると見境が……。婚約の時のことも知識としてあるのでは……?】

(た、確かに。王様にワインをぶっかけてんじゃん。それでも怒らなかったのは計略のためってことね……腹黒……」

 記憶を探ってみるとリナージュの婚約を申し込んできたときに、フォレアス公爵は盛大にワインをぶっかけていたようだ。
 しかも注ぎ直して二回も。むちゃくちゃだ!
 それで婚約破棄されたとなったらはらわた煮えくり返っても仕方がないだろう。意外と冷静だと思ってたんだけど。

「私もお父様の娘として生まれて心の底から誇らしいと思っていますよ」

「リナーーーージュゥゥゥゥ!!」

 さらにボロボロと涙を流し始めハンカチで必死に拭いている。
 ハンカチは涙でぐしゃぐしゃだ。イケメンダンディなおじさまももうどこにもいない。なんだか可愛いけど。

【こら! カオリ、また悪ノリしてるでしょう? 父は直ぐその気になるんですから!」

「いや、面白くてつい……」

「ん? リナージュ……今何か言ったか……?」

「あ、いえ、なんでもございません。少し気になったことがありまして……気にしないで頂けると嬉しいでしゅ」

 ついつい口に出てしまいそれを早口で誤魔化そうとしたら噛んでしまった。なんたること。なんたること

【口に出ちゃってるし噛んじゃってるじゃないですか! 危険です、危険】

(いや、これこそつい……。リナージュが話しかけてくるんだもん。でも、ほら見てよ)

 フォレアス公爵は「珍しく慌てて噛んだリナージュ可愛いな」と惚けた様子だった。
 噛んだことによるごまかし作戦は大成功という訳だ。ということにしておこう。

「コホン……。それでですね、ご相談したいことがあってここに馳せ参じたわけです」

 私の態度を見てかフォレアス公爵も居住まいをただした。

「どうした、急に改まって。父さんとリナージュの二人だけだ、そんなにしゃっちょこばる必要はないぞ」

「事態が事態ですから。
 それでですね、ご相談したいことはどこまで戦線を保てるか……ということなのです」

「それは敵の導入戦力によるな。今囲んでいるレベルであるならうちを落とす事は敵わん」

「でしょうね。ですが、今のこの戦力は先遣隊にすぎません。本来であれば私を捕らえて、それから増強した兵力で叩こうというのがあちらの出方だったはずです」

「いや、お前が捕らえられなくて本当に良かったと思う。もしそうなっていたら私も我を忘れていたかもしれん」

 その言葉を聞き、それも狙いだったのかもしれないと頭をよぎる。
 ゲームではその描写はなかったけれど、当然視野に入れることのはず。

(リナージュが捕らえられて人質として使われたって可能性がある……?)

【今考えてみればその可能性は高いです。普通に全面戦争が起きれば、セントフィールド公爵家が容易く落とされることはないと思いますから】

(それも計算づくってことかな……。無実の人質を取るとかどんだけ卑劣なんだ。やっぱ三国は滅んで良し)

【ふふ。カオリが滅ぼしてくれるんでしょう?】

(あ、うん、リナージュの体でね。……もし元に戻ることがあったらごめんね?)

【構いませんよ。稀代の悪役令嬢。そう呼ばれるのも悪くはありません】

(地べたに這いつくばらせて、泣いて命乞いをしても絶対許さない。なってやりましょう、悪役に!)

【なんだか楽しそうですね】

 リナージュと心を共にしてればなんでもできる、そんな気がする。
 やれるだけやってこの手で人生を掴みとる。それが私たちの生きる道だ。

「私はあのような低俗の輩に捕らえられたりはしませんよ。実力が不足し過ぎてますから」

「そうか、そうだな。リナージュは私の誇り、セントフィールド家の象徴だ」

「いや、流石にそれは大袈裟です」

「大袈裟なことがあるか! 父さん亡き後はリナージュにセントフィールド家を継いでもらいたかったくらいなのだ」

「そんなことを言ったらアレスが妬みますし、いさかいを生みます。私は私で自分で未来を掴みとりますから」

「そ、そう言われると寂しいではないか。…………昔みたいに父さんと一緒に寝てくれてもいいんだぞ?」

「無事にミッションを達成できたら、一度くらいは添い寝をして差し上げてもいいでしょう」

「な、な、な、な、なんだってぇぇぇ!? よし、父さんは頑張るぞ! まずは何をすればいいんだ?」

 フォレアス公爵はテキパキと体を動かしたが、結局何をやればいいのか分からず膝に手を置いた。
 非常に面白い動きだったよ。やっぱりなんか可愛いし。

(リナージュのお父さん楽しい人だね。添い寝してあげてね)

【カオリが煽り過ぎなんです! 添い寝は……別に構いませんけど、カオリがすることになるのでは?】

(ん、ん。別にいいけど、私が添い寝すると普通に男の人と添い寝って感じになっちゃうんだよね。実年齢からしたら全然気にならないレベルだし)

【変なことはしないでくださいよ】

(そ、それはしないけどさ……。まぁいいや。いつまで敵も待ってくれるか分かんないし、動くならこっちから動きたい)

 ということで、話を続けていく。
 必要なのはここをなるべく守ること。
 ただ相手を倒すよりもこちらの犠牲を減らすことを優先して、動くこと。
 それでも守り切れないようだったら家を捨ててでも逃げること。

 だからといってそれが負けという訳ではない。戦術の一つとして逃げるが勝ちということ。

 普通なら聞き入れてくれないだろう願いも、リナージュからの頼みということでフォレアス公爵は素直に聞き入れてくれた。

「では、まずはこの周りにいる蟻の群れを蹴散らしてくるとしますか」

「う、うむ……。本当にわが愛しの愛娘だけで良いのか?」

「なんですか、その言い回しは……。大丈夫です。言ったでしょう? 魔法の理を理解したと……」

 そう口にし私は部屋を後にし玄関に向かっていった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...