二度の婚約破棄の恨みは2倍?4倍?いいえ、10倍です。

こたつぬこ

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第19話 蹂躙と魔力酔い

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「「「「わああああああああ」」」」

 私のカウントが恐怖を煽ったのか、兵士たちが叫び声を上げながら雪崩のように門の中へと押し寄せてくる。
 といってもその数は二割程。
 本当に残念だけど残りはどうなろうと知ったことではないね。

「……1…………0。賢い選択に私は称賛を差し上げましょう。
 皆様方、あちらの庭に集まって“力”というものをご覧になっていてください」

「くそおおおお。裏切者どもめらぁぁぁ!」

 おそらくは寝返ったりはしないと踏んでたのか、今の騒ぎをポカンと惚けて見ていた指揮官が思い出したように声を荒げた。
 先ほどまで味方だった人たちに裏切者とは本当に愚かな言い様だよね。

 私はセントフィールドの敷地内に集まった兵士達の周囲を魔法で囲った。
 キラキラと輝くオーロラのカーテンのようなものが地上から伸び上がっていく。
 逃げられないように、というよりは被害にあわないようにするためだ。
 魔法の力でその空間内にいる兵士達だけに声を届ける。

「終わるまで待機しておいてください。悪いようにはしませんので」

 本当にこちらの味方になってくれたのかは分からない。
 けれど、とりあえずは信じてみたいと思う。
 悪役になるのは構わないけど、悪に堕ちるのは避けたいから。

「それではあなたの顔も見飽きたので、ここらで終幕とさせて頂きます。さようなら」

 私は微笑んで指揮官に手を振った。優しく、天使のように優しくだ。
 同時に私の眼前でつむじ風が巻き上がり、それはどんどん巨大化していく。

「ひ、ひぃぃぃぃ。化け物だぁ……!」

 もう指揮官に威厳というものは全く存在していなかった。
 吹き荒れる風、土砂を巻き込み草木を巻き込み、そしてハリケーンへと成長していき兵士たちの体を次々と飲み込んでいく。
 飲まれたものがどうなるかは分からない。

 多分無事じゃないんだと思う。

 でも、平和を目指さなかったのが悪いんだ。

 私だって心はある。けれど、絶対に容赦はしない。

 ハリケーンはごうごうとうねりながら屋敷の周囲を回っていく。

 ついにこの時が来た。

 もう気合を入れて向かって来ようなどという兵士は一人もいない。
 阿鼻叫喚がまるで私が作り上げたハリケーンと同じように巻き起こる。
 逃げまどう兵士たち。

 しかし。

 ハリケーンは逃がしてはくれない。
 なぜなら私がきっちりコントロールしてるから。
 屋敷の周りを一周し兵士たちを一蹴した私は、門の前に戻ってきたハリケーンを王城に向けて一直線に放った。
 なるべく家屋がない道を選んだけれど、巻き込まれる人間も出るだろう。

 申し訳ないという気持ちはある。
 街を平和に生きてきた人に罪はない。

 けれど。

 私は謝ったりはしない。罪を受け入れて、そして、この国の上層部を滅ぼしつくす。
 流石にこの程度の攻撃は王城の魔法部隊がなんとかしちゃうと思うけど、態勢を整えるのに時間はかかるはずだ。

【やってしまいましたね】

(うん。やっちゃったよ。ごめんね、罪のない人をリナージュに殺させちゃって)

【いえ、いいんです。戦争とはそういうものですから。綺麗ごとだけ言っているわけにはいかないのです】

(気分は……微妙だけどねぇ。ま、なるべく被害を少なくして街の人たちは幸せに暮らせる国になってくれればいいと思うよ)

【そうですね。そのために頑張りましょう】

(頑張ろうね! でも、ん。ちょっと魔力使いすぎたかもしれない……。頭がくらくらする)

【それはまずいです。できたら屋敷へと戻ってください。兵士たちは……エルビスにでも言付けを残して】

(分かった。飛んで戻るくらいの魔力はあるし……)

 私はリナージュの言うとおりに屋敷へと戻ることにした。
 惨状と言えば惨状だが、庭のカーテンで囲まれた兵士たち以外は綺麗さっぱり片付いた。
 年末の大掃除はまだまだこれからだけど。

「お嬢様っ! 大丈夫ですか!?」

 屋敷の前で見ていたのかエルビス達私兵団が私の事を出迎えてくれた。
 いや、執事やメイド、姉弟たちもいる。フォレアス公爵はいないようだけど。

「はい、大丈夫です。ただ魔力を使い過ぎました……。私はやり過ぎてしまったでしょうか?」

「いえいえいえいえ。さいっこうの晴れ舞台でしたぞ! お嬢様には少々無骨すぎる部隊でしたがな。私、エルビス、お嬢様の活躍に感激いたしました!」

 その言葉を合図にしたように皆から拍手が鳴り響いてくる。
 アレスくんを含めた姉弟たちも歩み寄ってくる。
 皆メインキャラクターではないので金髪碧眼だ。それでも顔立ちは整っていてみんな可愛いと思う。

「姉さん!」

「お姉ちゃん、凄かった」

「背筋がぞくっとしちゃったよ」

 アレスくんとオリビアちゃんとフォーキンくん。
 私と血が繋がっているという表現は微妙なところだけど、リナージュの大切な姉弟たち。
 ならやはり阿修羅になってでもこの笑顔を守らないといけないと心に誓った。

 私はぽんぽんぽんと頭を叩くとニコリと微笑みかける。

「怖かったでしょう? 大丈夫、私が守ってあげるからね」

「ぼ、僕はちゃんと戦えるよ。姉さんだけに負担はかけられない!」

「ありがとう、アレス。お姉ちゃんは少し休むから何かあったら教えてちょうだいね。
 それが今は一番の協力かな」

「分かりました! 姉さんはしっかり休んでください!」

 私は姉弟たちに笑顔を向けた後、エルビスさんに声をかける。
 兵士たちの処理をしといてもらわないといけないし、警戒もまだ解いていいわけじゃない。

「エルビスさん、セントフィールド家に下った方々は丁重にお出迎えしてあげてください。
 敵か味方かの判断は難しいですが、それを疑いはしないように。そうしてこそ私たちは真の君主として国を率いる立場に立てる筈です」

「そこまで考えておられるとは……。分かりました、こちらは心配いりません。それよりお嬢の顔色があまり良くない様子です。おい!」

「いえ、大丈夫です。こちらに気を配ってください。私は大丈夫ですから……」

 人を呼ぼうとしたエルビスさんに制止をかけて私は自室を目指した。
 今はこの煌びやかで広い廊下がただただ辛い。

【魔力酔いは辛いですが、魔力が回復さえすれば治るので……。もう少しです、頑張ってください」

(ん。あんまり調子に乗るのは危険ってことだね。
 いやーでも、これからだしね。アイゼンが苦しむところを早く見たいよ)

【今はカオリの方が心配ですよ。さ、着きました。開けれますか?】

(うんー大丈夫。じゃぁおやすみなさい)

 そう言ってだるい体をベッドに横たわらせ、ドレスのまま目を閉じる。
 爽快感はあった。けれど、罪悪感もあった。
 もう少しうまくやる道も模索できたかもしれない。

 でもそれは今後考えていく課題。
 色々な考えが頭を巡っては消えていく。

 ただ、今はちょっと疲れちゃったよ。

 寝ればリナージュと交代な気がしたので、私はしばしの間休憩することにした。
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