王子に転生したので悪役令嬢と正統派ヒロインと共に無双する

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「はっはっは。私に聞いてみるだと？　人間風情に舐められたもんだな」

「あんたが強いのは知ってるさ。それに人間が弱いのも知っている。だから冥途の土産ってやつで、何をしていたのか教えてくれてもいいだろ？」

　俺はゲームや漫画などから、こういう時は弱いフリをして相手から情報を引き出すのがベストだと知っていた。
　戦って勝てるかどうかは分からない。むざむざやられるつもりもない。
　だからといってこちらの戦力を明かす愚を犯す必要はない。
　まだ世界で何が起こっているのか全く把握していないのだから。

「ふむ……。いいだろう。
　ここは封印の祭壇。世界に七つあるうちの魔王様の封印術に鍵する一つの忌まわしき地」

　アリゼッタとエリーゼから困惑するような気配が漏れたが、俺は手で制止をかけた。

「その手に持っている珠が何か関係してるってわけか？」

　魔族の男は最初からずっとであるが手の中で玉虫色に輝く珠を転がしていた。
　気にはなっていたのだが、封印と聞いてなんとなくそうではないかと考えた。

「察しがいいな、男。これを七つ集めるのが今の我らの目標。魔王様復活が我らの悲願」

「魔王が復活したらどうなる……いや、どうするつもりなんだ？」

「決まっているだろう？　人間を滅ぼす。そして生物、魔物、魔族が共存できる地を作り上げるのだ」

　予想通り過ぎるほどに予想通りの答え。
　穏やかな展開もほんの僅かに期待する心はあったが、目の前の魔族にはそれはなかった。
　とするのであれば、と思ったのだがアリゼッタが声を荒げていた。

「人間を滅ぼすなんて何言ってるんですの！　そんなことさせませんわ！」

「そうです。私には話はよく分かりませんが、全員で共存すればいいではないですか？」

　男は楽しそうな顔を真剣な顔に引き締め二人の事をじっと見つめた。

「人間とは欲深き生き物。お前らは魔王様……いや、魔族と魔物全てを封印したではないか。人間が世界を掌握するためにな」

「どういうことだ？　過去に魔族と人間が戦いでもしていたのか？」

　魔族や魔物は俺が転生したと同時に生まれたものだと思っていた。
　だが、魔族の男の話ではそうではなさそうだ。

「戦い……？　そんな生易しいものではない！　戦いすらしない一方的な封印術。それで我らは存在を封印されたのだ！」

「もしかして……魔法の力と引き換えに……か？」

「そんなことは知らん。知らんが……魔法の事も知っているのか？　やはりただの人間ではないな」

　つい口から出た言葉が警戒心を引き上げたことにしまったなと感じた。

「ただの人間だよ。運命に抗おうとするちっぽけな力を持つな。
　それで、なんでお前はここにいるんだ？　封印されていたんじゃなかったのか？」

「封印術は魔王様に施された強力なものと違い、経年劣化するようになっていたのだ。
　加えて……ある時に事象の歪みが……。いや、これ以上はいいだろう」

　大体必要な情報は引き出せた。警戒心を引き上げてしまった以上これ以上聞くのは無理だろう。

「で、俺たちはどうなるんだ？」

「冥途の土産……で聞かせてやったのだから勿論死んでもらう。
　ま、大丈夫だ。今死ぬかいずれ死ぬか、ただその時期が少しだけ前後するというだけの事だ」

　そう口にして男は腰に差さっていた禍々しい装飾の施された紫色の剣を抜き取った。