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魔族の男に合わせたように俺たちも武器を手にした。
アリゼッタとエリーゼも基本魔法で戦っているが、剣はちゃんと装備している。
そのために剣術を学んだのだから。
だが、
「二人とも最初は離れて見ていてくれ。こいつは今までの相手とは比べ物にならないほどに厄介だと思うから」
「でも……いえ、分かりましたわ。何かあれば手助けしますわよ」
「傷の回復は任せておいてください」
男は不敵に笑いを浮かべる。
「男、お前ひとりが我の相手をすると言うのか? もっとも死ぬ順番が前後するだけの話だがな」
「それは……やってみないとわからねーだろ……っと!」
俺は駆け出して魔族の男に向かっていく。
既に土属性魔法と風属性魔法での自己強化は使用済み。瞬時に距離を詰め振り下ろした剣撃を男は受け止めてみせる。
刀身には飾り気のない直刀。ぎりぎりと揺れる刃の交差。
「くくっ、やはり普通ではないな! 人間とは弱小生物の集まりが力となる生き物ではなかったのか!」
楽しそうな顔で笑った後、硬質な音を立て剣が弾け距離をとる。
魔族の男から大きな炎が上がり、そして火球が俺に向かって飛んで来る。
当然俺は水弾を作り出し相殺する。水蒸気爆発により爆散するように飛沫があがる。
「あんたも中々のもんだな! 名前くらい教えてくれてもいいんじゃないか?」
「そうだな、お前はただの人間ではなく真の戦士。なら名を名乗り合うのが筋か」
言葉を交わしつつも剣撃が交差し火花が舞う。
「じゃあ先に俺が名乗らせてもらう。ローゼンストーン王国第一王子、エトワイア・ローゼンストーン!」
「は? お前、国の王子だったのか!? それがなぜこんなところに……。いや、それはいい。
我の名前はタイランガル。魔王様の側近、統魔衆の一人!」
もし雑兵でこの実力ならやばいと思ったが、側近だとするなら話は別。
俺の国造りとアリゼッタとエリーゼの幸せのためにも負けるわけにはいかない。
剣を一瞬だけ浮かせ両の掌で雷を作り出し放出する。黄の閃光は湾曲しながらタイランガルへと襲い掛かる。
「ぐあっ!」
剣を振り土魔法――地面から隆起する土壁で防御するが、高速で飛来する雷撃を一つしか防ぐことができず、その体を撃った。
その隙を逃さず距離を詰め剣を振る。辛うじて防がれるが、胴回し回転蹴りで顔を蹴り飛ばす。
「エトワイア! 流石ですわ!」
「エトワイア、かっこいいです!」
アリゼッタたちから声が上がり俺の心も奮う。
ドォンと揺れを伴う大音量が響き壁と衝突した。パラパラと石の欠片が天上から落ちる。
勿論俺は手を緩めない。右の手から炎、左の手から風。それらが混じり合い極大とも言える炎を生み出し、タイランガルが衝突し土ぼこりが上がってる地点を襲う。
水で防いだのか再度水蒸気が上がったが、今回の炎熱は先ほどタイランガルが放ったのとはまるで異質のもの。防ぎきれはしない。
「くっくっく。素晴らしい! 素晴らしいな! 本当に人間なのか!?」
身体からプスプスと煙を上げ、肩を抑えながら歩いてくる。
普通の人間なら跡形も残らず消し飛んだはずの攻撃も、やはりというか流石というか。
「ああ、ただの矮小な王子に過ぎないよ」
「ちっ、なにが矮小だ。だが、お前には致命的な弱点があるだろ?」
「じゃくて……」
言いかけた途端、燃え盛る火球がアリゼッタ達に向かって放たれた。
だが、俺は心配はしていない。二人は弱点なんかではないからだ。
タイランガルと距離を詰め、再度蹴り飛ばすと、アリゼッタ達がいる後方から水蒸気が上がった。チラと見ると笑顔で俺に親指を立ててくる。
「なんで女性二人がこんなところに来ているのか。それは戦力だからだよ。弱点なんかじゃねぇ!」
再度吹き飛ばされていたタイランガルは、よろよろと立ち上がり驚きの表情で二人を見つめた。
「くそ、見た目とは違うということか……。どうやら俺はお前らには勝てないらしいな……。これだけは使いたくなかったが……!!」
満身創痍。
けれどその口から放たれた言葉に嫌な予感を感じた。
まずい。そんな予感が俺の足を速める。
タイランガルは紫色の珠を取り出し握りつぶす。
「ふっ、もう遅い。またいずれ会う日があれば必ず殺してやる!」
俺の渾身の剣線は不可視の壁に防がれる。と、同時にタイランガルの身体から放たれる圧倒的光量の紫の輝き。
「「エトワイア!」」
二人が俺に駆け寄ってくる。俺も二人に駆け寄っていく。
手を取った瞬間、紫の光が洞窟内を埋め尽くし、俺たちの存在はそこから消えてなくなった。
アリゼッタとエリーゼも基本魔法で戦っているが、剣はちゃんと装備している。
そのために剣術を学んだのだから。
だが、
「二人とも最初は離れて見ていてくれ。こいつは今までの相手とは比べ物にならないほどに厄介だと思うから」
「でも……いえ、分かりましたわ。何かあれば手助けしますわよ」
「傷の回復は任せておいてください」
男は不敵に笑いを浮かべる。
「男、お前ひとりが我の相手をすると言うのか? もっとも死ぬ順番が前後するだけの話だがな」
「それは……やってみないとわからねーだろ……っと!」
俺は駆け出して魔族の男に向かっていく。
既に土属性魔法と風属性魔法での自己強化は使用済み。瞬時に距離を詰め振り下ろした剣撃を男は受け止めてみせる。
刀身には飾り気のない直刀。ぎりぎりと揺れる刃の交差。
「くくっ、やはり普通ではないな! 人間とは弱小生物の集まりが力となる生き物ではなかったのか!」
楽しそうな顔で笑った後、硬質な音を立て剣が弾け距離をとる。
魔族の男から大きな炎が上がり、そして火球が俺に向かって飛んで来る。
当然俺は水弾を作り出し相殺する。水蒸気爆発により爆散するように飛沫があがる。
「あんたも中々のもんだな! 名前くらい教えてくれてもいいんじゃないか?」
「そうだな、お前はただの人間ではなく真の戦士。なら名を名乗り合うのが筋か」
言葉を交わしつつも剣撃が交差し火花が舞う。
「じゃあ先に俺が名乗らせてもらう。ローゼンストーン王国第一王子、エトワイア・ローゼンストーン!」
「は? お前、国の王子だったのか!? それがなぜこんなところに……。いや、それはいい。
我の名前はタイランガル。魔王様の側近、統魔衆の一人!」
もし雑兵でこの実力ならやばいと思ったが、側近だとするなら話は別。
俺の国造りとアリゼッタとエリーゼの幸せのためにも負けるわけにはいかない。
剣を一瞬だけ浮かせ両の掌で雷を作り出し放出する。黄の閃光は湾曲しながらタイランガルへと襲い掛かる。
「ぐあっ!」
剣を振り土魔法――地面から隆起する土壁で防御するが、高速で飛来する雷撃を一つしか防ぐことができず、その体を撃った。
その隙を逃さず距離を詰め剣を振る。辛うじて防がれるが、胴回し回転蹴りで顔を蹴り飛ばす。
「エトワイア! 流石ですわ!」
「エトワイア、かっこいいです!」
アリゼッタたちから声が上がり俺の心も奮う。
ドォンと揺れを伴う大音量が響き壁と衝突した。パラパラと石の欠片が天上から落ちる。
勿論俺は手を緩めない。右の手から炎、左の手から風。それらが混じり合い極大とも言える炎を生み出し、タイランガルが衝突し土ぼこりが上がってる地点を襲う。
水で防いだのか再度水蒸気が上がったが、今回の炎熱は先ほどタイランガルが放ったのとはまるで異質のもの。防ぎきれはしない。
「くっくっく。素晴らしい! 素晴らしいな! 本当に人間なのか!?」
身体からプスプスと煙を上げ、肩を抑えながら歩いてくる。
普通の人間なら跡形も残らず消し飛んだはずの攻撃も、やはりというか流石というか。
「ああ、ただの矮小な王子に過ぎないよ」
「ちっ、なにが矮小だ。だが、お前には致命的な弱点があるだろ?」
「じゃくて……」
言いかけた途端、燃え盛る火球がアリゼッタ達に向かって放たれた。
だが、俺は心配はしていない。二人は弱点なんかではないからだ。
タイランガルと距離を詰め、再度蹴り飛ばすと、アリゼッタ達がいる後方から水蒸気が上がった。チラと見ると笑顔で俺に親指を立ててくる。
「なんで女性二人がこんなところに来ているのか。それは戦力だからだよ。弱点なんかじゃねぇ!」
再度吹き飛ばされていたタイランガルは、よろよろと立ち上がり驚きの表情で二人を見つめた。
「くそ、見た目とは違うということか……。どうやら俺はお前らには勝てないらしいな……。これだけは使いたくなかったが……!!」
満身創痍。
けれどその口から放たれた言葉に嫌な予感を感じた。
まずい。そんな予感が俺の足を速める。
タイランガルは紫色の珠を取り出し握りつぶす。
「ふっ、もう遅い。またいずれ会う日があれば必ず殺してやる!」
俺の渾身の剣線は不可視の壁に防がれる。と、同時にタイランガルの身体から放たれる圧倒的光量の紫の輝き。
「「エトワイア!」」
二人が俺に駆け寄ってくる。俺も二人に駆け寄っていく。
手を取った瞬間、紫の光が洞窟内を埋め尽くし、俺たちの存在はそこから消えてなくなった。
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