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第2話 運命はダーツで
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「申しわけなし!」
「あなた、本当に謝る気あるんですかっ!? このくそセクハラ野郎が……」
俺は両膝をそろえて土下座をしていた。
勿論額を白い地面に擦り付けている。
ただ空間の座標が違うのかよく分からんが、俺が土下座しているより下に女神様が立っているのが非常に奇妙な構図だ。
しかし一体どういう原理なのだろうか。
地面(?)は触ると固い。体が靄で覆われて埋まっているという訳ではない。
なのに立っている場所が違うのだ。
しかし、それも一瞬の事。
俺の事を軽蔑の眼差しで見上げてきてから手で下におろすようなポーズをすると、立つ座標が同じ位置に変化した。
「うぉ! って、あるある、ありありよ、大あり! んで、ここどこなの? グラマー姉さん」
俺は先ほどまで高校に通う一生徒だった。
彼女いない歴と年齢が等しい17歳。
勉強上の中。運動中の上。友達中の下。容姿上の下……だと俺は思っている。
昨晩の間に校庭に落とし穴を掘っておき、先ほど悪友という名の実験台をそこに叩き落としてきたはずなのだ。
その瞬間光と浮遊感に包まれ、俺はこの白い空間にいた。
最初に叫んだ台詞は「普通は落ちたほうだろーーーーーー!」だった。
勿論そんなことはどうでもいいことではあるが、なぜ俺はこんなとこに飛ばされてしまったのか疑問だ。
悪友の落ち行くときの絶望顔がまだ頭に残っている。
腹の底から笑いが込み上げてきたのも覚えている。
だが不可思議な現象に巻き込まれたのは俺の方。
もしかしたら今頃は悪友が俺の事を笑っているかもしれない。
「はぁぁぁぁ。また時の迷い子ですか。しかもめんどくさげな感じのが来ちゃったわね」
「め、めんどくさいとは失敬な! 我、客人なるぞ。丁重に扱えい!」
「地獄に落とすわよ?」
「ごめんなさい、俺が悪かったです許してくださいメンゴ」
再度しゅぱっと土下座をかました。
我ながら俊敏な動きだ。
チラを顔を上げると美しい脚線美が覗く。
「ま、いいわ。しっかし新しい上司になってからミスが多すぎる! あんたもミスでここに連れてこられたわけ。存在がミスみたいな感じだけど」
「ひどい! なんですかその言い様は! 俺だって必死に生きているんです!」
「揺蕩っている」
「え……?」
「あなたの命は揺蕩っているって言ったの。生きているのはさっきまで。ここでは死んでるのと変わりはないわ」
「そんな酷いことを呆れたような顔で言わんといてくださいよ……。てか! ミスでここに連れてこられたんなら何とかして欲しいんですけど……」
グラマー姉ちゃんは小さくため息をついて、虚空を手でつかむような動作を行う。
するとどこからともなく大きな丸い円盤があらわれ、そこには円グラフのような記載がされていた。
色々と文字が書かれているみたいだけど、何だろうか。
「一度生きた世界にはもう戻れないのがこの世の理。あなたたちがいう輪廻ってものは別の世界に生まれ変わること。
あなたは生まれ変わるわけじゃないけれど、その理から外れることはできない。
だから二つの選択肢を選ばせてあげるわ。虚無へ落ちるか異世界に行くか」
「異世界行きで!」
俺は迷うことなくそちらを選んでいた。
というより選択肢になっているのか疑問だ。
虚無って絶対やばいやつだろ。記憶では地獄の一種だったような気がする。
虚無行くくらいなら俺はここでグラマー姉ちゃんと添い遂げたいと誰もが思うことだろう。
「迷うことなく選ぶわね。地獄よりも地獄かもしれないというのに」
「え、まって。それはヤダ。虚無か地獄で選ぶって……そっちのミスだったんでしょうに?」
「例えよ、例え。もう少し慎重に生きなさいと言っているの。ま、別にあなたが今後どうなろうと知ったこっちゃないけどさ」
「そんな! ええと、女神様ってまじで美人で美しくてスタイル良くて肌綺麗で顔ちっちゃくて、ええと、ええと、顔のパーツが整っててもろ好みで」
「全部似たような誉め言葉じゃないのそれ、それにあんたの好みはどうでもいいし」
と言いつつも顔は少しだけほころんでいた。
おべんちゃら作戦は大成功というわけだな。
だが本当に思ったことしか言ってない。
確かに俺が妄想した姿に限りなく近い好みど真ん中であるし、凄まじい容姿を誇っている。
人間ではないと思う程に、と言いたいところだが本当に人間ではないのだから複雑だ。
「まぁいいわ。はい、これ」
手渡してくれたのはダーツの矢が三本。
黒光りするボディーが妙に手になじむ。
どうやら円盤はダーツ盤だったということで、それでダーツをしようということなんだろう。
「まず行く世界を決めて、次にあなたの職業を決めて、最後に持参物を決める。さっさと行ってもらうから」
「ダ、ダーツで俺の運命が決まるってことですか? そんなせっしょうな……」
「人の運命なんてそんなものなのでしょう? 投げて当たれば成功し、投げて外れれば失敗し、ただそれを分かりやすくしただけじゃない」
「いや、そうかもしんねーけど……。でも、そっちのミス……」
「はいはい、さっさとやる。いくわよ!」
俺に異を唱えることは許可されていないようだ。
姉ちゃんが円盤を回すと何の支えもないというのに空中で見事に回りだす。
と言ってもその速度は遅い。
実は俺はダーツの腕には相当に自信がある。
カウントアップのハイスコアが966。
悪友と連日通い詰めたのも今や過ぎ去りし過去の思い出。
最後が20のトリプルに入っていれば1000越えてたんだがな。
だがそんなことはどうでもいい。
今は目の前の現実に直面するべき。
つまり回転する円盤だ。
ゆっくりと回転している文字を俺はじっと見つめた。
俺は視力も動体視力もいいのだ。
異世界ハイレンシア
神と悪魔が世界戦争を行っている終末世界。店長のおすすめ。
はい却下。そんなとこに人間の俺が行ってどうにかなるわけがない。つか店長て誰だよと言いたい。
おすすめしてるからにはちゃんと自分で体験してるんですよね?
異世界シーレンシア
世界全てが海の美しき蒼の世界。海神ポセイドンのおすすめ。
はい却下。美しかろうが何だろうが海に行ったら死んでまう。俺はお魚さんではないので、本当に海の藻屑と消えてしまう。
海神におすすめされても無理なものは無理なのです。餌としておすすめしてるのならノーサンキューです。
異世界ロンレンシア
人間のいない世界。野生生物と緑豊かな大地。私のおすすめ。
はい……ちょっと迷ったけど却下。女の子がいない世界なんて滅びればいい。
俺は進化を待てるほど気長ではないのです。
異世界ファレンシア
剣と魔法のファンジーの世界。普通すぎておすすめしません。
いや、最初からこれを見せろよ。見たのは俺なんだけどさ。
当然狙うものは決まっているので、俺は狙いをつけて矢を放つ。
シュバッっとゆるやかな放物線を描き、矢が刺さったのは狙い通り異世界ファレンシア。
完璧だ。
他の選択肢は論外。
あーダーツが得意でよかったよかった、といったところだな。
「あなた、本当に謝る気あるんですかっ!? このくそセクハラ野郎が……」
俺は両膝をそろえて土下座をしていた。
勿論額を白い地面に擦り付けている。
ただ空間の座標が違うのかよく分からんが、俺が土下座しているより下に女神様が立っているのが非常に奇妙な構図だ。
しかし一体どういう原理なのだろうか。
地面(?)は触ると固い。体が靄で覆われて埋まっているという訳ではない。
なのに立っている場所が違うのだ。
しかし、それも一瞬の事。
俺の事を軽蔑の眼差しで見上げてきてから手で下におろすようなポーズをすると、立つ座標が同じ位置に変化した。
「うぉ! って、あるある、ありありよ、大あり! んで、ここどこなの? グラマー姉さん」
俺は先ほどまで高校に通う一生徒だった。
彼女いない歴と年齢が等しい17歳。
勉強上の中。運動中の上。友達中の下。容姿上の下……だと俺は思っている。
昨晩の間に校庭に落とし穴を掘っておき、先ほど悪友という名の実験台をそこに叩き落としてきたはずなのだ。
その瞬間光と浮遊感に包まれ、俺はこの白い空間にいた。
最初に叫んだ台詞は「普通は落ちたほうだろーーーーーー!」だった。
勿論そんなことはどうでもいいことではあるが、なぜ俺はこんなとこに飛ばされてしまったのか疑問だ。
悪友の落ち行くときの絶望顔がまだ頭に残っている。
腹の底から笑いが込み上げてきたのも覚えている。
だが不可思議な現象に巻き込まれたのは俺の方。
もしかしたら今頃は悪友が俺の事を笑っているかもしれない。
「はぁぁぁぁ。また時の迷い子ですか。しかもめんどくさげな感じのが来ちゃったわね」
「め、めんどくさいとは失敬な! 我、客人なるぞ。丁重に扱えい!」
「地獄に落とすわよ?」
「ごめんなさい、俺が悪かったです許してくださいメンゴ」
再度しゅぱっと土下座をかました。
我ながら俊敏な動きだ。
チラを顔を上げると美しい脚線美が覗く。
「ま、いいわ。しっかし新しい上司になってからミスが多すぎる! あんたもミスでここに連れてこられたわけ。存在がミスみたいな感じだけど」
「ひどい! なんですかその言い様は! 俺だって必死に生きているんです!」
「揺蕩っている」
「え……?」
「あなたの命は揺蕩っているって言ったの。生きているのはさっきまで。ここでは死んでるのと変わりはないわ」
「そんな酷いことを呆れたような顔で言わんといてくださいよ……。てか! ミスでここに連れてこられたんなら何とかして欲しいんですけど……」
グラマー姉ちゃんは小さくため息をついて、虚空を手でつかむような動作を行う。
するとどこからともなく大きな丸い円盤があらわれ、そこには円グラフのような記載がされていた。
色々と文字が書かれているみたいだけど、何だろうか。
「一度生きた世界にはもう戻れないのがこの世の理。あなたたちがいう輪廻ってものは別の世界に生まれ変わること。
あなたは生まれ変わるわけじゃないけれど、その理から外れることはできない。
だから二つの選択肢を選ばせてあげるわ。虚無へ落ちるか異世界に行くか」
「異世界行きで!」
俺は迷うことなくそちらを選んでいた。
というより選択肢になっているのか疑問だ。
虚無って絶対やばいやつだろ。記憶では地獄の一種だったような気がする。
虚無行くくらいなら俺はここでグラマー姉ちゃんと添い遂げたいと誰もが思うことだろう。
「迷うことなく選ぶわね。地獄よりも地獄かもしれないというのに」
「え、まって。それはヤダ。虚無か地獄で選ぶって……そっちのミスだったんでしょうに?」
「例えよ、例え。もう少し慎重に生きなさいと言っているの。ま、別にあなたが今後どうなろうと知ったこっちゃないけどさ」
「そんな! ええと、女神様ってまじで美人で美しくてスタイル良くて肌綺麗で顔ちっちゃくて、ええと、ええと、顔のパーツが整っててもろ好みで」
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と言いつつも顔は少しだけほころんでいた。
おべんちゃら作戦は大成功というわけだな。
だが本当に思ったことしか言ってない。
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「いや、そうかもしんねーけど……。でも、そっちのミス……」
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姉ちゃんが円盤を回すと何の支えもないというのに空中で見事に回りだす。
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最後が20のトリプルに入っていれば1000越えてたんだがな。
だがそんなことはどうでもいい。
今は目の前の現実に直面するべき。
つまり回転する円盤だ。
ゆっくりと回転している文字を俺はじっと見つめた。
俺は視力も動体視力もいいのだ。
異世界ハイレンシア
神と悪魔が世界戦争を行っている終末世界。店長のおすすめ。
はい却下。そんなとこに人間の俺が行ってどうにかなるわけがない。つか店長て誰だよと言いたい。
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俺は進化を待てるほど気長ではないのです。
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