戦慄の罠師 ~世界を相手取る俺の圧倒的戦術無双~

こたつぬこ

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第12話 危機との邂逅

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 その掟は異世界でも同じようで、森の空気が刺すように変わり俺の視界でもやが気流を作り出す。
 前方でゆらと動く影が、グルルァ、と重低音の鳴き声を上げた。
 俺の心底から恐怖を呼び起こす声。
 スライムちゃんなんかでは決してない!

「なぁディア。今のって……お友達とかじゃないよな?」

「わたし、レンジュしか、いない……。でも、多分……モンスター」

 俺しかいないという言い方は物凄く嬉しいんだが、今は喜んでいる場合ではない。
 段々とその影は大きさを増してきていて、先ほどのゴーレムの比じゃないほどにでかい。
 まじでなんでこんなとこをスタート地点にしてくれたのか不思議でたまらない。
 遺跡に行かずに森に入ってたら、おそらくレベル1で遭遇してるからジエンド確定。

 ゆっくりとこちらに向かってきているのは、おそらく俺たちを認識しているから。
 駆けつけて来ないのはおそらく――――生粋のハンターだからってことなんだろう。
 鑑定できるか不明だが影に向かって鑑定を試みてみた。


名称     白銀双斬虎
レベル    94
種族     銀爪猫属
体力     221140/221140
魔力     21200/22200
攻撃力補正  1950
防御力補正  1230


 どう見ても無理です、本当にありがとうございました。

 と諦めてしまえば本当の終わりとなるだろう。

 俺が死ねばディアも死ぬ。都合よく常闇蟲が出てくれるわけがない。
 チラとディアの不安げな顔を見る。
 これをどうこうできるような都合の良い展開は期待できない。

 なら俺がやるしかない。

 ゴーレムだって俺がやった。
 多分、普通なら勝てなかった相手でも勝った。
 工夫と戦術で切り抜けるのが罠を使う者の務めだ。

 俺はステータスを開き瞬時に落とし穴と煙玉のスキルを二つずつ習熟した。スキルレベル1⇒3 使用SP6
 落とし穴は大きさの拡大と持続時間の増加。煙爆弾は煙の量と持続時間の増加だ。

 さらに残りで移動の罠、上昇の罠、発火の罠も1ずつ上げた。
 これで残りSPは0だ。やるしかない。
 移動の罠と上昇の罠は距離は変わらず、その質量体による影響力と持続時間の増加。
 発火の罠は炎の強さと持続時間の増加だ。
 大きく深呼吸し気息を整える。

「はぁぁぁあぁ。ディア、ちなみにだがあれに対処できるか?」

「む、り……。あれはここの……番をしている、存在……。運が、悪い……」

 ディアの手が小さく震えている。
 無理もない。解放された瞬間に既に命の危機を迎えているのだから。
 まぁそれを言えば俺も同じだ。異世界に飛んだ瞬間に命の危機。
 小説なんかでは都合よく正義のヒーローが助けてくれるもんだが、隔離された空間でそれはないだろう。

「番をしている……? この空間をってことか。ディアが知ってるってことは、300年前から健在な生物ってことになるんだよな?」

「何体か、いる思う……。子供、かも…………」

 子供と聞くとなんとなく戦意が削がれてしまうが、世代交代をしている可能性があるという意味で良いだろう。
 あの大きさで幼体だったとしたらはっきり言って困る。この世界に希望を見いだせなくなってしまう。
 なので成体として対処を考えることにする。
 どのみち危険なことには変わりないわけだしな。

「オーケー、じゃあ俺の作戦を聞いてくれ」

 ごにょごにょと耳元で話すと頬をうすらと染めたのが気になったが、今は時間がない。
 作戦と言っても一か八かの運任せ。
 ディアは運が悪いと言ったが、それで諦めるわけにはいかない。
 可能性にかけて俺は一つ目の罠を設置した。

 そう。

 これが俺の罠師として本当の始まりの戦いとなる。
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