戦慄の罠師 ~世界を相手取る俺の圧倒的戦術無双~

こたつぬこ

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第14話 見落とし

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「レン、ジュ……。うまくいった、すごい…………」

 作戦通りディアと合流し、俺たちは全力で目的の方向へ向かって駆けて行く。
 ディアの微笑みが俺の心に染み渡る。

「ああ、やべぇな。こんなにうまくいくなんて」

「レンジュ、手が震えてる………。怖い、の……?」

 走りながらでも分かる程の俺の体は震えていた。
 けれど怖いからじゃない。

「いや、これは多分武者震いってやつだな。とまんねぇ!」

「ふふ……。かっこ、よかった……よ」

「ディアがびびらずに魔法を撃ってくれたおかげだ。あれがなければ最初の罠の地点に誘導できなかった」

「ありがと……。わたしも…、レンジュために、がんばった……」

 頭を撫でてやりたいがそんな余裕はない。
 後ろでは獰猛な雄たけびが鳴り響いているのだから。

 その時、なぜだか唐突に嫌な予感を感じた。
 何か重大な事を見落としているような、そんな予感。
 チリリと前頭葉を掠める電撃のような直感。
 同時に膨れ上がるような奇妙な気配を後ろ――モンスターがいるであろう場所から感じた。

 嫌な予感の正体。

 それはモンスターには魔力があるというのに、ここまで魔法らしき魔法を一切使っていない。
 にも関わらず、なぜかモンスターの魔力量が最大値から減っていたこと。
 冷や汗が首筋から噴き出る。
 このままではまずいと俺の勘が全力で警鐘を鳴らす。

「ディア! 乗れ!」

 確固たる考えがあったわけじゃない。なんの根拠もないただの勘。
 けれど命のやり取りをしているこの状況で、それを黙って見過ごすわけにはいかなかった。

 ただ、それだけだった。

 俺はディアと俺の前方に移動の罠を二つ仕掛ける。
 左の罠は左に、右の罠は右に。本当になんとなくからの行動だった。
 俺とディアの体は習熟し強化された移動の罠によって、まるで直角に折れ曲がるかのように体をずらし移動する。
 罠の対象に俺が含まれないという、意味不明仕様じゃなくて良かった。
 あまりの重心の変化に耐えきれず足がもつれてこけてしまう程の勢い。

 と同時にモンスターの咆哮が聞こえ、

「グォォォォォ!!」

 膨大なエネルギーを感じる白亜の波動が、俺たちがいた地点を薙いだ。
 いや、球体上のエネルギー弾と表現するのが良いだろうか。
 草を抉り、大地を抉り、木々を抉り、まるでそこにトンネルができあがるのではなかろうかと錯覚するほどの鋭利な切り口。
 暴風を伴い、俺とディアの体はさらに腐葉土の上を転がっていく。

 けれど、それだけだ。
 傷もないし立ち上がれて動くことも出来る。
 もし回避していなかったら俺たちはここにはいない。呆気なく死んでいたことだろう。
 安堵からか暖かい呼気が肺腑から零れる。
 だが回避した。第六感が仕事をしてくれたんだ。

 向かい側のディアに向かって進むべき方向を指さしてから、俺たちは再度駆け出した。
 おそらくは俺たちの位置を探知するような魔法を所持しているのだと思われる。
 広大すぎるほどのこの森で運悪く出会うなんてことが、やはりというかあるわけがない。

 出会うべくして出会った。

 俺が遺跡に入らず森を選んでしまっていれば、運の良し悪しなど全く関係なく二度目とも言える人生は終わっていたことだろう。

 だが、俺たちは切り抜けた。

 追いかけてくる気配はないので諦めたのだろう。
 それとも死んだと予想して探知の魔法を使わないのかは分からない。
 とするのであれば、切り開かれてしまった恐怖を煽る茫漠な力の痕跡に、足を踏み入れるわけにはいかない。
 そこは完全に視界が開けてしまっている。
 まだ煙爆弾の効果が残っているとはいえ、わざわざ危険を冒すことはできないのだ。

 ディアの方が足が速いのだが俺に合わせてくれているのか、その姿はほぼ真横で確認できる。
 合流できないとはいえ、その存在を確認できるだけで俺の中から力が沸いてくるような気がした。
 本当にありがたい。遺跡でディアを助けたのが多分俺の今までの人生で最大の功績。

 自分をほめてやりたいくらいだ。

 どのくらい走っただろうか?

 森の切れ目――というよりはぽっかり空いた空間に神殿のような建物が立っていた。
 ディアが捕らわれていた黒色の遺跡とはまるで違う水色の美しい神殿。
 ハープの音色でも聞こえてきそうな様相だ。
 先ほどのエネルギー体が作り上げた暴力の爪痕は神殿のすんで、まるでバリアでもあるかのようにその前方で途切れている。

 完全に切り抜けた。

 俺の心が僅かに緩む。
 だが緩めてはいけなかったのだ。
 戦いはまだ終わってはいないというのに。
 追ってこないからといって諦めたと考えたのは時期尚早だった。
 相手は探知と遠距離高威力の攻撃を所持しているのだから。

 刹那とも言える時間にディアの後ろから白亜の閃光が輝く。
 飛行機の離陸音のような爆音が森を駆け抜ける。
 冷や汗すら流すことを許されないその一瞬。
 森を蹂躙するように削り取ったその力は、ディアの体を容易く飲み込んでいた。
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