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002.コンソールに触りました。
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気付けば緑一面の草原にいた。
というのが、お気に入りの小説の場面だったのだけれど、僕が白い部屋から移動した先は真っ暗な部屋。
最初は何も見えない。
漆黒が僕の双眸を覆いつくしていた。
それもピュイが尻尾の先に白光を灯してくれて、部屋は精細に姿を見せた。
全体をうねる様な岩で覆われていて、登りの階段が壁面に接地している。
部屋の大きさは十メートル四方くらいだろうか。
「それって魔法か何かなの?」
「そうなのです! ピュイはご主人様の護衛も兼ねているのです! といっても、まだまだ生まれたてで弱いのです!」
元気そうにピュイははにかみ、僕の周りを光の軌跡を残しながらひゅんひゅん飛び回る。
可愛いのだけどあまり長い事続けてるとお互いに目が回ってしまうだろう。
まるで催眠術にかけられているような時間を数瞬過ごし、僕は揺らめく白光の残像に手を伸ばした。
「護衛……? そっか。この世界って危険なのかな?」
「はいなのです! 魔物が生息している剣と魔法のファンタージの世界って説明しろって言われていたのです!」
「ファ、ファンタジーね。でも、それだと僕危険だよね。何にもできないし」
「大丈夫なのです! ピュイがお守りするのです! それにご主人様もダンジョンが成長すれば強くなるのです!」
「へー、そうなんだ。じゃあ、頑張ってみないとだね! まず、何すればいいの?」
「まずはダンジョン用コンソールを開くのです! 頭の中で念じれば開くのです!」
なるほどね、と思いながらピュイに言われた通り脳内で念じてみる。
と、ピュイの尻尾の灯りだけの薄暗い中で、しっかり文字が読めるゲームのウィンドウのような物が現れた。
『名無しのダンジョン』
『マスター』 「相川武蔵」
『レベル』 「1」
『ランク』 「G」
『評価値』 「1」
『保有ダンジョンポイント』 「10」
『入ダンジョン料』 「0コリア」
『入場者数』 「0」
『使用者の意見』 「なし」
というステータスのようなものと、正方形が一つあるだけのダンジョンのマップ。
その横には色々なメニューが描かれたプレート。
「これだけ? 僕のステータスとかは?」
「成長すればもっと増えていくかもしれないのです! ご主人様のステータスはここでは開く必要はないのです!」
「ここでは開く必要はないってどういうこと?」
「ご主人様はこのダンジョン内においては神に等しき存在なのです! ダンジョン用コンソールを使えば大体何でもできるのです!」
コンソールを操作してみると、好きな場所に移動出来たり、ダンジョンから出れたり、他にも色々な機能がある。
「まずは何すればいいの?」
「入口を設置しないとなのです! コンソールを操作してくださいなのです!」
ピュイの言うとおり操作すると、入口設置というものを見つけることが出来た。
消費ダンジョンポイントが『1』と記載されていて、何をやるにもこのダンジョンポイントというモノが必要になるようだ。
「このダンジョンポイントってのはどうやったら増えるの?」
尋ねてから質問ばかりしているなと感じたが、現在はゲームのチュートリアルのような物だろう。
聞くべきことを聞いていないと、後で損するのは自分になる。
もっともピュイはずっとついてきてくれるので、いつでも好きな時に聞けるとも思うけれど。
「外の物をダンジョンに持ち込めばいいのです! 価値が髙いものや大きな力を持つ物は、高いダンジョンポイントになるのです!」
なるほどなるほど、と思いながらコンソールを見つめていると、さっきまでなかったボタンが現れていることに気付く。
不思議に思いながらその楕円に触れてみる。
「あ、駄目なのです! 駄目なのです! それにはまだ触れては駄目なのです!」
「え、もう触っちゃったよ……」
と口にした瞬間、階段の先に設置されていたらしい入口の扉が開き、ゲームに出てきそうな鎧や服を来た人たちが入ってきた。
「えええ! 人来ちゃった! か、隠れなきゃ……」
隠れるとこなんてピュイの額程もない。
ただ何もない岩の部屋なのだ。
しかし、心配する必要はなかったようで、
「大丈夫なのです! ダンジョン内にいるときはコンソールを操作しない限り、ご主人様とピュイの姿は見えないですし、触れることも声を聞くことも出来ないのです!」
中に入ってきた数人の男女たちはダンジョンを見回して「何もねぇな……」「何もないわね……」と言って帰っていく。
「あーびっくりした。今のボタンを押すと入口が開くんだね」
「はいなのです! 入ダンジョン料を設定していると、自動でお金がアイテムボックス内に保管されるのです!」
アイテムボックスもコンソールのメニューにある。
まだアイテムは何も入ってないけれど、お金は100000コリアと表示されている。
アイテムボックスの仕様もコリアの価値も全く分からず気になったが、それより左側。ダンジョンステータスが変化しているのを見て声を上げてしまった。
「あ! ああ! ダンジョンの評価がー!」
『名無しのダンジョン』
『マスター』 「相川武蔵」
『レベル』 「1」
『ランク』 「G」
『評価値』 「0」
『保有ダンジョンポイント』 「9」
『入ダンジョン料』 「0コリア」
『入場者数』 「4」
『入場者の意見』 「何もない」「何もねぇ」「何もないわ」
「ダンジョンは、入ってきた人がどう感じたかで評価につながるのです!
評価値が0になってしまったので、今は入ダンジョン料を上げることができないのです!」
「ありゃりゃ、やっちゃった。ごめんよ、ピュイ」
「良いなのです! 良いなのです! 説明するのが遅かったピュイも悪いのです!」
なんて良い子なんだと、柔らかな体毛をもふもふと撫でてやる。
(うん、空なんか飛ばずに僕の腕の中にいるべきだ)
そう思い、ひょいと抱えると小さく舌をぺろりと出した後、嬉しそうにピュイと鳴いた。
というのが、お気に入りの小説の場面だったのだけれど、僕が白い部屋から移動した先は真っ暗な部屋。
最初は何も見えない。
漆黒が僕の双眸を覆いつくしていた。
それもピュイが尻尾の先に白光を灯してくれて、部屋は精細に姿を見せた。
全体をうねる様な岩で覆われていて、登りの階段が壁面に接地している。
部屋の大きさは十メートル四方くらいだろうか。
「それって魔法か何かなの?」
「そうなのです! ピュイはご主人様の護衛も兼ねているのです! といっても、まだまだ生まれたてで弱いのです!」
元気そうにピュイははにかみ、僕の周りを光の軌跡を残しながらひゅんひゅん飛び回る。
可愛いのだけどあまり長い事続けてるとお互いに目が回ってしまうだろう。
まるで催眠術にかけられているような時間を数瞬過ごし、僕は揺らめく白光の残像に手を伸ばした。
「護衛……? そっか。この世界って危険なのかな?」
「はいなのです! 魔物が生息している剣と魔法のファンタージの世界って説明しろって言われていたのです!」
「ファ、ファンタジーね。でも、それだと僕危険だよね。何にもできないし」
「大丈夫なのです! ピュイがお守りするのです! それにご主人様もダンジョンが成長すれば強くなるのです!」
「へー、そうなんだ。じゃあ、頑張ってみないとだね! まず、何すればいいの?」
「まずはダンジョン用コンソールを開くのです! 頭の中で念じれば開くのです!」
なるほどね、と思いながらピュイに言われた通り脳内で念じてみる。
と、ピュイの尻尾の灯りだけの薄暗い中で、しっかり文字が読めるゲームのウィンドウのような物が現れた。
『名無しのダンジョン』
『マスター』 「相川武蔵」
『レベル』 「1」
『ランク』 「G」
『評価値』 「1」
『保有ダンジョンポイント』 「10」
『入ダンジョン料』 「0コリア」
『入場者数』 「0」
『使用者の意見』 「なし」
というステータスのようなものと、正方形が一つあるだけのダンジョンのマップ。
その横には色々なメニューが描かれたプレート。
「これだけ? 僕のステータスとかは?」
「成長すればもっと増えていくかもしれないのです! ご主人様のステータスはここでは開く必要はないのです!」
「ここでは開く必要はないってどういうこと?」
「ご主人様はこのダンジョン内においては神に等しき存在なのです! ダンジョン用コンソールを使えば大体何でもできるのです!」
コンソールを操作してみると、好きな場所に移動出来たり、ダンジョンから出れたり、他にも色々な機能がある。
「まずは何すればいいの?」
「入口を設置しないとなのです! コンソールを操作してくださいなのです!」
ピュイの言うとおり操作すると、入口設置というものを見つけることが出来た。
消費ダンジョンポイントが『1』と記載されていて、何をやるにもこのダンジョンポイントというモノが必要になるようだ。
「このダンジョンポイントってのはどうやったら増えるの?」
尋ねてから質問ばかりしているなと感じたが、現在はゲームのチュートリアルのような物だろう。
聞くべきことを聞いていないと、後で損するのは自分になる。
もっともピュイはずっとついてきてくれるので、いつでも好きな時に聞けるとも思うけれど。
「外の物をダンジョンに持ち込めばいいのです! 価値が髙いものや大きな力を持つ物は、高いダンジョンポイントになるのです!」
なるほどなるほど、と思いながらコンソールを見つめていると、さっきまでなかったボタンが現れていることに気付く。
不思議に思いながらその楕円に触れてみる。
「あ、駄目なのです! 駄目なのです! それにはまだ触れては駄目なのです!」
「え、もう触っちゃったよ……」
と口にした瞬間、階段の先に設置されていたらしい入口の扉が開き、ゲームに出てきそうな鎧や服を来た人たちが入ってきた。
「えええ! 人来ちゃった! か、隠れなきゃ……」
隠れるとこなんてピュイの額程もない。
ただ何もない岩の部屋なのだ。
しかし、心配する必要はなかったようで、
「大丈夫なのです! ダンジョン内にいるときはコンソールを操作しない限り、ご主人様とピュイの姿は見えないですし、触れることも声を聞くことも出来ないのです!」
中に入ってきた数人の男女たちはダンジョンを見回して「何もねぇな……」「何もないわね……」と言って帰っていく。
「あーびっくりした。今のボタンを押すと入口が開くんだね」
「はいなのです! 入ダンジョン料を設定していると、自動でお金がアイテムボックス内に保管されるのです!」
アイテムボックスもコンソールのメニューにある。
まだアイテムは何も入ってないけれど、お金は100000コリアと表示されている。
アイテムボックスの仕様もコリアの価値も全く分からず気になったが、それより左側。ダンジョンステータスが変化しているのを見て声を上げてしまった。
「あ! ああ! ダンジョンの評価がー!」
『名無しのダンジョン』
『マスター』 「相川武蔵」
『レベル』 「1」
『ランク』 「G」
『評価値』 「0」
『保有ダンジョンポイント』 「9」
『入ダンジョン料』 「0コリア」
『入場者数』 「4」
『入場者の意見』 「何もない」「何もねぇ」「何もないわ」
「ダンジョンは、入ってきた人がどう感じたかで評価につながるのです!
評価値が0になってしまったので、今は入ダンジョン料を上げることができないのです!」
「ありゃりゃ、やっちゃった。ごめんよ、ピュイ」
「良いなのです! 良いなのです! 説明するのが遅かったピュイも悪いのです!」
なんて良い子なんだと、柔らかな体毛をもふもふと撫でてやる。
(うん、空なんか飛ばずに僕の腕の中にいるべきだ)
そう思い、ひょいと抱えると小さく舌をぺろりと出した後、嬉しそうにピュイと鳴いた。
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