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Mission:インサイダー・パーティー
第42話:世界 ~ど真ん中には住んでない~
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「廣田が自首したそうです」
パーティ翌日、三嶋が登庁一番そう言った。
「つい先程のことです。まだ警察以外に情報は出ていません。
マスコミにもインフィニティにも、下手すればアライヴにすら知られていない、取れたてほやほやの情報ですよ」
「早かったな」
前日遅かったにもかかわらず、珍しく早くから情報課に姿を見せていた章は意外にも無表情に呟いた。
「冷静ですね」
春日が口角を上げる。
「というより、薄情なんちゃいます?」
多賀を服の下で震え上がらせるほどの暴言を春日は平然と吐いた。
伊勢兄弟は顔を見合わせたが、春日の言葉には全く不快感を示さなかった。
「いや、これでも情は出てきたと思うよ」
「うん。自首してくれてよかった、ってくらいに」
「奴にも、執行猶予になってくれって思うようになった」
「問題はナオちゃんだよな。さすがに前科ついたらかわいそうだ」
「多賀、どう? 法学部だよな? 前科つきそう?」
多賀は首をひねりながら考える。
「ナオさんは、最悪でも不起訴処分程度だと思います。廣田は……執行猶予で済むんじゃないでしょうか。
僕は専門じゃないので知りませんけど。というか、大学出て二年ですし、結構忘れちゃったんですけど」
「忘れるの早いなおい」
「情報課に来るまで使わなかった知識ですから!」
多賀に噛みつかれた諏訪は首をすくめる。
かくいう諏訪も、専門ど真ん中以外の分野については、割と忘れている方だ。
「廣田が捕まっちゃうと、同窓会とか結構荒れそうだねぇ」
自分が追い詰めた側であることを棚に置いて、章は感慨深そうだ。
「僕らが警察に関わってるって、早めに口止めしておかなきゃな」
「……なんか、つらいですよね。知り合いを捕まえなきゃいけないのって」
「多賀だって、そうじゃないの?」
手の爪を切りながら、裕がのんびり答える。
「多賀だって、自分の知り合いが犯罪をしてたら捕まえなきゃならないのは同じだ」
「でも、情報課にいる限り、知り合いに当たる確率は上がっちゃいませんか?」
「同じとは言われへんけど、たいした差やないよ」
諭すように春日が言う。
「そら、初回から知り合い案件にぶち当たったら、そう思うのもしゃーないけど。
本来は、知り合い案件になんか滅多に当たるもんちゃうで」
「それに、当たったとしても覚悟が一応ありますからね」
三嶋が割り込んできた。
「我々はいろんな世界にコネを持ってるのは確かなんですけど、その世界のど真ん中に住んでるわけじゃないんですよね。住めたら情報課なんか来ません。
世界のはずれに住んでるからこそ、平気でその世界を切り売りできるんです。
私たちが売っぱらっているものの中に私たちが守りたいものなんてありませんし」
「……守りたいもの、とはなんですか?」
そこ聞くか? と裕は吹き出しそうになったがこらえた。
「え? ……家族とか、恋人とか、あるいは職か、友達ですかねぇ?」
三嶋本人も面食らったようである。
パーティ翌日、三嶋が登庁一番そう言った。
「つい先程のことです。まだ警察以外に情報は出ていません。
マスコミにもインフィニティにも、下手すればアライヴにすら知られていない、取れたてほやほやの情報ですよ」
「早かったな」
前日遅かったにもかかわらず、珍しく早くから情報課に姿を見せていた章は意外にも無表情に呟いた。
「冷静ですね」
春日が口角を上げる。
「というより、薄情なんちゃいます?」
多賀を服の下で震え上がらせるほどの暴言を春日は平然と吐いた。
伊勢兄弟は顔を見合わせたが、春日の言葉には全く不快感を示さなかった。
「いや、これでも情は出てきたと思うよ」
「うん。自首してくれてよかった、ってくらいに」
「奴にも、執行猶予になってくれって思うようになった」
「問題はナオちゃんだよな。さすがに前科ついたらかわいそうだ」
「多賀、どう? 法学部だよな? 前科つきそう?」
多賀は首をひねりながら考える。
「ナオさんは、最悪でも不起訴処分程度だと思います。廣田は……執行猶予で済むんじゃないでしょうか。
僕は専門じゃないので知りませんけど。というか、大学出て二年ですし、結構忘れちゃったんですけど」
「忘れるの早いなおい」
「情報課に来るまで使わなかった知識ですから!」
多賀に噛みつかれた諏訪は首をすくめる。
かくいう諏訪も、専門ど真ん中以外の分野については、割と忘れている方だ。
「廣田が捕まっちゃうと、同窓会とか結構荒れそうだねぇ」
自分が追い詰めた側であることを棚に置いて、章は感慨深そうだ。
「僕らが警察に関わってるって、早めに口止めしておかなきゃな」
「……なんか、つらいですよね。知り合いを捕まえなきゃいけないのって」
「多賀だって、そうじゃないの?」
手の爪を切りながら、裕がのんびり答える。
「多賀だって、自分の知り合いが犯罪をしてたら捕まえなきゃならないのは同じだ」
「でも、情報課にいる限り、知り合いに当たる確率は上がっちゃいませんか?」
「同じとは言われへんけど、たいした差やないよ」
諭すように春日が言う。
「そら、初回から知り合い案件にぶち当たったら、そう思うのもしゃーないけど。
本来は、知り合い案件になんか滅多に当たるもんちゃうで」
「それに、当たったとしても覚悟が一応ありますからね」
三嶋が割り込んできた。
「我々はいろんな世界にコネを持ってるのは確かなんですけど、その世界のど真ん中に住んでるわけじゃないんですよね。住めたら情報課なんか来ません。
世界のはずれに住んでるからこそ、平気でその世界を切り売りできるんです。
私たちが売っぱらっているものの中に私たちが守りたいものなんてありませんし」
「……守りたいもの、とはなんですか?」
そこ聞くか? と裕は吹き出しそうになったがこらえた。
「え? ……家族とか、恋人とか、あるいは職か、友達ですかねぇ?」
三嶋本人も面食らったようである。
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