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Mission:大地に光を
第52話:鹵獲 ~荷物は返してもらえない~
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あまりにも車が揺れるので、三嶋が荷物に詰め込んでいた電子機器類の心配を本格的にはじめたころ、打ちっぱなしコンクリートの大きな建物が見えた。教団だ。広い駐車場には、まばらに車が止まっていた。中には伊勢自動車の車もあって思わず惹かれた。
伊勢兄弟こそスポーツタイプに乗っているが、伊勢自動車の本領はオフロード車である。その本領まっただなかのオフロード車がルーフキャリアを頭に乗せ、こんな宗教団体の駐車場に止まっているのは、実に不思議な光景であった。
「随分と車種がバラバラですね」
「元は個人所有の車やからね。中には外車もあるよ」
大地の光では、出家信者の財産の所有を認めていない。自動車を所有する信者が出家をするとき、団体の資産として寄付をしたのである。すさまじい制度だ。
「なるほど……」
それだけの金持ちがカモにされているということなのだろう。あるいは、金の使い方を間違えるような人間がカモにされやすいということか。賢い教団であるなら、カモにするべきは後者だ。
「まずはこの教団を案内するね」
下駄箱の位置を教えた辻は、早速さっさと歩いていく。ちらりと三嶋の位置を確認するのを忘れない。気配り上手な、新人の扱いに向いた女である。彼女が自分の研修担当になってくれれば、ここでの生活も安泰なのだが。
「あ、あの、その前に」
「どうしたん?」
すでに数メートル先を歩いていた辻が振り返る。
「あの、私の荷物なんですけど」
「博実くん、やから敬語はええねんってば」
はっとした三嶋は慌てて言い換えた。こんなところで彼女からの評価を下げるわけにはいかない。が、随分細かいところにケチをつけてきやがる。
「……僕の荷物なんだけど」
そんな言葉遣いをしたのは何年ぶりだろう。
「博実くんの荷物?」
「さっき車に積んだ荷物です。あれがないと困るので」
笑顔だった辻の顔が、困惑の表情になった。
「返されへんのよ」
当たり前かのように辻は言う。
「はい?」
「あ、あれ? 私、前に荷物とか用意してほしいって言った?」
三嶋の予想に反し、辻は慌てだした。
「い、いや……言ってないと思……うよ」
不親切により荷物の件を教えられていないのだと三嶋は思っていた。だが自覚していたとは。それもそれでどうなのか、と三嶋は思う。
「ごめん、うち、荷物を持ち込まれへんねん」
間違って冷蔵庫のプリンを食べてしまったことを謝るかのように、軽く辻は謝った。
「あの、つじまちゃん、僕の荷物はどうなるの?」
「信者を辞めることがあれば返す……ってことになるかな。ごめんな、言い忘れてもうて……」
「い、いや、大したものは入ってないし、勝手に持ってきた僕にも問題があるから」
三嶋は隙のない笑顔を作る。だが、大したものが入っていないというのは大嘘だ。あのスーツケースがなければ、こんな山奥から警察に情報を流せない。任務は失敗、おまけにクソみたいな宗教に入信させられる。
潜入損、大変な事態だ。心中で舌打ちをする。
「まあ、辞められたらの話やけどね」
振り返ってまたさっさと歩いていく辻のつぶやきは三嶋には聞こえない。三嶋は辻の背中を慌てるように追いかけていく。
伊勢兄弟こそスポーツタイプに乗っているが、伊勢自動車の本領はオフロード車である。その本領まっただなかのオフロード車がルーフキャリアを頭に乗せ、こんな宗教団体の駐車場に止まっているのは、実に不思議な光景であった。
「随分と車種がバラバラですね」
「元は個人所有の車やからね。中には外車もあるよ」
大地の光では、出家信者の財産の所有を認めていない。自動車を所有する信者が出家をするとき、団体の資産として寄付をしたのである。すさまじい制度だ。
「なるほど……」
それだけの金持ちがカモにされているということなのだろう。あるいは、金の使い方を間違えるような人間がカモにされやすいということか。賢い教団であるなら、カモにするべきは後者だ。
「まずはこの教団を案内するね」
下駄箱の位置を教えた辻は、早速さっさと歩いていく。ちらりと三嶋の位置を確認するのを忘れない。気配り上手な、新人の扱いに向いた女である。彼女が自分の研修担当になってくれれば、ここでの生活も安泰なのだが。
「あ、あの、その前に」
「どうしたん?」
すでに数メートル先を歩いていた辻が振り返る。
「あの、私の荷物なんですけど」
「博実くん、やから敬語はええねんってば」
はっとした三嶋は慌てて言い換えた。こんなところで彼女からの評価を下げるわけにはいかない。が、随分細かいところにケチをつけてきやがる。
「……僕の荷物なんだけど」
そんな言葉遣いをしたのは何年ぶりだろう。
「博実くんの荷物?」
「さっき車に積んだ荷物です。あれがないと困るので」
笑顔だった辻の顔が、困惑の表情になった。
「返されへんのよ」
当たり前かのように辻は言う。
「はい?」
「あ、あれ? 私、前に荷物とか用意してほしいって言った?」
三嶋の予想に反し、辻は慌てだした。
「い、いや……言ってないと思……うよ」
不親切により荷物の件を教えられていないのだと三嶋は思っていた。だが自覚していたとは。それもそれでどうなのか、と三嶋は思う。
「ごめん、うち、荷物を持ち込まれへんねん」
間違って冷蔵庫のプリンを食べてしまったことを謝るかのように、軽く辻は謝った。
「あの、つじまちゃん、僕の荷物はどうなるの?」
「信者を辞めることがあれば返す……ってことになるかな。ごめんな、言い忘れてもうて……」
「い、いや、大したものは入ってないし、勝手に持ってきた僕にも問題があるから」
三嶋は隙のない笑顔を作る。だが、大したものが入っていないというのは大嘘だ。あのスーツケースがなければ、こんな山奥から警察に情報を流せない。任務は失敗、おまけにクソみたいな宗教に入信させられる。
潜入損、大変な事態だ。心中で舌打ちをする。
「まあ、辞められたらの話やけどね」
振り返ってまたさっさと歩いていく辻のつぶやきは三嶋には聞こえない。三嶋は辻の背中を慌てるように追いかけていく。
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