僕は警官。武器はコネ。【イラストつき】

本庄照

文字の大きさ
96 / 185
Mission:大地に光を

第96話:管理 ~清貧だって悪くない~

しおりを挟む
「……薫は警察の手先じゃないよな?」
 今度は、富士が新聞を指差して尋ねる。新聞に名前が載せられている人間は、宮崎のような警察のスパイではないと思っての質問に違いなかった。
「違いますが、何か?」
「お前、どうやって逃げ出したんだ?」
「どういうことです?」
「亮成が手を貸したとしても、薫が見張っているはずだろう。薫ともグルだったんじゃないのか」

 富士は薫と亮成と三嶋がつるんで逃げたと思っているのだろう。確かに薫が逮捕された時、彼はえらく消耗していた。三嶋とのつながりを責められ、尋問という名の拷問を受けていたに違いない。何せ、薫は三嶋のお目付け役だったのだから。

 ああ、と三嶋は顔をわずかにしかめた。記憶をたぐっているらしい。
「公安警察のスパイが逃げだした方法と同じ方法ですよ」
「何?」

「亮成くんの車のルーフキャリアです。伊織さんも、そして私も、その中に隠れて逃げ出したんですよ。もう二度と乗りたくないですねぇ。なにせ大変な乗り心地なので。骨折覚悟ですよ」
「それはおかしいだろ。ルーフには普段鍵がかかってるはずだ」
 確かにそうだ。坂上が総務部のトップになってからというもの、組織内での鍵の管理は非常に厳重になった。それは亮成車のルーフの鍵ですら例外ではない。

「そうですね。前は亮成くんがルーフに鍵を挿しっぱなしにしていたそうなので、伊織さんがルーフに隠れて逃げるのは容易かったでしょうが、今回は違いますね」
「ルーフの鍵を持ち出すのは、お前も亮成もできなかったはずだ」
「ええ、だから私は合鍵を得たんですよ。亮成くんから」
「亮成が合鍵なんか持ってるわけが……」
「作ってくれたんですよ。私のためにね」

「鍵を作る? 一体どうやって?」
 大地の光では私有財産の所有を禁じている。いくら洗脳が解けていても、鍵一つとはいえ上部に無断で複製することは出来ないはずだ。

「下のスーパーに、鍵屋があるでしょう。そこで作ってたんですよ」
「合鍵を作る金なんて奴が持っているわけがない! どれだけうちの金銭管理が厳しいのかわかってんのか?」
「ええ、だから亮成くんは知恵を絞ったんですよ。どうしたら誰にもバレずに金を浮かせられるか」
「ど、どんな方法があるってんだ」
 
「食券です。買い出し中に取った食事を、食券制の店にすることで昼食分を浮かせたんです。降りた先にありますよね? 食券制の牛丼屋が」
「それはおかしいぞ。牛丼屋だって、半券かなにかあるだろう。そもそも、薫が領収書を出させるはずだ」
 厳しい金銭管理に自信があったのだろう。富士は、亮成が金を浮かせたことをまだ信じられていないようだった。

「薫くんは半券さえあれば何も言わなかったようですよ。当然でしょうね、弥恵さんを歩かせよう大作戦の処理で忙しいんですから。亮成くんが領収書はないと言うとすぐ引き下がったそうです」
 富士は納得していなさそうではあるが、三嶋は続ける。

「自分が一人で牛丼屋に行った時には必ず、別の客に頼んで半券をもらったそうです。そして、その次の外出では食事を我慢して薫くんに半券を提出する、と。ゴミ箱を漁ることもあったそうです。コミュニケーションが苦手な彼にしては頑張りましたね」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...