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Mission:大地に光を
第95話:願望 ~彼女だけしか気付かない~
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しかし、不思議なのは、なぜ亮成がその誘いに乗ったか、である。スパイでない幹部候補生ともなれば、関や辻のように相当の信仰心があるはずだ。事実、三嶋の場合には辻は誘いに乗るフリをして富士に密告した。
「亮成は元から教団を裏切ろうとしていたってのか」
「そうなんじゃないですか?」
「じゃあ、何故あの女は、亮成のその願望を知っていたんだ」
くすりと三嶋が笑う。隙の無い笑み、三嶋の得意顔だ。
「亮成くん本人に聞きました」
「聞いた……? そんなことができるのか」
「亮成くんも、表に名前が出ていないだけで逮捕状は出ましたし、逮捕自体はされていますからね。実際に起訴されて前科がつくかは微妙ですけど。私も不思議だったので尋ねたんですよ。彼の答え、よかったら教えてさしあげますよ」
「お、おい、早く教えろよ」
よほど焦らした時の反応が面白いらしい。三嶋の笑みが増える。
「『志穂が僕を勧誘したからや』だそうですよ」
「どういうことだ」
富士が疑問を呈するのもわかる。勧誘で生じた関係がそのまま裏切りに直結するわけがない。
「幹部候補生に課される説明会の勧誘ノルマの時、成績が出なかった志穂さんは奥の手を使ったんです。その奥の手に彼が乗った。その奥の手というのは、『就職のつもりで入信しなよ』という言葉です」
富士は意外そうな顔をした。宗教団体に『就職』するという概念がなかったのだろう。三嶋もはじめは同じだった。しかし、生活を成り立たせる術を持つことを就職というのならば、宗教団体に入って衣食住を賄ってもらうというのは一種の就職ともいえる。
「亮成くんには魅力的だったようですよ。なにせ、その時の彼は院進志望だったにもかかわらず院試に落ち、かといって就職するにも内定がまるで見つからない状態だったそうですから。そこで、志穂さんに教団の十分な研究設備を見せられたら、多分私だって釣られます」
どん底の状態で救いを見せられる。まさに、教団のカモといえる精神状態だ。
「志穂さんの勧誘に亮成くんは飛びつきました。教団に入って幹部候補生になり、薬学の研究をして生活するという生活を選んだわけです。しかし、ここに入信してできることといえば自白剤と幻覚剤の研究ばかり。しかも、その研究すらもできずに雑用をこなす日々。おまけに毎日のように罵倒をされる。一度だけ、亮成くんは志穂さんに愚痴をこぼしたそうです。自分の予想と違った、と。彼女はその時、ごめんね、と一言呟いたそうです。その言葉の裏で、一体彼女が何を思ったんでしょうね」
「洗脳しきれていなかったということか」
「洗脳はされていたでしょうね。でも、解除されたんだと思いますよ。薬理部での扱いがあまりに悪かった結果でしょう」
亮成がコミュ障だったせいで、洗脳状態がどのレベルまで進んでいるか、辻はわからなかったのだろうと三嶋は予想している。コミュ障が身を助ける珍しい例だ。
薬理部の不憫な環境のことを、富士は知らなかったのだろうか。そんなことはあるまい。知っていながらも無視したに違いない。
「亮成は元から教団を裏切ろうとしていたってのか」
「そうなんじゃないですか?」
「じゃあ、何故あの女は、亮成のその願望を知っていたんだ」
くすりと三嶋が笑う。隙の無い笑み、三嶋の得意顔だ。
「亮成くん本人に聞きました」
「聞いた……? そんなことができるのか」
「亮成くんも、表に名前が出ていないだけで逮捕状は出ましたし、逮捕自体はされていますからね。実際に起訴されて前科がつくかは微妙ですけど。私も不思議だったので尋ねたんですよ。彼の答え、よかったら教えてさしあげますよ」
「お、おい、早く教えろよ」
よほど焦らした時の反応が面白いらしい。三嶋の笑みが増える。
「『志穂が僕を勧誘したからや』だそうですよ」
「どういうことだ」
富士が疑問を呈するのもわかる。勧誘で生じた関係がそのまま裏切りに直結するわけがない。
「幹部候補生に課される説明会の勧誘ノルマの時、成績が出なかった志穂さんは奥の手を使ったんです。その奥の手に彼が乗った。その奥の手というのは、『就職のつもりで入信しなよ』という言葉です」
富士は意外そうな顔をした。宗教団体に『就職』するという概念がなかったのだろう。三嶋もはじめは同じだった。しかし、生活を成り立たせる術を持つことを就職というのならば、宗教団体に入って衣食住を賄ってもらうというのは一種の就職ともいえる。
「亮成くんには魅力的だったようですよ。なにせ、その時の彼は院進志望だったにもかかわらず院試に落ち、かといって就職するにも内定がまるで見つからない状態だったそうですから。そこで、志穂さんに教団の十分な研究設備を見せられたら、多分私だって釣られます」
どん底の状態で救いを見せられる。まさに、教団のカモといえる精神状態だ。
「志穂さんの勧誘に亮成くんは飛びつきました。教団に入って幹部候補生になり、薬学の研究をして生活するという生活を選んだわけです。しかし、ここに入信してできることといえば自白剤と幻覚剤の研究ばかり。しかも、その研究すらもできずに雑用をこなす日々。おまけに毎日のように罵倒をされる。一度だけ、亮成くんは志穂さんに愚痴をこぼしたそうです。自分の予想と違った、と。彼女はその時、ごめんね、と一言呟いたそうです。その言葉の裏で、一体彼女が何を思ったんでしょうね」
「洗脳しきれていなかったということか」
「洗脳はされていたでしょうね。でも、解除されたんだと思いますよ。薬理部での扱いがあまりに悪かった結果でしょう」
亮成がコミュ障だったせいで、洗脳状態がどのレベルまで進んでいるか、辻はわからなかったのだろうと三嶋は予想している。コミュ障が身を助ける珍しい例だ。
薬理部の不憫な環境のことを、富士は知らなかったのだろうか。そんなことはあるまい。知っていながらも無視したに違いない。
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