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Mission:消えるカジノ
第133話:口座 ~できるかどうかわからない~
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「カジノ用の口座と思われる銀行口座に関与している人間の氏名が出ました。源氏名と繋がりがわからないので、免許証の写真で判別をお願いします」
飯田に電話をかけて聞き出した口座はやはりカジノのものだったらしい。
「口座を客に教えるなんてこと、あるんですね」
「そもそも、奥のVIPルームに入れるような人間しか金は借りられないんだから、そのVIP相手になら口座くらい教えるさ」
伊沢が飯田を引き当てたのが強かった。いや、飯田がカジノに二回しか通っていないという身分ながら、付き合いでVIPルームに入っていたのが強かった。これが冬野だったら、また別のアプローチが必要だっただろうな、と諏訪は思う。冬野に失礼な言い方ではあるが。
多賀が諏訪に二十枚ほど写真を渡す。裏に書いてある名前が本名ということなのだろう。諏訪は渡された写真の面面に、ペンで源氏名を書き込んでいく。いくつか知らない顔があったが、それは素直に知らないと書いた。
「……えなさんの写真だけ、どこにもないな」
南雲の写真もなかったが、彼の場合は本名が分かっているので特に気にしていない。だが、支配人の玉村えなの写真がないのは困った。
「そうですよね。僕は彼女の顔を知りませんけど、年齢的に当てはまる写真がなかったので、嫌な予感はしてました」
「この口座、メインバンクではないのかもな」
「微妙なところだけどな。メインバンクじゃないと仮定しても、それにしては口座に触ってる人間も多いし。最もよく使っている口座がこれなのは間違いないはずだ」
「それにしても、振り込みが多いのはどうしてなんでしょうか。おかげで、こっちは調べやすくて助かりましたけど」
「現金引き出しは限度額があるからだろ」
あっさり答えを出したのはやはり章だ。
「VIPとスタッフしか使わない口座だから安心しているだろうしな」
「やっぱ、玉村の本名がわからないのは厳しいよなぁ」
横から覗き込んできた春日がため息をつく。
「ああ、えなさんが実質的なカジノのボスだからな。スタッフ自体は替えがきくから、新しい賭場を作ろうと思えば作れてしまう」
不死のカジノ、それはどこにいるとも知れないオーナーが生み出しただけのものではない。ラスベガス帰りの敏腕支配人、玉村えなの存在によって成り立っている。
「どうしても、玉村えなの本名は分からないのか」
章が腕組みをして問いを投げかけてきた。
「ええ」
「やっぱり、必要だよな。彼女の本名は」
「ええ、まあ……」
章は少し首をかしげて目を瞑り、眉間にしわを寄せている。
「……僕が調べてみるよ。できるかどうか、わからないけど」
「章さんが、ですか?」
銀行口座が唯一のルートだと思っていたから、諏訪は驚いた。
「いや、それが唯一のルートで間違いないよ。僕は無理に別ルートを開拓するだけだ。本名がわかる可能性は高くないと思う」
口元を一文字に結んでいるのは、自信家の章にしては珍しいことだった。
「僕に、三日間だけ時間をくれ。それで駄目だったら、諦めてくれ」
「わかりました」
章の気迫に押され、諏訪は一歩引きながら頷いた。
飯田に電話をかけて聞き出した口座はやはりカジノのものだったらしい。
「口座を客に教えるなんてこと、あるんですね」
「そもそも、奥のVIPルームに入れるような人間しか金は借りられないんだから、そのVIP相手になら口座くらい教えるさ」
伊沢が飯田を引き当てたのが強かった。いや、飯田がカジノに二回しか通っていないという身分ながら、付き合いでVIPルームに入っていたのが強かった。これが冬野だったら、また別のアプローチが必要だっただろうな、と諏訪は思う。冬野に失礼な言い方ではあるが。
多賀が諏訪に二十枚ほど写真を渡す。裏に書いてある名前が本名ということなのだろう。諏訪は渡された写真の面面に、ペンで源氏名を書き込んでいく。いくつか知らない顔があったが、それは素直に知らないと書いた。
「……えなさんの写真だけ、どこにもないな」
南雲の写真もなかったが、彼の場合は本名が分かっているので特に気にしていない。だが、支配人の玉村えなの写真がないのは困った。
「そうですよね。僕は彼女の顔を知りませんけど、年齢的に当てはまる写真がなかったので、嫌な予感はしてました」
「この口座、メインバンクではないのかもな」
「微妙なところだけどな。メインバンクじゃないと仮定しても、それにしては口座に触ってる人間も多いし。最もよく使っている口座がこれなのは間違いないはずだ」
「それにしても、振り込みが多いのはどうしてなんでしょうか。おかげで、こっちは調べやすくて助かりましたけど」
「現金引き出しは限度額があるからだろ」
あっさり答えを出したのはやはり章だ。
「VIPとスタッフしか使わない口座だから安心しているだろうしな」
「やっぱ、玉村の本名がわからないのは厳しいよなぁ」
横から覗き込んできた春日がため息をつく。
「ああ、えなさんが実質的なカジノのボスだからな。スタッフ自体は替えがきくから、新しい賭場を作ろうと思えば作れてしまう」
不死のカジノ、それはどこにいるとも知れないオーナーが生み出しただけのものではない。ラスベガス帰りの敏腕支配人、玉村えなの存在によって成り立っている。
「どうしても、玉村えなの本名は分からないのか」
章が腕組みをして問いを投げかけてきた。
「ええ」
「やっぱり、必要だよな。彼女の本名は」
「ええ、まあ……」
章は少し首をかしげて目を瞑り、眉間にしわを寄せている。
「……僕が調べてみるよ。できるかどうか、わからないけど」
「章さんが、ですか?」
銀行口座が唯一のルートだと思っていたから、諏訪は驚いた。
「いや、それが唯一のルートで間違いないよ。僕は無理に別ルートを開拓するだけだ。本名がわかる可能性は高くないと思う」
口元を一文字に結んでいるのは、自信家の章にしては珍しいことだった。
「僕に、三日間だけ時間をくれ。それで駄目だったら、諦めてくれ」
「わかりました」
章の気迫に押され、諏訪は一歩引きながら頷いた。
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