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第二話 雪弥の立場
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江戸末期、江戸市中に小さな剣術道場があった
「雪弥さま、お願いですから剣を振るのをおやめ下さい」
一人の道場生がたしなめる
雪弥は白石剣術道場の一人息子として生まれたが Ωであるために跡は継げず婿を取る事が決まっていた。
Ωであると云うだけで女のように扱われるのが得心がいかず力ではかなわないまでも日々剣術の練習に励んでいた。
雪弥の父は剣術に興味を持つのを喜んでいるようだったが。
「雪弥どの、せめて愛想よく笑ってはどうだ?」
話しに割り入って来たのは従兄弟の白石正之だった。
雪弥は正之の顔をチラリと見る。子供のように頬を膨らませ言い返そうとした瞬間、後ろから別の声がした。
「そうだな、そんなでは嫁の貰い手がなくなるな」
軽口を言いながら東條 満は笑って話の腰を折る。
正之と満は道場生の中では一位二位を争う腕の持ち主だ
雪弥は顔を赤らめて応える
「別に嫁になど行きません…僕にだって道場は継げますっ!」
もうすぐ十八になる雪弥はそんな事を言う
「なんだ せっかく俺が貰ってやろうと思うたのに」
四つ上の満はからかうように顔を覗きこむ
三人は幼い頃からの幼馴染で 体格や実力など雪弥も本当は分かっていたが中々認められずにいる
傍目に雪弥と満は似合いの二人でこんなやり取りも皆微笑ましく眺めていた
ただ 正之だけは内心面白くなかったが雪弥より十も年上故に表には出さずに見守っていた。
◇◇◇
数ヶ月後自体は一変する
「どう云う事ですか?父上」
雪弥は苛立ち気に聞き返す
二ヶ月ほど病気療養をしていた父は決心したように、もう一度話しを繰り返した。
「雪弥 お前に婿を迎えてわしは隠居したいと思うのだ」
「ですが父上…」
躊躇するには理由があった
「正之を婿に…と考えておるのだ」
何故父が満でなく正之と結婚させようとするのか理解できなかった。
満の方が剣術の腕もたち、公然の事実で満が雪弥に好意を持っているのは分かっている筈なのに…
理由が有るとすればただ一つ。
「できれば白石の縁者が良いと思うのだ」
やはり…そうなのか
だが雪弥にとって十も年上の正之には兄以上の感情を持つ事が出来ない
それに満はどうするのだろう…それが気に掛かった
「父上できればもう少し考えたいと思います…」
気弱になっている父にこれ以上言い返す事は出来ない
稽古に出られるようになれば気が変わる…そう願うしかなかった
「雪弥さま、お願いですから剣を振るのをおやめ下さい」
一人の道場生がたしなめる
雪弥は白石剣術道場の一人息子として生まれたが Ωであるために跡は継げず婿を取る事が決まっていた。
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雪弥の父は剣術に興味を持つのを喜んでいるようだったが。
「雪弥どの、せめて愛想よく笑ってはどうだ?」
話しに割り入って来たのは従兄弟の白石正之だった。
雪弥は正之の顔をチラリと見る。子供のように頬を膨らませ言い返そうとした瞬間、後ろから別の声がした。
「そうだな、そんなでは嫁の貰い手がなくなるな」
軽口を言いながら東條 満は笑って話の腰を折る。
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雪弥は顔を赤らめて応える
「別に嫁になど行きません…僕にだって道場は継げますっ!」
もうすぐ十八になる雪弥はそんな事を言う
「なんだ せっかく俺が貰ってやろうと思うたのに」
四つ上の満はからかうように顔を覗きこむ
三人は幼い頃からの幼馴染で 体格や実力など雪弥も本当は分かっていたが中々認められずにいる
傍目に雪弥と満は似合いの二人でこんなやり取りも皆微笑ましく眺めていた
ただ 正之だけは内心面白くなかったが雪弥より十も年上故に表には出さずに見守っていた。
◇◇◇
数ヶ月後自体は一変する
「どう云う事ですか?父上」
雪弥は苛立ち気に聞き返す
二ヶ月ほど病気療養をしていた父は決心したように、もう一度話しを繰り返した。
「雪弥 お前に婿を迎えてわしは隠居したいと思うのだ」
「ですが父上…」
躊躇するには理由があった
「正之を婿に…と考えておるのだ」
何故父が満でなく正之と結婚させようとするのか理解できなかった。
満の方が剣術の腕もたち、公然の事実で満が雪弥に好意を持っているのは分かっている筈なのに…
理由が有るとすればただ一つ。
「できれば白石の縁者が良いと思うのだ」
やはり…そうなのか
だが雪弥にとって十も年上の正之には兄以上の感情を持つ事が出来ない
それに満はどうするのだろう…それが気に掛かった
「父上できればもう少し考えたいと思います…」
気弱になっている父にこれ以上言い返す事は出来ない
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