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第2部:ゆるふわスローライフに新たな風? ~噂の真相と小さな来訪者たち~
第39話:学者の置き土産と『モル観察日記』。僕の新たな趣味、それは愛する相棒の記録
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エリオットお兄さんが「近いうちに王都へ帰る」と俺に告げてから、数日が過ぎた。
彼は旅の準備を進めているらしく、屋敷の中を忙しそうに動き回ったり、書斎で何やら書き物をしたりしている姿を時折見かける。
その度に、モルが彼の後をちょこちょことついて行こうとしたり、彼の足元にすり寄ったりするので、やっぱりモルも寂しいんだろうな、と思う。
(エリオットお兄さん、本当に帰っちゃうんだなぁ……)
俺自身も、なんだかんだで彼に懐いていたのかもしれない。
彼がくれる珍しいお菓子も美味しかったし、彼が話してくれる王都の話(俺には難しくてよく分からなかったけど)も、それなりに面白かった。
そんなある日の午後、俺が部屋でモルと遊んでいると、エリオットさんが訪ねてきた。
その手には、小さな包みが握られている。
「ルーク様、少しよろしいでしょうか。実は、二日後、王都へ出発することになりまして……これは、滞在中のお礼と、ほんのささやかな餞別です」
そう言って、エリオットさんは俺に包みを差し出した。
「え? 僕に?」
受け取って開けてみると、中には一冊の真新しい革張りのノートと、数本の羽ペン、そして色とりどりのインク瓶が入っていた。
どれも上質で、子供が使うにはもったいないくらい立派なものだ。
「これは……?」
「ルーク様は、自然や動物を観察するのがお好きなようですし、とても豊かな感受性をお持ちだと感じました。日々の発見や、感じたことを書き留めておくのに、お使いいただければと」
エリオットさんは、少し照れたようにそう言った。
(観察眼が鋭い……?豊かな感受性……? あの人、本当に俺のこと買い被りすぎじゃないかな……)
俺が日々感じていることといえば、おやつの美味しさか、昼寝の心地よさくらいなものだ。
まあ、せっかくもらったのだから、何かに使ってみるか。
とりあえず、一番綺麗な瑠璃色のインクを選び、羽ペンに浸してみる。
(何を書こうかな……そうだ、モルの絵でも描いてみようかな)
俺は、膝の上で丸くなっているモルを見ながら、お世辞にも上手とは言えないモルの似顔絵(というか、ただの丸に耳と尻尾がついただけの何か)をノートの最初のページに描いてみた。
それを見たモルは、「きゅい?」と不思議そうに首を傾げている。どうやら、自分のことだとは分かっていないらしい。
エリオットさんは、その様子を微笑ましそうに眺めていた。
ふと、ノートの最後のページに、何か小さな文字で書き込みがあるのに気づいた。
エリオットさんの筆跡だ。
『追伸:モル殿の観察日記をつけるのも、また一興かと存じます。彼の行動一つ一つに、世界の真理が隠されているやもしれませんので。またお会いできる日を楽しみにしております』
(……やっぱり、あの人、モルのこと大好きだったんだな……そして、また会えるって……)
俺は、エリオットさんの熱意と、最後の言葉に、少しだけ胸が温かくなるのを感じた。
モルの観察日記か。
確かに、毎日一緒にいるモルのことを記録するのは、面白いかもしれない。
その日から、俺の新しい日課が一つ増えた。
それは、『モル観察日記』をつけることだ。
といっても、大した内容ではない。
――今日、モルは日向ぼっこをしながら、三回あくびをした。とても可愛かった。エリオットお兄さん、明日帰っちゃうの、ちょっと寂しいかも。
――今日、モルは俺のおやつを半分も食べた。食いしん坊で可愛い。エリオットお兄さんにあげるクッキー、美味しくできたかな。
そんな、他愛もない記録ばかりだ。
だが、それをエリオットさんにもらった綺麗なノートに、綺麗な色のインクで書くのは、思ったよりも楽しい作業だった。
(この日記、いつかエリオットお兄さんにまた会えたら、見せてあげようかな……)
そんなことを考えながら、俺は旅立つ友人のことを思い、そして愛しい相棒の、何気ないけれどかけがえのない日常を、一文字一文字、大切に綴っていくのだった。
彼は旅の準備を進めているらしく、屋敷の中を忙しそうに動き回ったり、書斎で何やら書き物をしたりしている姿を時折見かける。
その度に、モルが彼の後をちょこちょことついて行こうとしたり、彼の足元にすり寄ったりするので、やっぱりモルも寂しいんだろうな、と思う。
(エリオットお兄さん、本当に帰っちゃうんだなぁ……)
俺自身も、なんだかんだで彼に懐いていたのかもしれない。
彼がくれる珍しいお菓子も美味しかったし、彼が話してくれる王都の話(俺には難しくてよく分からなかったけど)も、それなりに面白かった。
そんなある日の午後、俺が部屋でモルと遊んでいると、エリオットさんが訪ねてきた。
その手には、小さな包みが握られている。
「ルーク様、少しよろしいでしょうか。実は、二日後、王都へ出発することになりまして……これは、滞在中のお礼と、ほんのささやかな餞別です」
そう言って、エリオットさんは俺に包みを差し出した。
「え? 僕に?」
受け取って開けてみると、中には一冊の真新しい革張りのノートと、数本の羽ペン、そして色とりどりのインク瓶が入っていた。
どれも上質で、子供が使うにはもったいないくらい立派なものだ。
「これは……?」
「ルーク様は、自然や動物を観察するのがお好きなようですし、とても豊かな感受性をお持ちだと感じました。日々の発見や、感じたことを書き留めておくのに、お使いいただければと」
エリオットさんは、少し照れたようにそう言った。
(観察眼が鋭い……?豊かな感受性……? あの人、本当に俺のこと買い被りすぎじゃないかな……)
俺が日々感じていることといえば、おやつの美味しさか、昼寝の心地よさくらいなものだ。
まあ、せっかくもらったのだから、何かに使ってみるか。
とりあえず、一番綺麗な瑠璃色のインクを選び、羽ペンに浸してみる。
(何を書こうかな……そうだ、モルの絵でも描いてみようかな)
俺は、膝の上で丸くなっているモルを見ながら、お世辞にも上手とは言えないモルの似顔絵(というか、ただの丸に耳と尻尾がついただけの何か)をノートの最初のページに描いてみた。
それを見たモルは、「きゅい?」と不思議そうに首を傾げている。どうやら、自分のことだとは分かっていないらしい。
エリオットさんは、その様子を微笑ましそうに眺めていた。
ふと、ノートの最後のページに、何か小さな文字で書き込みがあるのに気づいた。
エリオットさんの筆跡だ。
『追伸:モル殿の観察日記をつけるのも、また一興かと存じます。彼の行動一つ一つに、世界の真理が隠されているやもしれませんので。またお会いできる日を楽しみにしております』
(……やっぱり、あの人、モルのこと大好きだったんだな……そして、また会えるって……)
俺は、エリオットさんの熱意と、最後の言葉に、少しだけ胸が温かくなるのを感じた。
モルの観察日記か。
確かに、毎日一緒にいるモルのことを記録するのは、面白いかもしれない。
その日から、俺の新しい日課が一つ増えた。
それは、『モル観察日記』をつけることだ。
といっても、大した内容ではない。
――今日、モルは日向ぼっこをしながら、三回あくびをした。とても可愛かった。エリオットお兄さん、明日帰っちゃうの、ちょっと寂しいかも。
――今日、モルは俺のおやつを半分も食べた。食いしん坊で可愛い。エリオットお兄さんにあげるクッキー、美味しくできたかな。
そんな、他愛もない記録ばかりだ。
だが、それをエリオットさんにもらった綺麗なノートに、綺麗な色のインクで書くのは、思ったよりも楽しい作業だった。
(この日記、いつかエリオットお兄さんにまた会えたら、見せてあげようかな……)
そんなことを考えながら、俺は旅立つ友人のことを思い、そして愛しい相棒の、何気ないけれどかけがえのない日常を、一文字一文字、大切に綴っていくのだった。
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