異世界でも働きたくないので、辺境貴族の末っ子としてもふもふと昼寝します

おまる

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第2部:ゆるふわスローライフに新たな風? ~噂の真相と小さな来訪者たち~

第40話:お昼寝道の探求者。至高の眠りのために!今日も僕は新たな昼寝スポットを探す

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 エリオットお兄さんが、明日には王都へ帰ってしまう。
 昨夜、彼から素敵なノートと羽ペンをもらった時、改めてその事実を突きつけられ、なんだか少しだけ胸の奥がチクリとした。
 短い間だったけど、彼と話したり、彼がモルを興味深そうに観察しているのを見るのは、それなりに楽しかったからだ。

(まあ、でも、僕の日常は何も変わらないけどね!)

 そう、俺の『ゆるふわニートライフ』は、誰がいようといまいと、今日も今日とて健在なのである。
 そして、その中でも特に重要な活動――それが『お昼寝』だ。
 俺は、ルーク・クライネルとして、この世界で『お昼寝道の探求者』となることを(勝手に)誓っているのだから。

 エリオットお兄さんも、今日は旅の最後の準備で忙しいらしく、朝から書斎にこもって何やら書き物をしている様子。
 邪魔をしないように、俺はモルを連れて、新たなる至高の昼寝スポットを探しに出かけることにした。
 春の陽気が心地よい最近は、庭のカシワの木の下が定番だったが、今日は少し気分を変えたい。それに、あそこはエリオットさんが植物観察でよく通る場所でもあるしな。

 屋敷の中をうろうろと歩き回り、ようやく見つけたのが、東向きの翼にある、あまり使われていない小さなサンルームだった。
 そこには、古いがクッションの効いた座り心地の良さそうな長椅子が一つと、いくつかの観葉植物が置かれているだけ。
 だが、ガラス窓から差し込む午後の陽光が床に温かい陽だまりを作っており、静かで、何とも言えない心地よい空間となっていた。

「モル、ここにしようか。ここなら、誰にも邪魔されずに、思う存分お昼寝できそうだ」

「きゅい!」

 モルも、この新しい秘密基地(お昼寝用)が気に入ったようだ。
 俺は長椅子の上に持参した毛布を広げ、いつものように『魔法』で最高の寝心地に改良する。
 ふかふか、適温、そしてほんのりお日様の香り。完璧だ。
 俺とモルは、その極上の寝床に一緒に寝転がった。

(ふふふ……エリオットお兄さんが帰る前に、こんな素晴らしい聖域を発見できるとは……僕って、やっぱり持ってるな……)

 そんな自己満足に浸りながら、ゆっくりと目を閉じる。
 隣では、モルもすでに気持ちよさそうに小さな寝息を立て始めている。
 その寝息と、遠くで聞こえる小鳥のさえずりが、最高のBGMだ。

 どれくらい眠っただろうか。
 ふと、母セレスティーナとメイド長マーサの話し声が、サンルームの少し開いたドアの隙間から聞こえてきた。どうやら、廊下でお茶を飲みながら談笑しているらしい。

「それにしても、ルーク坊ちゃまは本当によくお眠りになりますわね。モル様とご一緒に、いつも本当に気持ちよさそうに」

 マーサの、いつもの感心したような声。

「ええ、本当に。あの子を見ていると、こちらまで眠くなってしまうわ。でも、エリオット様も仰っていたではありませんか。あの方が健やかに、幸せに過ごすことが、この土地にとって何よりの『祝福』なのだと」

 母の声には、深い愛情と、どこか誇らしげな響きがあった。

(……うん、確かにエリオットお兄さん、そんなようなこと言ってたな……僕が幸せに昼寝してるだけで、この土地の祝福になるなんて、やっぱり最高の役得だ……!)

 俺は、寝ぼけ眼をこすりながら、エリオットさんの言葉を改めて自分に都合よく解釈する。
 学者先生であるエリオットさんが言うのだから、きっと間違いないのだろう。
 俺の昼寝は、世界平和に貢献しているのだ!(たぶん)

(だとしたら……俺の『お昼寝道』は、もはや趣味の域を超えて、この土地の平和と繁栄に貢献する、崇高な『使命』と言えるのでは……!?)

 俺は、そのあまりにも壮大で(自分にとって)都合の良い結論に、一人で深く感動し、打ち震えた。
 そうだ、俺は選ばれたのだ。この地を『昼寝』によって救うために!

 俺は、新たな使命感に胸を熱くしながら(もちろん数秒後には忘れるのだが)、再び深く、そして心地よい眠りへと落ちていった。
 『お昼寝道の探求者』ルーク・クライネルの道は、今日も今日とて、尊く、そしてどこまでも続いているのである。
 明日旅立つエリオットお兄さんも、俺のこの崇高な使命と、新たに見つけたこの最高の昼寝スポットの素晴らしさを、きっと理解してくれるに違いない。……たぶん、教えてあげる時間はないけど。
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