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第2部:ゆるふわスローライフに新たな風? ~噂の真相と小さな来訪者たち~
第43話:いつも通りの毎日と遠いざわめき。僕の知らない所で何かが動いてる?まあ、お昼寝しよっと!
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エリオットさんがアスターテ領を去ってから、季節は春から初夏へと移り変わろうとしていた。
日差しは日に日に力を増し、木々の緑は深まり、庭の花々は最後の見事な花を咲かせている。
俺の日常は、と言えば、これ以上ないほどに平和で、穏やかで、そして相変わらず『何もしない』日々が続いていた。
「ふぅ……やっぱり、ここが一番落ち着くなぁ……」
俺は、お気に入りのサンルームの長椅子の上で、モルを抱き枕にしながら大きく伸びをした。
ガラス窓から差し込む柔らかな陽光が、俺とモルを優しく包み込んでいる。
遠くからは、小鳥のさえずりと、メイドたちが庭仕事をする楽しげな声が聞こえてくる。
まさに、絵に描いたようなスローライフだ。
(お客さんがいるのも悪くなかったけど、やっぱり、こうしてモルと二人きりでだらだらするのが最高だな……)
エリオットさんがいた頃は、なんだかんだで彼に気を遣ったり、彼の鋭い観察眼(本人は隠しているつもりだったろうけど、俺にはバレバレだった)から逃れるために、ほんの少しだけ神経を使っていた気がする。
その点、今は何の気兼ねもない。
思う存分、だらけられる。素晴らしい。
「ねえ、モル。今日のおやつ、何がいいかなぁ。マーサに頼んで、冷たいフルーツゼリーでも作ってもらおうか?」
俺がそう言うと、膝の上のモルは「きゅい!」と嬉しそうに返事をした。
どうやら、モルもフルーツゼリーには賛成らしい。
(よし、決まりだな。後でマーサにお願いしに行こう)
そんな他愛もないことを考えていると、ふと、この前のエリオットさんの言葉が頭をよぎった。
「あなたらしく、モル殿と共に、幸せに過ごしてください。それが、この土地にとって、そしておそらくは……世界にとっても、かけがえのない宝となるでしょう」
あの時は、よく意味が分からなかったけど、今なら少しだけ分かるような気がする。
俺がこうして、毎日モルと楽しく、幸せに暮らしていること。
それ自体が、もしかしたら本当に、このアスターテ領の豊かさや平和に、ほんの少しだけ貢献しているのかもしれない。
俺の『生活魔法:至福の日常』が、俺の幸せな気持ちに呼応して、周囲にも良い影響を与えているのだとしたら……。
(だとしたら、俺がこれからも全力で『何もしない』で幸せに暮らすことは、もはや『義務』と言っても過言ではないのでは……!?)
なんと素晴らしい結論だろうか。
俺は、自分の都合の良い解釈に、一人で深く感動していた。
これなら、罪悪感なく、心置きなく、ゆるふわニートライフを満喫できるというものだ。
「ふふふ……最高だね、モル。僕たちの毎日は、いつだって最高なんだ!」
俺は、モルをぎゅっと抱きしめた。
モルも、嬉しそうに俺の頬にすり寄ってくる。
この温かさ、このもふもふ感、そしてこの上ない安心感。
これさえあれば、俺は他に何もいらない。
その頃、遠く離れた王都では。
魔法アカデミーの一室で、エリオット・アシュフォードが、数人の年配の魔法使いたちを前に、アスターテ領での調査結果を報告していた。
彼の報告書には、アスターテ領の異常な豊穣、そこで確認された特異な『祝福』の力、そして何よりも、謎の銀色の小動物(モル)と、その傍らにいた無邪気な少年(ルーク)のことが、詳細かつ熱意を込めて記されていた。
「……以上が、私が見聞してきた全てです。アスターテの地には、我々の既知の魔法体系では説明のつかない、極めて強力で、かつ広範囲に影響を及ぼす『祝福』の力が存在している可能性が極めて高いと、私は結論づけました」
エリオットの言葉に、年配の魔法使いたちは眉をひそめたり、顎に手をやったりして、難しい顔で聞き入っている。
「ふむ……シルヴァン・フェアリーの可能性、か……そして、その傍らにいるという少年……興味深い報告だ、アシュフォード君」
一人の高名な老魔法使いが、重々しく口を開いた。
「その『祝福』の力が、もし人為的に制御可能なのであれば……あるいは、その源泉たる存在を保護し、研究することができれば……我が国にとって、いや、世界にとって、計り知れない恩恵をもたらすやもしれんな……」
その言葉には、抑えきれない野心と、どこか不穏な響きが込められていた。
エリオットは、その空気にわずかな危惧を覚えながらも、研究者としての立場を崩さなかった。
アスターテの地で、今日も今日とて平和な昼寝を満喫しているルークは、そんな遠い王都でのざわめきなど、知る由もなかった。
彼の『ゆるふわスローライフ』は、まだ始まったばかり。
そして、その日常が、彼が気づかないうちに、少しずつ大きな世界の流れと交錯し始めていることにも、彼はまだ気づいていないのだった。
日差しは日に日に力を増し、木々の緑は深まり、庭の花々は最後の見事な花を咲かせている。
俺の日常は、と言えば、これ以上ないほどに平和で、穏やかで、そして相変わらず『何もしない』日々が続いていた。
「ふぅ……やっぱり、ここが一番落ち着くなぁ……」
俺は、お気に入りのサンルームの長椅子の上で、モルを抱き枕にしながら大きく伸びをした。
ガラス窓から差し込む柔らかな陽光が、俺とモルを優しく包み込んでいる。
遠くからは、小鳥のさえずりと、メイドたちが庭仕事をする楽しげな声が聞こえてくる。
まさに、絵に描いたようなスローライフだ。
(お客さんがいるのも悪くなかったけど、やっぱり、こうしてモルと二人きりでだらだらするのが最高だな……)
エリオットさんがいた頃は、なんだかんだで彼に気を遣ったり、彼の鋭い観察眼(本人は隠しているつもりだったろうけど、俺にはバレバレだった)から逃れるために、ほんの少しだけ神経を使っていた気がする。
その点、今は何の気兼ねもない。
思う存分、だらけられる。素晴らしい。
「ねえ、モル。今日のおやつ、何がいいかなぁ。マーサに頼んで、冷たいフルーツゼリーでも作ってもらおうか?」
俺がそう言うと、膝の上のモルは「きゅい!」と嬉しそうに返事をした。
どうやら、モルもフルーツゼリーには賛成らしい。
(よし、決まりだな。後でマーサにお願いしに行こう)
そんな他愛もないことを考えていると、ふと、この前のエリオットさんの言葉が頭をよぎった。
「あなたらしく、モル殿と共に、幸せに過ごしてください。それが、この土地にとって、そしておそらくは……世界にとっても、かけがえのない宝となるでしょう」
あの時は、よく意味が分からなかったけど、今なら少しだけ分かるような気がする。
俺がこうして、毎日モルと楽しく、幸せに暮らしていること。
それ自体が、もしかしたら本当に、このアスターテ領の豊かさや平和に、ほんの少しだけ貢献しているのかもしれない。
俺の『生活魔法:至福の日常』が、俺の幸せな気持ちに呼応して、周囲にも良い影響を与えているのだとしたら……。
(だとしたら、俺がこれからも全力で『何もしない』で幸せに暮らすことは、もはや『義務』と言っても過言ではないのでは……!?)
なんと素晴らしい結論だろうか。
俺は、自分の都合の良い解釈に、一人で深く感動していた。
これなら、罪悪感なく、心置きなく、ゆるふわニートライフを満喫できるというものだ。
「ふふふ……最高だね、モル。僕たちの毎日は、いつだって最高なんだ!」
俺は、モルをぎゅっと抱きしめた。
モルも、嬉しそうに俺の頬にすり寄ってくる。
この温かさ、このもふもふ感、そしてこの上ない安心感。
これさえあれば、俺は他に何もいらない。
その頃、遠く離れた王都では。
魔法アカデミーの一室で、エリオット・アシュフォードが、数人の年配の魔法使いたちを前に、アスターテ領での調査結果を報告していた。
彼の報告書には、アスターテ領の異常な豊穣、そこで確認された特異な『祝福』の力、そして何よりも、謎の銀色の小動物(モル)と、その傍らにいた無邪気な少年(ルーク)のことが、詳細かつ熱意を込めて記されていた。
「……以上が、私が見聞してきた全てです。アスターテの地には、我々の既知の魔法体系では説明のつかない、極めて強力で、かつ広範囲に影響を及ぼす『祝福』の力が存在している可能性が極めて高いと、私は結論づけました」
エリオットの言葉に、年配の魔法使いたちは眉をひそめたり、顎に手をやったりして、難しい顔で聞き入っている。
「ふむ……シルヴァン・フェアリーの可能性、か……そして、その傍らにいるという少年……興味深い報告だ、アシュフォード君」
一人の高名な老魔法使いが、重々しく口を開いた。
「その『祝福』の力が、もし人為的に制御可能なのであれば……あるいは、その源泉たる存在を保護し、研究することができれば……我が国にとって、いや、世界にとって、計り知れない恩恵をもたらすやもしれんな……」
その言葉には、抑えきれない野心と、どこか不穏な響きが込められていた。
エリオットは、その空気にわずかな危惧を覚えながらも、研究者としての立場を崩さなかった。
アスターテの地で、今日も今日とて平和な昼寝を満喫しているルークは、そんな遠い王都でのざわめきなど、知る由もなかった。
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そして、その日常が、彼が気づかないうちに、少しずつ大きな世界の流れと交錯し始めていることにも、彼はまだ気づいていないのだった。
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