異世界でも働きたくないので、辺境貴族の末っ子としてもふもふと昼寝します

おまる

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第3部:ゆるふわスローライフは守られるべき! ~ちょっぴり騒がしい、お客様と秘密のお手紙~

第44話:王都から謎の小包!? 『危険物』かと思いきや、開けてみたらまさかの『癒やし系チートアイテム』の予感!

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 うららかな春の日差しが、クライネル子爵邸の庭を優しく包み込んでいる。
 柔らかな若草の上で、僕は愛する『モル』と一緒にごろんと寝転がり、今日の『モル観察日記』のネタを探していた。

(ん~、今日のモルはなんだかいつもより毛繕いに熱心な気がするなぁ。春だからおしゃれしたいのかな? それとも、僕の知らないところでデートの約束でも……いやいや、モルは僕のモルだし!)

 そんなくだらないことを考えながら、小さなペンを走らせる。
 僕の隣では、モルが「きゅいきゅい」と可愛らしい声で鳴きながら、僕の頬にすり寄ってきた。ふわふわの毛並みがくすぐったくて、思わず笑みがこぼれる。

「も~、モルったら甘えん坊さんだねぇ」

(最高です、もっとどうぞ)

 空には白い雲がゆっくりと流れ、小鳥たちの楽しげなさえずりが聞こえてくる。
 まさに『ゆるふわスローライフ』を体現したような、完璧な昼下がりだ。
 このままモルとお昼寝コースかな、なんて考えていると、遠くからパタパタと軽い足音が近づいてきた。

「ルーク、ここにいたのかい?」

 声の主は、僕の頼れる長兄、アラン兄様だった。
 いつもは領主補佐として忙しくしているアラン兄様が、こんな時間に庭へ来るなんて珍しい。

「アラン兄様、どうしたのぉ?」

 僕がのんびりと問いかけると、アラン兄様は手に持っていた小さな小包と一通の手紙を僕に見せながら、優しく微笑んだ。

「王都からの定期便が届いてね。ルーク宛に小包と手紙が来ていたよ」

「僕にぃ? だれからだろう?」

(まさか……前世の上司からの『出社要請』!? いやいや、ここは異世界だからそれはないはず……でも、もし万が一……)

 一瞬、前世のトラウマが脳裏をよぎったが、アラン兄様の次の言葉でその不安は霧散した。

「差出人は、エリオット・アシュフォード様からだ」

「えりおっとお兄さんから?」

 その名前を聞いて、僕の心はぽかぽかと温かくなった。
 エリオットお兄さんは、以前アスターテ領に滞在していた、王都の魔法アカデミーの研究者の人だ。物知りで優しくて、モルのことも「モル殿」なんて呼んで、すごく興味深そうに観察していたっけ。

 僕たちがそんな話をしていると、どこから聞きつけたのか、母様とセシル姉様も庭にやってきた。

「まあ、エリオット様からお手紙ですって? ルークは本当に誰からでも人に好かれるのねぇ」

 母様は嬉しそうに目を細めている。

「どんなことが書いてあるのかしら? ルーク、開けてみてもいい?」

 セシル姉様も興味津々といった様子だ。
 僕はこくりと頷き、アラン兄様から小包と手紙を受け取った。

 丁寧に封がされた小包を開けると、中からは数種類の乾燥したハーブと、小さな紙袋に入ったいくつかの種が出てきた。
 そして、エリオットお兄さんらしい、整った文字で書かれた手紙。

「ええと、『親愛なるルーク様、そしてモル殿。アスターテ領での日々は、私にとって忘れられない素晴らしいものでした。王都に戻り、アスターテ領の豊かな自然、特にあなたが淹れてくれたハーブティーの味を思い出すたび、心が温かくなります。これは私が王都で見つけた新しいハーブです。もしよろしければ、試してみてください。きっとあなたの手にかかれば、素晴らしいお茶になることでしょう。モル殿にも、くれぐれもよろしくお伝えください』だって」

(わーい、新しいハーブだぁ。これでお茶を淹れたら、またみんなが喜んでくれるかなぁ?)

 手紙の内容は、僕の『ゆるふわ生活』を脅かすようなものでは全くなく、むしろそれを後押ししてくれるような温かいものだった。
 僕は純粋に、新しいハーブの香りを確かめたり、種の形を眺めたりしてわくわくする。

「まあ、エリオット様も本当に律儀な方ね。ルーク、良かったわね」

 母様が優しく僕の頭を撫でてくれる。

「このハーブ、どんな香りがするのかしら? ルーク、今度一緒にお茶を淹れてみましょうよ」

 セシル姉様もにこにこと提案してくれた。

「うん! このハーブでお茶淹れたら、きっと美味しいと思うよぉ」

 僕は満面の笑みで頷いた。
 エリオットお兄さんからの思いがけない春の便りは、僕の『ゆるふわな日常』に、また一つ新しい楽しみを運んできてくれたようだ。
 隣ではモルも、新しいハーブの匂いをくんくんと嗅いで、「きゅるるん」と嬉しそうな声を上げていた。

(エリオットお兄さん、ありがとう。このハーブ、大切に使うね!)

 心の中でそっと呟きながら、僕は春の陽だまりの中で、新たなハーブティーへの期待に胸を膨らませるのだった。
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