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第3部:ゆるふわスローライフは守られるべき! ~ちょっぴり騒がしい、お客様と秘密のお手紙~
第51話:『アスターテの祝福』は規格外ッ! 賢者タイムの見学者、まさかの『誕生日ご招待』に困惑!?
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ルーク特製『天使のクッキー』による衝撃的な体験から数時間後。
アルフレッドとレオナルドは、どこか放心したような、それでいて目の奥に異様なまでの熱意を宿した状態で、クライネル家の夕食の席に着いていた。
いわゆる『賢者タイム』というやつかもしれない。
そして、彼らを待ち受けていたのは、本日何度目かも分からない、圧倒的な味覚の暴力だった。
食卓に並ぶのは、一見すると素朴な家庭料理。だが、一口食べれば分かる。素材の持つ旨味が極限まで引き出され、優しいながらも複雑で奥深い味わいが口の中に広がるのだ。
肉は驚くほど柔らかく、野菜は信じられないくらい甘い。パンですら、噛みしめるほどに豊かな風味が溢れ出してくる。
(もはや……何が起きても驚くものか……と思っていたが……甘かった……!)
アルフレッドは、出されたシチューを口に運びながら、内心で何度目かの敗北宣言をしていた。
レオナルドもまた、普段の尊大な態度はどこへやら、ただ黙々と、しかしどこか恍惚とした表情で料理を味わっている。
食事が一段落した頃、アルフレッドは震える声で、当主ライオネルに問いかけた。
もはや研究者としての体面も、貴族としてのプライドも、このアスターテ領ではあまり意味をなさないことを悟り始めていた。
「クライネル子爵……この、信じがたいほどの豊穣……そして、先ほど庭で頂いた、あの『クッキー』……これは、一体……何か、特別な『秘術』か、あるいは失われた古代の魔法でもお使いなのでしょうか……?」
その問いは、彼の魂からの叫びにも似ていた。
ライオネルは、穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと首を横に振った。
「はて……『秘術』などと、大げさなものではございませんよ、シュトラウス殿。アスターテの土地が豊かであるのは、古来よりの神々の恵みと、領民たちのたゆまぬ努力の賜物でございましょう。それに、妻や我が家の料理人の腕が良いのも、理由の一つやもしれませんな」
そして、ちらりとルークの方を見ながら、付け加えた。
「ああ、そういえば、うちの末っ子のルークは、時折不思議なほど美味しいものを作ることがございますが……まあ、子供の気まぐれのようなものですからな。ねえ、ルーク?」
「えへへー、僕、おかし作るのすきだよぉ。みんながよろこんでくれると、うれしいんだぁ」
僕がにこにこと答えると、アルフレッドとレオナルドは「「(それだーーー!!!)」」と内心で絶叫したが、もちろん口には出せない。
この親子、とぼけているのか、本気でそう思っているのか……どちらにしても、尋常ではない。
これ以上、直接的な情報を引き出すのは不可能だと判断したのだろう。
アルフレッドは、ややあってから、居住まいを正して懇願した。
「……つきましては、クライネル子爵。我々、このアスターテ領の『奇跡』について、もう少しだけ、滞在し調査をさせて頂くことは叶いませぬでしょうか? このままでは、アカデミーに戻っても報告のしようが……」
その言葉には、切実な響きが込められていた。
ライオネルは、内心(よし、食いついたな)とほくそ笑みつつも、表面上は驚いたような顔を作った。
「ほう、それはそれはご熱心なことで。アスターテのような辺境に、それほど長くご滞在いただくのも恐縮ですが……」
少し間を置いて、ライオネルはとんでもない爆弾を投下した。
「実は、数日後になりますが、この末っ子ルークの、八歳の誕生日でしてな。ささやかではございますが、家族で祝宴を開く予定なのです。もし、お二方のご都合がよろしければ、お客様としてご一緒にいかがですかな? きっと、良い思い出になりましょうぞ」
「「は……はぁ……!? た、誕生日……で、ございますか……!?」」
アルフレッドとレオナルドは、完全に不意を突かれた。
この状況で、断れるわけがない。いや、むしろ、願ってもないチャンスかもしれない。
この『特異点』である少年の誕生日に、一体何が起こるというのか……?
期待と、未知への恐怖(ほんの少しだけ)と、そして圧倒的な困惑が、彼らの胸中を駆け巡った。
「わーい! おきゃくさんも、僕のおたんじょうび、お祝いしてくれるのー? うれしいなぁ!」
何も知らない僕は、ただ無邪気に喜んでいる。
その笑顔は、まさしく天使のようだったが、今のアルフレッドとレオナルドにとっては、何かとんでもないものを見せつけられる前触れのようにも感じられたのだった。
こうして、王都からの見学者たちは、アスターテ領の『祝福』の片鱗に触れ、その規格外っぷりに翻弄されつつも、図らずも『天使の誕生祭』への招待を受けることになった。
アルフレッドとレオナルドは、どこか放心したような、それでいて目の奥に異様なまでの熱意を宿した状態で、クライネル家の夕食の席に着いていた。
いわゆる『賢者タイム』というやつかもしれない。
そして、彼らを待ち受けていたのは、本日何度目かも分からない、圧倒的な味覚の暴力だった。
食卓に並ぶのは、一見すると素朴な家庭料理。だが、一口食べれば分かる。素材の持つ旨味が極限まで引き出され、優しいながらも複雑で奥深い味わいが口の中に広がるのだ。
肉は驚くほど柔らかく、野菜は信じられないくらい甘い。パンですら、噛みしめるほどに豊かな風味が溢れ出してくる。
(もはや……何が起きても驚くものか……と思っていたが……甘かった……!)
アルフレッドは、出されたシチューを口に運びながら、内心で何度目かの敗北宣言をしていた。
レオナルドもまた、普段の尊大な態度はどこへやら、ただ黙々と、しかしどこか恍惚とした表情で料理を味わっている。
食事が一段落した頃、アルフレッドは震える声で、当主ライオネルに問いかけた。
もはや研究者としての体面も、貴族としてのプライドも、このアスターテ領ではあまり意味をなさないことを悟り始めていた。
「クライネル子爵……この、信じがたいほどの豊穣……そして、先ほど庭で頂いた、あの『クッキー』……これは、一体……何か、特別な『秘術』か、あるいは失われた古代の魔法でもお使いなのでしょうか……?」
その問いは、彼の魂からの叫びにも似ていた。
ライオネルは、穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと首を横に振った。
「はて……『秘術』などと、大げさなものではございませんよ、シュトラウス殿。アスターテの土地が豊かであるのは、古来よりの神々の恵みと、領民たちのたゆまぬ努力の賜物でございましょう。それに、妻や我が家の料理人の腕が良いのも、理由の一つやもしれませんな」
そして、ちらりとルークの方を見ながら、付け加えた。
「ああ、そういえば、うちの末っ子のルークは、時折不思議なほど美味しいものを作ることがございますが……まあ、子供の気まぐれのようなものですからな。ねえ、ルーク?」
「えへへー、僕、おかし作るのすきだよぉ。みんながよろこんでくれると、うれしいんだぁ」
僕がにこにこと答えると、アルフレッドとレオナルドは「「(それだーーー!!!)」」と内心で絶叫したが、もちろん口には出せない。
この親子、とぼけているのか、本気でそう思っているのか……どちらにしても、尋常ではない。
これ以上、直接的な情報を引き出すのは不可能だと判断したのだろう。
アルフレッドは、ややあってから、居住まいを正して懇願した。
「……つきましては、クライネル子爵。我々、このアスターテ領の『奇跡』について、もう少しだけ、滞在し調査をさせて頂くことは叶いませぬでしょうか? このままでは、アカデミーに戻っても報告のしようが……」
その言葉には、切実な響きが込められていた。
ライオネルは、内心(よし、食いついたな)とほくそ笑みつつも、表面上は驚いたような顔を作った。
「ほう、それはそれはご熱心なことで。アスターテのような辺境に、それほど長くご滞在いただくのも恐縮ですが……」
少し間を置いて、ライオネルはとんでもない爆弾を投下した。
「実は、数日後になりますが、この末っ子ルークの、八歳の誕生日でしてな。ささやかではございますが、家族で祝宴を開く予定なのです。もし、お二方のご都合がよろしければ、お客様としてご一緒にいかがですかな? きっと、良い思い出になりましょうぞ」
「「は……はぁ……!? た、誕生日……で、ございますか……!?」」
アルフレッドとレオナルドは、完全に不意を突かれた。
この状況で、断れるわけがない。いや、むしろ、願ってもないチャンスかもしれない。
この『特異点』である少年の誕生日に、一体何が起こるというのか……?
期待と、未知への恐怖(ほんの少しだけ)と、そして圧倒的な困惑が、彼らの胸中を駆け巡った。
「わーい! おきゃくさんも、僕のおたんじょうび、お祝いしてくれるのー? うれしいなぁ!」
何も知らない僕は、ただ無邪気に喜んでいる。
その笑顔は、まさしく天使のようだったが、今のアルフレッドとレオナルドにとっては、何かとんでもないものを見せつけられる前触れのようにも感じられたのだった。
こうして、王都からの見学者たちは、アスターテ領の『祝福』の片鱗に触れ、その規格外っぷりに翻弄されつつも、図らずも『天使の誕生祭』への招待を受けることになった。
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三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
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