異世界でも働きたくないので、辺境貴族の末っ子としてもふもふと昼寝します

おまる

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第3部:ゆるふわスローライフは守られるべき! ~ちょっぴり騒がしい、お客様と秘密のお手紙~

第55話:おやすみ前の『秘密の贈り物』…モルがくれたのは『伝説のかけら』!? 天使の誕生日は奇跡で終わる!

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 夢のような(主に味覚的に)誕生パーティーも、そろそろお開きの時間。
 美味しい料理とお菓子をたんまりと食べ、家族みんなからたくさんのお祝いの言葉をもらって、僕は心も身体もぽかぽかと温かい幸福感に満たされていた。
 もちろん、途中で何度か強烈な眠気に襲われたけど、そこは『ゆるふわスローライフ』のプロ(自称)として、うまく乗り切ったつもりだ。

 食堂から自室へ戻る際には、父様と母様から「おやすみ、私の愛しい天使ちゃん」と、それはもう熱烈なキスとハグの嵐。アラン兄様とベルトラン兄様からは頭をわしゃわしゃと撫でられ、セシル姉様からは優しい子守唄を少しだけ歌ってもらった。
 クライネル家の愛情表現は、いつだって全力投球なのである。

(ふぅ、今日も一日、愛されまくったなぁ。誕生日って、ちょっと疲れるけど、やっぱり嬉しいものだね)

 マリーに手伝ってもらって寝間着に着替え、ふかふかのベッドにもぐりこむ。
 部屋には、僕とモルだけ。
 今日のパーティーでも、モルは僕の足元でおとなしく(そしてちゃっかり美味しいものをたくさんお裾分けしてもらって)過ごしていた。本当に賢くて可愛い僕の相棒だ。

「モル、今日はありがとうね。一緒にいてくれて、とっても楽しかったよぉ」

 僕がそう言ってモルの柔らかい毛並みを撫でると、モルは「きゅるる~ん」と甘えた声を出し、僕の手に頬をすり寄せてきた。その仕草一つ一つが、たまらなく愛おしい。

 しばらく二人でまったりと過ごしていると、モルが突然そわそわとした様子を見せ始めた。
 そして、ベッドからぴょんと飛び降りると、部屋の隅にある自分の寝床(僕が魔法でふかふかにした特製ベッド)の方へ行き、何かをくんくんと嗅ぎ始めた。

「どうしたの、モル? 何かあったの?」

 僕が不思議そうに見つめていると、モルは小さな前足で器用に何かを掘り出すような仕草をし、そして、何か小さなものを口にくわえて、僕の元へと戻ってきた。
 そして、まるで宝物でも見せるかのように、そっと僕の枕元にそれを置いた。

「これ……なあに?」

 それは、手のひらに収まるくらいの、古びた石片のようなものだった。
 色はくすんだ灰色で、表面には何かの模様が薄っすらと刻まれているように見える。
 どこかで見たことがあるような、でも、はっきりとは思い出せない、不思議な形。
 まるで、何か大きな石版か、あるいは古い建物の紋章の一部が欠けたような……そんな印象を受ける。
 ひんやりとした石の感触が、指先に伝わってきた。

 僕がそれをそっと手に取った、その瞬間。
 石片が、ほんの一瞬だけ、淡い、優しい光を放ったような気がした。
 そして、モルが僕の顔を見上げ、まるで「これ、ルークにあげる!」とでも言うように、誇らしげに「きゅいっ!」と一声鳴いた。

(わぁ……! モルからの、誕生日プレゼントだ……!)

 それが何なのか、今の僕には全く分からない。
 でも、モルが僕のために一生懸命見つけてきてくれた、大切な宝物だということはすぐに理解できた。
 胸の奥が、じわっと温かくなるのを感じる。

「モル……! ありがとう……! とっても嬉しいよぉ! 大切にするね!」

 僕はモルをぎゅっと抱きしめた。モルも嬉しそうに僕の胸に顔をうずめてくる。
 この石片が、いつか僕やモルの運命に関わる『伝説のかけら』かもしれないなんて、今の僕は知る由もない。
 ただ、大好きな相棒からもらった初めてのプレゼントを、僕は宝箱にそっと仕舞った。

 その頃、クライネル邸の客室では。
 アルフレッドとレオナルドが、それぞれのベッドの上で、今日一日の出来事を反芻していた。

「……もう、何が何だか……。あの子供の笑顔一つで花が咲き乱れ、料理の味が神の領域に達する……。そして、あの銀色の生物……あれは、やはりただの動物ではない……」

 アルフレッドは、天井を見つめながら呟く。
 彼の頭の中は、今日得られた(しかし全く整理できていない)膨大な情報と、尽きない疑問でいっぱいだった。

「……帰りたくないな、王都に。いや、正確には、ここの飯が食えなくなるのが惜しい……。あの子供、毎日あんなものを食べているのか? 羨ましすぎるだろう……」

 レオナルドは、珍しく本音を漏らしていた。
 彼の価値観は、このアスターテ領で大きく揺さぶられている。もはや、以前のような退屈な日常には戻れないかもしれない。

(明日、もう一度、あのクライネル子爵に話を伺わねばなるまい。そして、あわよくば、あの『奇跡の料理』をもう一度……いや、研究のためだ、あくまで研究のために!)

 アルフレッドは、そう心に誓う。

(あの子供……ルークと言ったか。彼が、この世界の『理』そのものを、無自覚に書き換えているのかもしれないな。面白い……実に面白い……)

 レオナルドは、いつの間にか口元に笑みを浮かべていた。
 彼らの中で、何かが確実に変わり始めていた。

 そして、全ての喧騒が過ぎ去った主役の部屋では。
 僕、ルーク・クライネルは、腕の中にモルを抱きしめ、今日一日のたくさんの『ありがとう』と『大好き』を胸に、幸せな誕生日の眠りへと深く沈んでいった。
 天使の誕生日は、たくさんの笑顔と、ほんの少しの不思議な奇跡と共に、穏やかに幕を閉じたのだった。
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