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第4部:ゆるふわスローライフに最大の危機!? ~公爵夫人の『天使様』お持ち帰り計画と、王都からの刺客(美食家ぞろい)~
第82話:モフモフ外交発動!? モルとクロ、ついに『女帝』の懐に飛び込む(物理)! 鉄の心もとろけるか!?
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イザベラ公爵夫人が、僕の『味見マジック』の瞬間を目撃してから数日。
彼女は、以前にも増して僕の行動に注目しているようだった。
とはいえ、僕の日常は特に変わらない。お昼寝して、おやつを食べて、モルとクロと庭で遊ぶ。それが僕の『ゆるふわ道』だからだ。
ある日の午後、僕はいつものように、庭の大きなカシワの木の下で、モルとクロと一緒にボール遊びをしていた。
僕が「えいっ」と投げた小さな毛糸のボールを、モルが俊敏に追いかけ、クロが少しだけ遅れて、でも一生懸命にそれを追いかける。二匹とも、本当に可愛い。
そんな僕たちのところに、ふらりとイザベラ公爵夫人がやってきた。
供も連れず、たった一人で。
彼女は、少し離れた場所に置かれたベンチに静かに腰を下ろし、僕たちの遊ぶ様子を、ただ黙って眺めている。その表情は相変わらず読み取りにくいけど、以前のような刺々しさは少しだけ薄れているような気がした。
「おねえさんも、いっしょにあそぶー?」
僕は、ボールを追いかけるのに少し飽きてきたので、イザベラに無邪気に声をかけてみた。
彼女は、僕の言葉に少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの冷静な表情に戻り、静かに首を横に振った。
「いいえ、わたくしはここで見ているだけで結構ですわ、ルーク様」
(そっかぁ、残念だなぁ。おねえさんもモフモフしたら、きっと楽しいのに)
僕は少しだけ残念に思ったけど、無理強いはしない。
再びモルとクロとの遊びに戻ろうとした、その時だった。
今まで僕の足元でおとなしくしていたクロが、突然、イザベラの方へ向かってとてとてと歩き出したのだ。
そして、彼女の足元まで行くと、その豪華なドレスの裾をくんくんと嗅ぎ始め、しまいには、小さな前足でちょいちょいとイザベラの靴を突つき始めた。まるで、「遊んでよ!」とでも言っているようだ。
「こ、こら、クロ! おねえさんに、めいわくだめだよぉ!」
僕は慌ててクロを止めようとしたが、イザベラはそれを手で制した。
「構いませんわ、ルーク様。この子、わたくしに何か用があるのかしら?」
イザベラの言葉に、クロはまるでそれを理解したかのように、彼女の顔を見上げ、「くぅん」と甘えたような声を出す。
そして次の瞬間、あろうことか、クロはイザベラの膝の上へと、ぴょんと飛び乗ってしまったのだ!
これには、さすがのイザベラも驚いたようで、その紫水晶の瞳が大きく見開かれた。
「まあ……! なんて大胆な子なのでしょう……!」
しかし、イザベラはクロを邪険にすることなく、ただ困ったような、それでいてどこか面白そうな表情で、自分の膝の上で丸くなろうとするクロを見下ろしている。
クロは、イザベラのドレスの温かくて柔らかい感触が気に入ったのか、満足そうに目を細め、やがてすーすーと小さな寝息を立て始めた。
まさかの『女帝の膝枕』である。
さらに、それを見ていたモルも、負けじと(?)イザベラの元へとやってきた。
モルは、クロのように大胆に膝に乗ることはしなかったが、イザベラが座るベンチの隣にちょこんと座り、その大きな黒い瞳で、じっとイザベラの顔を見つめている。
まるで、「この人は、本当にルークの敵じゃないのかな?」と値踏みしているかのようだ。
そして、しばらくすると、モルもおもむろに立ち上がり、イザベラの伸ばされた手(彼女自身、無意識に手を差し伸べていた)に、自分の小さな鼻先をすり、と擦り寄せたのだ。
イザベラは、最初こそ驚きと戸惑いの表情を浮かべていたが、膝の上で無防備に眠るクロの温かさと、足元で信頼を示すように寄り添うモルの柔らかい毛並みに触れているうちに、その鉄仮面のような表情が、ほんの僅かではあったが、確かに和らいでいくのが分かった。
彼女は、思わず、そっと手を伸ばし、モルの背中を優しく撫で始めた。その手つきは、ぎこちないながらも、どこか慈しむような温かさを帯びている。
(……なんて……温かくて……柔らかいのかしら……。こんな感触、いつ以来かしら……。この子たちは、わたくしの地位も、権力も、何も気にせず、ただ純粋に……)
イザベラの胸の奥に、今まで感じたことのない、穏やかで、そしてどこか切ないような感情が込み上げてくる。
それは、長年彼女を縛り付けていた孤独という名の鎧が、ほんの少しだけ、ひび割れた瞬間だったのかもしれない。
その一部始終を、物陰から固唾を飲んで見守っていたゲルハルトや侍女たち、そしてクライネル家一同(もちろん、アルフレッドさんとレオナルドさんも含む)は、信じられないものを見たかのように、ただただ息をのんでいた。
「あ、あの公爵夫人が……動物に、あのようなお顔を……!」
「も、もしかして、モルちゃんとクロちゃんの『もふもふ外交』が、功を奏したのでは……!?」
誰かが、そんな囁きを漏らす。
『鉄の女帝』の心を、ほんの少しだけ溶かしたのは、大国の軍事力でも、巧妙な外交術でもなく、ただただ純粋で無垢な、『もふもふ』たちの温もりだったのかもしれない。
この小さな出来事が、イザベラの心にどんな変化をもたらすのか。
そして、彼女の「アスターテ視察」の目的は、一体どこへ向かうのだろうか。
物語は、静かに、しかし確実に、新たな局面へと動き出そうとしていた。
彼女は、以前にも増して僕の行動に注目しているようだった。
とはいえ、僕の日常は特に変わらない。お昼寝して、おやつを食べて、モルとクロと庭で遊ぶ。それが僕の『ゆるふわ道』だからだ。
ある日の午後、僕はいつものように、庭の大きなカシワの木の下で、モルとクロと一緒にボール遊びをしていた。
僕が「えいっ」と投げた小さな毛糸のボールを、モルが俊敏に追いかけ、クロが少しだけ遅れて、でも一生懸命にそれを追いかける。二匹とも、本当に可愛い。
そんな僕たちのところに、ふらりとイザベラ公爵夫人がやってきた。
供も連れず、たった一人で。
彼女は、少し離れた場所に置かれたベンチに静かに腰を下ろし、僕たちの遊ぶ様子を、ただ黙って眺めている。その表情は相変わらず読み取りにくいけど、以前のような刺々しさは少しだけ薄れているような気がした。
「おねえさんも、いっしょにあそぶー?」
僕は、ボールを追いかけるのに少し飽きてきたので、イザベラに無邪気に声をかけてみた。
彼女は、僕の言葉に少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの冷静な表情に戻り、静かに首を横に振った。
「いいえ、わたくしはここで見ているだけで結構ですわ、ルーク様」
(そっかぁ、残念だなぁ。おねえさんもモフモフしたら、きっと楽しいのに)
僕は少しだけ残念に思ったけど、無理強いはしない。
再びモルとクロとの遊びに戻ろうとした、その時だった。
今まで僕の足元でおとなしくしていたクロが、突然、イザベラの方へ向かってとてとてと歩き出したのだ。
そして、彼女の足元まで行くと、その豪華なドレスの裾をくんくんと嗅ぎ始め、しまいには、小さな前足でちょいちょいとイザベラの靴を突つき始めた。まるで、「遊んでよ!」とでも言っているようだ。
「こ、こら、クロ! おねえさんに、めいわくだめだよぉ!」
僕は慌ててクロを止めようとしたが、イザベラはそれを手で制した。
「構いませんわ、ルーク様。この子、わたくしに何か用があるのかしら?」
イザベラの言葉に、クロはまるでそれを理解したかのように、彼女の顔を見上げ、「くぅん」と甘えたような声を出す。
そして次の瞬間、あろうことか、クロはイザベラの膝の上へと、ぴょんと飛び乗ってしまったのだ!
これには、さすがのイザベラも驚いたようで、その紫水晶の瞳が大きく見開かれた。
「まあ……! なんて大胆な子なのでしょう……!」
しかし、イザベラはクロを邪険にすることなく、ただ困ったような、それでいてどこか面白そうな表情で、自分の膝の上で丸くなろうとするクロを見下ろしている。
クロは、イザベラのドレスの温かくて柔らかい感触が気に入ったのか、満足そうに目を細め、やがてすーすーと小さな寝息を立て始めた。
まさかの『女帝の膝枕』である。
さらに、それを見ていたモルも、負けじと(?)イザベラの元へとやってきた。
モルは、クロのように大胆に膝に乗ることはしなかったが、イザベラが座るベンチの隣にちょこんと座り、その大きな黒い瞳で、じっとイザベラの顔を見つめている。
まるで、「この人は、本当にルークの敵じゃないのかな?」と値踏みしているかのようだ。
そして、しばらくすると、モルもおもむろに立ち上がり、イザベラの伸ばされた手(彼女自身、無意識に手を差し伸べていた)に、自分の小さな鼻先をすり、と擦り寄せたのだ。
イザベラは、最初こそ驚きと戸惑いの表情を浮かべていたが、膝の上で無防備に眠るクロの温かさと、足元で信頼を示すように寄り添うモルの柔らかい毛並みに触れているうちに、その鉄仮面のような表情が、ほんの僅かではあったが、確かに和らいでいくのが分かった。
彼女は、思わず、そっと手を伸ばし、モルの背中を優しく撫で始めた。その手つきは、ぎこちないながらも、どこか慈しむような温かさを帯びている。
(……なんて……温かくて……柔らかいのかしら……。こんな感触、いつ以来かしら……。この子たちは、わたくしの地位も、権力も、何も気にせず、ただ純粋に……)
イザベラの胸の奥に、今まで感じたことのない、穏やかで、そしてどこか切ないような感情が込み上げてくる。
それは、長年彼女を縛り付けていた孤独という名の鎧が、ほんの少しだけ、ひび割れた瞬間だったのかもしれない。
その一部始終を、物陰から固唾を飲んで見守っていたゲルハルトや侍女たち、そしてクライネル家一同(もちろん、アルフレッドさんとレオナルドさんも含む)は、信じられないものを見たかのように、ただただ息をのんでいた。
「あ、あの公爵夫人が……動物に、あのようなお顔を……!」
「も、もしかして、モルちゃんとクロちゃんの『もふもふ外交』が、功を奏したのでは……!?」
誰かが、そんな囁きを漏らす。
『鉄の女帝』の心を、ほんの少しだけ溶かしたのは、大国の軍事力でも、巧妙な外交術でもなく、ただただ純粋で無垢な、『もふもふ』たちの温もりだったのかもしれない。
この小さな出来事が、イザベラの心にどんな変化をもたらすのか。
そして、彼女の「アスターテ視察」の目的は、一体どこへ向かうのだろうか。
物語は、静かに、しかし確実に、新たな局面へと動き出そうとしていた。
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