異世界でも働きたくないので、辺境貴族の末っ子としてもふもふと昼寝します

おまる

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第4部:ゆるふわスローライフに最大の危機!? ~公爵夫人の『天使様』お持ち帰り計画と、王都からの刺客(美食家ぞろい)~

第85話:クライネル家、絶対絶命の危機!? 『家族会議』再び! 打倒『女帝』の秘策は…やっぱり『アレ』しかない!?

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 イザベラ公爵夫人からの、実質的な『ルーク王都連行通告』。
 その重すぎる言葉は、瞬く間にクライネル家全体に暗い影を落とした。
 父ライオネルと母セレスティーナの苦悩に満ちた表情を見たアラン兄様は、すぐさま事態を察し、緊急の家族会議を招集した。
 もちろん、この屋敷に滞在中のアルフレッドさんとレオナルドさんも、他人事ではないと(主に自分たちの快適な生活が脅かされるという意味で)オブザーバーとして会議に加わっている。

 応接間に集まった面々の表情は、一様に硬い。
 僕はといえば、何やらみんなが難しい顔をして集まっているなぁ、くらいにしか思っていなかったが、さすがにいつもと違うピリピリとした空気を感じ取り、モルとクロと一緒に部屋の隅でおとなしくしていた。

「……というわけだ。イザベラ公爵夫人は、明日、ルークを王都へ『招待』するおつもりらしい。もちろん、事実上の命令と受け取るべきだろう」

 アラン兄様が、重々しい口調で状況を説明する。
 その言葉に、ベルトラン兄様が憤然と声を上げた。

「なっ……! ルークを王都なんかにやれるか! あんな小さな弟を、家族から引き離すなんて、いくら公爵夫人でも横暴すぎる! 俺が……俺が女帝と刺し違えてでも、ルークは守ってみせるぞ!」

「ベルトラン、落ち着きなさい。力でどうにかなる相手ではないわ」

 セシル姉様が、青ざめた顔でベルトラン兄様を諌める。しかし、その声も震えていた。

「でも……ルーク君が、私たちと離れ離れになってしまうなんて……そんなの、絶対にいやですわ……! あんなに小さくて、甘えん坊で……王都の冷たい生活に耐えられるはずがありません……!」

 セシル姉様の目には、みるみるうちに涙が浮かんでくる。
 アルフレッドさんも、難しい顔で腕を組み、何かを深く考えているようだった。

「……イザベラ公爵夫人は、一度決めたことは決して覆さない方だ。彼女の言葉は、それだけの重みを持つ。正面から反対すれば、クライネル家そのものが、王国の敵と見なされかねない危険性すらある……」

 その言葉は、この場にいる全員に、事態の深刻さを改めて認識させた。
 レオナルドさんですら、いつもの軽口を叩くことなく、珍しく眉間に皺を寄せている。

「……まずいな。非常にまずい。あの女帝が本気なら、俺の実家(ヴァイス侯爵家)ですら、口出しはできんかもしれん。そうなれば、このアスターテ領での俺の『美食パラダイス生活』も、風前の灯火というわけか……それは断じて避けねばならん……!」

(あれ……? レオナルドお兄さんの心配って、そっちの方向なんだ……)

 僕の内心のツッコミはさておき、部屋の空気はますます重くなっていく。
 このままでは、僕の『ゆるふわスローライフ』が、本当に終わってしまうかもしれない……。

 そんな絶望的な雰囲気の中、凛とした、しかしどこか震える声で、母セレスティーナが口を開いた。

「皆様、お聞きください。わたくしたちは、決してルークを諦めません」

 その言葉には、母としての強い覚悟が込められていた。

「イザベラ公爵夫人は、ルークの『力』そのものに注目しておられるのかもしれません。しかし、わたくしは信じております。あの子のあの素晴らしい『祝福』は、あの子自身が心から『幸せ』でいて、このアスターテの地で、私たち家族と共に、穏やかに、そして自由に暮らしているからこそ、あんなにも豊かに、そして優しく溢れ出るものなのだと。それを無理やり引き離してしまっては、あの子の笑顔も、そしてその力の源泉そのものも、枯渇してしまうに違いありませんわ」

 母様の言葉に、父様が力強く頷く。

「うむ、セレスティーナの言う通りだ。ルークの幸せこそが、我々クライネル家にとっての最優先事項。そして、その幸せを守ることこそが、このアスターテ領の豊かさを守ることにも繋がるのだ。そのためなら、どんな相手であろうと、我々は戦う。……もちろん、我々クライネル家らしいやり方で、な!」

 父様の目に、決意の光が宿る。
 そして、母様が、ふっといつもの優しい微笑みを浮かべて言った。

「ええ、そうですわね、あなた。私たちには、とっておきの『秘策』……いえ、『究極の切り札』があるのではありませんか?」

 その言葉に、アラン兄様も、ベルトラン兄様も、セシル姉様も、そしてなぜかアルフレッドさんとレオナルドさんまでもが、ハッとしたように顔を上げた。
 まさか……!

「そうですわ。イザベラ公爵夫人には、アスターテの『真のおもてなし』の、その真髄を味わっていただくのです。ルークの、あの無垢なまでの『愛情』と、この土地が生み出す『奇跡の美食』で、公爵夫人のお心を、完膚なきまでに……そう、それこそ『骨の髄まで』癒やし、そして懐柔してしまうのです!」

 母様の口から飛び出した、最終兵器『骨抜き大作戦・ファイナルステージ』。
 そのあまりにもクライネル家らしい、そして一見無謀とも思える作戦内容に、部屋の空気は一瞬だけ静まり返った。
 しかし、次の瞬間、全員の顔に、なぜか不思議な納得と、そしてほんの少しの希望の色が浮かんでいた。

「……正気か……!? いや、しかし……これまでのあの子供の『奇跡』を思えば……あるいは、あるいは本当に……!」

 アルフレッドさんは、ぶつぶつと呟きながらも、その瞳には諦めではない、新たな光が灯っている。

「つまり……また、あの『神の食べ物』が、たらふく食えるということか!? よし、それならば俺も協力しようではないか!(主に、全力で食べる係として、イザベラ公爵夫人の分まで平らげてやる!)」

 レオナルドさんは、完全に復活し、もはや戦友のような顔でクライネル家を見つめている。
 こうして、クライネル家の、そしてルークの運命を賭けた、最後の(そして最高の)『おもてなし』の準備が、静かに、しかし熱く始まろうとしていた。
 僕だけは、そんな大人たちの真剣な顔を不思議そうに眺めながら、「なんだか、明日はもっと美味しいものが食べられそうだなぁ」なんて、のんきなことを考えていたのだった。
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