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017 戦闘準備と吟遊詩人
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カレブ・アルシャイン邸の晩餐会当日。リギアは全身鏡の前に立ち戦闘準備をしていた。
戦闘準備というのは淑女の身支度のことである。着付けに化粧に持ち物小物の準備と、とにかく忙しい。
ほんのひとたび出かけるにしても、女の身支度というのはある意味戦いへのプレリュードなのだ。
年頃になったら絶対必要だと母ミルファに持たされていたビスチェとガーターベルトが一体となった補正下着を身に着け、ウエストの紐を腰の後ろ側でぎゅっと引き締める。一人でも身に着けられるコルセットのようなものだ。
未発達でまだぺたんこな胸元に布を詰めてなんとかそれなりに膨らませた。ここだけはボンキュッボンな母にも雄っぱいの大きい父にも似なくて悔しい。
ストッキングを留めて、ショーツを身に着けてからドロワーズを穿き、その姿でクローゼットから一着のイブニングドレスを取り出した。
鮮やかなオレンジ色のラウンドネックのドレスで、肩口の部分が同じ素材の布で作った花で飾られた、リギアくらいの十代の女の子が着るのにちょうどいい可愛らしく上品なドレスだった。
これを贈ってくれたのは婚約者ラドゥ。彼のオレンジブロンドの髪を彷彿とさせる鮮やかなオレンジ色がなんともくすぐったい。
婚約者に自分の色のものを贈るのが貴族の習わしだと聞いていたが、いざ贈られる当事者になってみると、なんとも気恥ずかしくもほんわかと胸が温かくなってくる。
――おにい……やっぱ私おにいのこと好きだなあ。おにいが私のことお嫁さんに貰ってくれるって言ってくれて、本当に嬉しかった。これ着て見せたらどんな顔するかな? 可愛いって言ってくれるかな。
ドレスを抱きしめてラドゥを思い浮かべながらぼーっとすること数秒、はっと我に返り、急いでもそもそとドレスを下から被る。すとん、と着てから背中のボタンを留めていく。騎士科で身体を動かすことを三年間みっちりやっていたおかげで、身体は柔軟なのでこうして背中にも手が届くのがありがたい。
貴族令嬢とは違って着付けを手伝ってくれる侍女などいないため、リギアはそれらを全部自分で行わなければならない。
それは過去にステージ歌手だった母ミルファに着付けや化粧などをしっかり覚えさせられたので、こういうときに非常に役に立っていた。
ドレスをしっかり着込んだことを、鏡の前でくるりと回転して確認し、「ヨシッ」と鏡の自分にサムズアップしてから、今度はドレッサー前の椅子に座って髪型を整え化粧を施していく。
もともと短い髪はさっととかして後ろに回して耳にかけ、少し長い襟足を一つにまとめてくるりとひねって夜会巻きもどきをつくり、 ドレスと同じデザインの花の髪飾りを髪に刺した。
そして化粧、これもステージ歌手だったミルファにやり方をしっかり教わり覚えたので、あまり濃くならない自然で健康的な感じに顔面を作っていった。
最後にアクセサリーケースからネックレスとイヤリングを取り出した。これは父カレブに贈られたものだ。大粒の真珠をキラキラ光る小さなダイヤで囲んだ美しい銀鎖のネックレス、色合いはカレブとリギアの髪色を表しているというのは邪推だろうか。
ネックレスを身に着け、同じデザインのイヤリングで耳元を飾る。真珠の色とお揃いの白いパンプスを履いて今一度全身鏡の前に立った。
「うん。ばっちり可愛かろう」
化粧っ気もない騎士科の女学生リギアとは全然違う淑女がそこにいた。両親から顔の良いところばかり受け継いだのだなと、我ながら感心してしまう。喋らなければ普通に淑やかなお嬢さんだ。喋らなければの話だが。
外套と小物が入ったクラッチを用意して、ドレスが皺にならないように立ったまま一息ついていると、寮母がリギアの部屋に来客を告げに来た。応対したリギアを見た寮母は一瞬誰かわからなかったと笑っていたが。
なんだ出かけるの、一瞬誰かわからなかった、めっちゃいいじゃん、楽しんできて、などと寮の女学生たちにひやかされながら、ドレスが着崩れないように、いつもダッシュで行くところをしずしずとエントランスに向かった。
そこにリギアを迎えにきてくれたラドゥがいた。女子寮は男子禁制だが、エントランスで待つくらいは男性にも許されている。
今日のラドゥは正装をしていて、燕尾服に髪は整髪料で後ろに流してまとめられているのが非常に美しい。よく見ればエントランスを通りがかる女学生からもキャーキャー言われている。秘かにファンがいるという噂も嘘ではないようだ。
騎士団に入団したからには城や要人の警護などに駆り出される騎士という職業柄、夜会などにも警備として出るのだろうが、淑女たちに言い寄られるラドゥを想像して何だかもやっとしたりもした。
ラドゥはリギアを見て一瞬目を大きく丸くしてから、若干頬を紅潮させてふわりとした笑顔で迎えてくれた。
「……リギア、見違えた。そのドレス、すごく良く似合ってるよ。それを選んで正解だ」
「ごきげんようラドゥ様。ありがとうございます。貴方も素敵ですわあ」
「ありがとう。何、今日はお嬢様ごっこかな。こちらこそ、ご機嫌麗しゅう、リギア嬢」
お貴族ごっこな挨拶をしてふたりで噴き出した。さすがに慣れないし恥ずかしい。
「せっかくだからお嬢様モードでいこうかと思ったけど、慣れないことはするもんじゃないね、おにい」
「口調はいつものリギアだね。ギャップすごいけど。……じゃあ学園通りのほうにうちの馬車を留めてあるから、そこまで一緒に行こうか。お手をどうぞ」
「ありがとうおにい」
ラドゥの差し出した手にレースの手袋をはめた手を乗せて、彼にエスコートされながら外に出た。
ヒールの高いパンプスは履き慣れていないため、ラドゥのエスコートは非常にありがたい。外に出たら彼の腕に自分の腕をしっかりからめて転ばないように一歩一歩注意して歩く。さながら地雷原を歩く一兵卒のようだ。
苦笑したラドゥに「もっと普通に歩いていいよ、支えてるから」と言われて、リギアは我に返って恥ずかしくなる。
確かにラドゥの腕はしっかりがっちりしていて、子供のころからリギアも同じように鍛えたがそこは男女の差が出てリギアにはここまでの筋肉量はない。そういう身体付の違いをこうして改めて見ると、ラドゥの所謂男性的部分を感じてドキドキした。
「そのネックレスは副団長から?」
「あ、うん。靴も。おにいはドレスでパパはアクセサリーと靴だから、被らなくて良かった」
「……実は打ち合わせたんだ。ちゃんとした晩餐会ならドレスが必要ですねって話したら副団長も俺が贈るって言い出してさ。ドレスを贈るのは婚約者の僕の特権ですって主張したら、じゃあ俺はアクセサリーを贈る!って息まいてたから、じゃあちぐはぐにならないようなのをお互いに選びましょうってことになって」
「あはは、何を張り合ってんの二人して」
「でもアクセサリーも本当は僕が選んであげたかったのになあ。今日のドレス、きっとエメラルドも映えただろうに」
エメラルドはラドゥの瞳と同じ色の宝石だ。確かにオレンジ色のドレスにエメラルドグリーンはよく映えそうだし、何より大好きなラドゥの色を全身に纏うなんてすごく素敵だと思う。
しかし、今日はこの真珠とダイヤモンドのネックレスに白いパンプスもまた、カレブの髪色なのとともに、何色にも染まっていないまだ成人前の女性であるリギアが身に着けるのにちょうどいい気もする。
若干残念がっているラドゥを慰めるように腕を撫で繰り回した。
学園通りにさしかかり、バルファークの紋が装飾された馬車が止まっているのが向こうに見えた。あれがラドゥが用意した馬車だろう。
馬車に向かって焦らずゆっくり歩いていくと、ネックの長いリュートのような楽器を持った吟遊詩人らしき男がポロリポロリと弦をはじきながら二人に近づいてきた。
「やあそこの麗しいカップルさん。一曲いかがですか? ねえミスター、そちらのまるで天空の城塞都市セリューインから舞い降りた銀の月の姫君のようなお嬢さんに曲を贈らせていただきたい」
「いや、すまない。時間がないから……」
「そう言わずに。インスピレーションを感じたら即興で歌ってしまうものですから。ララララ~♪銀の月の光を~かきあ~つめた~♪麗しの~女神よ~♪遥かセリューインの~双子の片割れ~切なきさだめの~め~が~み~よ~~~~♪」
じゃらららららーん!
リュートを奏でてこちらに許可もなくいきなり歌い出した吟遊詩人に二人でドン引きなラドゥとリギアであった。
結構良い声が響き渡ったため、人通りの多い学園通りで人だかりができて即興演奏会が始まってしまった。開いた楽器のケースに次々にチップが投げ込まれている。
人込みから抜け出してそっと離れた。あれだけ人を集めたのだから二人くらい抜け出しても分からなそうである。
「……行こう、リギア。副団長が首を長くして待ってるよ」
「う、うん。そうだね。面白い歌だったけど」
「吟遊詩人ってこっちが恥ずかしくなるよな……」
「バルファークにもいたね。ママの知り合いだったけど」
「ミルファ様は歌手時代にそういう方と仕事してたみたいだしね」
――でも面白い即興の歌詞だったなあ。あとで天空の城塞都市せりゅー? なんとかについて調べよう。
二人が茫然としていると、向こうで御者が二人に「坊ちゃま、お嬢様、お早く」と向こうで促しているのが見えたので、二人は少し足早に馬車まで歩いて行った。
戦闘準備というのは淑女の身支度のことである。着付けに化粧に持ち物小物の準備と、とにかく忙しい。
ほんのひとたび出かけるにしても、女の身支度というのはある意味戦いへのプレリュードなのだ。
年頃になったら絶対必要だと母ミルファに持たされていたビスチェとガーターベルトが一体となった補正下着を身に着け、ウエストの紐を腰の後ろ側でぎゅっと引き締める。一人でも身に着けられるコルセットのようなものだ。
未発達でまだぺたんこな胸元に布を詰めてなんとかそれなりに膨らませた。ここだけはボンキュッボンな母にも雄っぱいの大きい父にも似なくて悔しい。
ストッキングを留めて、ショーツを身に着けてからドロワーズを穿き、その姿でクローゼットから一着のイブニングドレスを取り出した。
鮮やかなオレンジ色のラウンドネックのドレスで、肩口の部分が同じ素材の布で作った花で飾られた、リギアくらいの十代の女の子が着るのにちょうどいい可愛らしく上品なドレスだった。
これを贈ってくれたのは婚約者ラドゥ。彼のオレンジブロンドの髪を彷彿とさせる鮮やかなオレンジ色がなんともくすぐったい。
婚約者に自分の色のものを贈るのが貴族の習わしだと聞いていたが、いざ贈られる当事者になってみると、なんとも気恥ずかしくもほんわかと胸が温かくなってくる。
――おにい……やっぱ私おにいのこと好きだなあ。おにいが私のことお嫁さんに貰ってくれるって言ってくれて、本当に嬉しかった。これ着て見せたらどんな顔するかな? 可愛いって言ってくれるかな。
ドレスを抱きしめてラドゥを思い浮かべながらぼーっとすること数秒、はっと我に返り、急いでもそもそとドレスを下から被る。すとん、と着てから背中のボタンを留めていく。騎士科で身体を動かすことを三年間みっちりやっていたおかげで、身体は柔軟なのでこうして背中にも手が届くのがありがたい。
貴族令嬢とは違って着付けを手伝ってくれる侍女などいないため、リギアはそれらを全部自分で行わなければならない。
それは過去にステージ歌手だった母ミルファに着付けや化粧などをしっかり覚えさせられたので、こういうときに非常に役に立っていた。
ドレスをしっかり着込んだことを、鏡の前でくるりと回転して確認し、「ヨシッ」と鏡の自分にサムズアップしてから、今度はドレッサー前の椅子に座って髪型を整え化粧を施していく。
もともと短い髪はさっととかして後ろに回して耳にかけ、少し長い襟足を一つにまとめてくるりとひねって夜会巻きもどきをつくり、 ドレスと同じデザインの花の髪飾りを髪に刺した。
そして化粧、これもステージ歌手だったミルファにやり方をしっかり教わり覚えたので、あまり濃くならない自然で健康的な感じに顔面を作っていった。
最後にアクセサリーケースからネックレスとイヤリングを取り出した。これは父カレブに贈られたものだ。大粒の真珠をキラキラ光る小さなダイヤで囲んだ美しい銀鎖のネックレス、色合いはカレブとリギアの髪色を表しているというのは邪推だろうか。
ネックレスを身に着け、同じデザインのイヤリングで耳元を飾る。真珠の色とお揃いの白いパンプスを履いて今一度全身鏡の前に立った。
「うん。ばっちり可愛かろう」
化粧っ気もない騎士科の女学生リギアとは全然違う淑女がそこにいた。両親から顔の良いところばかり受け継いだのだなと、我ながら感心してしまう。喋らなければ普通に淑やかなお嬢さんだ。喋らなければの話だが。
外套と小物が入ったクラッチを用意して、ドレスが皺にならないように立ったまま一息ついていると、寮母がリギアの部屋に来客を告げに来た。応対したリギアを見た寮母は一瞬誰かわからなかったと笑っていたが。
なんだ出かけるの、一瞬誰かわからなかった、めっちゃいいじゃん、楽しんできて、などと寮の女学生たちにひやかされながら、ドレスが着崩れないように、いつもダッシュで行くところをしずしずとエントランスに向かった。
そこにリギアを迎えにきてくれたラドゥがいた。女子寮は男子禁制だが、エントランスで待つくらいは男性にも許されている。
今日のラドゥは正装をしていて、燕尾服に髪は整髪料で後ろに流してまとめられているのが非常に美しい。よく見ればエントランスを通りがかる女学生からもキャーキャー言われている。秘かにファンがいるという噂も嘘ではないようだ。
騎士団に入団したからには城や要人の警護などに駆り出される騎士という職業柄、夜会などにも警備として出るのだろうが、淑女たちに言い寄られるラドゥを想像して何だかもやっとしたりもした。
ラドゥはリギアを見て一瞬目を大きく丸くしてから、若干頬を紅潮させてふわりとした笑顔で迎えてくれた。
「……リギア、見違えた。そのドレス、すごく良く似合ってるよ。それを選んで正解だ」
「ごきげんようラドゥ様。ありがとうございます。貴方も素敵ですわあ」
「ありがとう。何、今日はお嬢様ごっこかな。こちらこそ、ご機嫌麗しゅう、リギア嬢」
お貴族ごっこな挨拶をしてふたりで噴き出した。さすがに慣れないし恥ずかしい。
「せっかくだからお嬢様モードでいこうかと思ったけど、慣れないことはするもんじゃないね、おにい」
「口調はいつものリギアだね。ギャップすごいけど。……じゃあ学園通りのほうにうちの馬車を留めてあるから、そこまで一緒に行こうか。お手をどうぞ」
「ありがとうおにい」
ラドゥの差し出した手にレースの手袋をはめた手を乗せて、彼にエスコートされながら外に出た。
ヒールの高いパンプスは履き慣れていないため、ラドゥのエスコートは非常にありがたい。外に出たら彼の腕に自分の腕をしっかりからめて転ばないように一歩一歩注意して歩く。さながら地雷原を歩く一兵卒のようだ。
苦笑したラドゥに「もっと普通に歩いていいよ、支えてるから」と言われて、リギアは我に返って恥ずかしくなる。
確かにラドゥの腕はしっかりがっちりしていて、子供のころからリギアも同じように鍛えたがそこは男女の差が出てリギアにはここまでの筋肉量はない。そういう身体付の違いをこうして改めて見ると、ラドゥの所謂男性的部分を感じてドキドキした。
「そのネックレスは副団長から?」
「あ、うん。靴も。おにいはドレスでパパはアクセサリーと靴だから、被らなくて良かった」
「……実は打ち合わせたんだ。ちゃんとした晩餐会ならドレスが必要ですねって話したら副団長も俺が贈るって言い出してさ。ドレスを贈るのは婚約者の僕の特権ですって主張したら、じゃあ俺はアクセサリーを贈る!って息まいてたから、じゃあちぐはぐにならないようなのをお互いに選びましょうってことになって」
「あはは、何を張り合ってんの二人して」
「でもアクセサリーも本当は僕が選んであげたかったのになあ。今日のドレス、きっとエメラルドも映えただろうに」
エメラルドはラドゥの瞳と同じ色の宝石だ。確かにオレンジ色のドレスにエメラルドグリーンはよく映えそうだし、何より大好きなラドゥの色を全身に纏うなんてすごく素敵だと思う。
しかし、今日はこの真珠とダイヤモンドのネックレスに白いパンプスもまた、カレブの髪色なのとともに、何色にも染まっていないまだ成人前の女性であるリギアが身に着けるのにちょうどいい気もする。
若干残念がっているラドゥを慰めるように腕を撫で繰り回した。
学園通りにさしかかり、バルファークの紋が装飾された馬車が止まっているのが向こうに見えた。あれがラドゥが用意した馬車だろう。
馬車に向かって焦らずゆっくり歩いていくと、ネックの長いリュートのような楽器を持った吟遊詩人らしき男がポロリポロリと弦をはじきながら二人に近づいてきた。
「やあそこの麗しいカップルさん。一曲いかがですか? ねえミスター、そちらのまるで天空の城塞都市セリューインから舞い降りた銀の月の姫君のようなお嬢さんに曲を贈らせていただきたい」
「いや、すまない。時間がないから……」
「そう言わずに。インスピレーションを感じたら即興で歌ってしまうものですから。ララララ~♪銀の月の光を~かきあ~つめた~♪麗しの~女神よ~♪遥かセリューインの~双子の片割れ~切なきさだめの~め~が~み~よ~~~~♪」
じゃらららららーん!
リュートを奏でてこちらに許可もなくいきなり歌い出した吟遊詩人に二人でドン引きなラドゥとリギアであった。
結構良い声が響き渡ったため、人通りの多い学園通りで人だかりができて即興演奏会が始まってしまった。開いた楽器のケースに次々にチップが投げ込まれている。
人込みから抜け出してそっと離れた。あれだけ人を集めたのだから二人くらい抜け出しても分からなそうである。
「……行こう、リギア。副団長が首を長くして待ってるよ」
「う、うん。そうだね。面白い歌だったけど」
「吟遊詩人ってこっちが恥ずかしくなるよな……」
「バルファークにもいたね。ママの知り合いだったけど」
「ミルファ様は歌手時代にそういう方と仕事してたみたいだしね」
――でも面白い即興の歌詞だったなあ。あとで天空の城塞都市せりゅー? なんとかについて調べよう。
二人が茫然としていると、向こうで御者が二人に「坊ちゃま、お嬢様、お早く」と向こうで促しているのが見えたので、二人は少し足早に馬車まで歩いて行った。
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