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第1章 異世界へ、そしてダンジョンへ

3.異世界生活スタート

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 もう十分過ぎるほど狩れたみたいなのでダンジョンから出ることにした。

 周りに熊のような奴等も居なくなったことだし、今日はあくまでも初日だ。あまり無理をする必要は無いだろう。

 持ち運びは面倒だが空間収納エア・ボックスを使うところを見せて持ち運ばなくては行けないほど離れているわけではない。
 だからといってそのまま運べるほど軽い訳ではないので、荷駄のようなものを作ることにする。

 近くの岩を切り出して、材質操作マテリアル・コントロールで木のような見た目になるようにする。
 同様にゴムのような素材に変えたものをタイヤにする。

 さっき木のような見た目に変えたもので荷台を作り、タイヤを取り付ける。

 横が大体1.5メートルで、縦が3メートルくらい。
 こんなの人の力で引けるわけがなくさらに、熊も乗せるので尚更無理だ。

 だから、荷駄とその上にあるものの重さをゼロにする範囲型重量操作エリア・グラビティーコントロールを荷駄に魔法付与マジックエンチャントする。

 これで荷駄の完成だ。

 早速手元に重量操作ウェート・コントロールを纏わせ熊を積む。

 今日、明らかに頑張ったのここだよな。
 魔法使いすぎで怠い。

「カリス、これ運ぶの手伝ってくれ」

「セシリアちゃん、どうし———……。先ず、これは運べる量じゃない。普通は毛皮だけとかのみ。それにこれまさか今作ったの?」

「今作った。運べるかに関しては絶対に運べる」

 指一本で動かして見せる。

「ま、待って……。これはセシリアちゃんが怪力だからなのかそれとも他に理由が?」

 分かりやすく驚くな。多分、驚いてる点は事実と違うと思うが。

「別に特別力はボクにはない。この荷駄は特殊で重さがゼロだ」

「ゼ、ゼロ?!重さがってことだよね?じゃあ―――……分かった手伝うよ」

 カリスはもう常識が、通用しないから考えるだけ無駄という感じで諦めたらしい。

「さあ、この綱を持ってくれ」

 カリスは俺が持っていた綱を手にする。

「え?!なんか馬が急に現れた!」

 そう、この綱を持つことで効果が発動仕組みになっていて、その仕組みというのはこのように馬が現れるというものだ。
 更に、離してからも数時間はそのまま自分の命令に従って動いてくれる馬はそのままだ。
 一人で運んでいる姿よりは良くなっただろう。

 ◇

 ダンジョンを出ると、二人の少女が馬を率いて熊が3匹も乗った荷駄を引いている異様な光景に、ふりかえって二度見する人がたくさんいた。

 『ダンジョンにあれを引いて入っていったのか?!』『もしかして、あそこに積まれているのって熊じゃないか!』『おいおい、ありゃ一体いくらになるんだよ』とかが、聞こえてきたが無視して歩く。
 変に返して、この世界をよく知らない故に何か致命的なボロが出ても困るからだ。

 結局、悪目立ちもいいところだ。


 ◇

 やっとダンジョンを出て入り口の近くにあるダンジョンの攻略組向けの買い取り屋に入る。


 店の外に来てもらって、鑑定をしてもらった。
 すると

「熊でしかも3体もキングクラスを!どうしたんですか?!いろいろ訊きたいことはありますが訊いても……多分理解できないのでいいです。お金を持ってくるので少々お待ちください」


 そう言われ暫く待ってると

「これら全てで100万メタルです」

「そうか、ありがとう」

 このことを疲れて近くの椅子に座っていたカリスに言うと

「まさか、そんなに貰ったの?!これだけ状態が良くて肉まであるし、当然と言えば当然で済むけど」

「それより53万メタルはカリスのもので、今日借りたお金と今日の報酬の半分だ」

「そ、そんなに要らないよ!私は、ただ見てただけだから」

「いや、これは2人で行ったのなら当然だ」

 まだ、何か言いたそうだったが観念して受け取った。

「お金、もしものときのために普通は預けるから幾らか預けよ」

 何かあったときの保険みたいなものか。

「ボクも20万メタル預けよう」

「私は、30万メタル預ける」

 人がたくさん集まっているところがある。
 もしかしてそこかな?

「そこか?」

 人だかりを指差し訊いてみる。

「うん」

 荷駄はさっきの人たちが今、下ろしている作業中だ。だから、その間にお金を預けてくることにする。

 ◇

 歩いていき着くと列に並ぶ。
 列は様子から見て数分待ちというところだ。


 暫し待つと俺たちの番だ。
 勿論、ATMのような無人の機械がポンっと置いてある訳ではなく、カウンター越しに人がいて、その人を通してやるものだ。

「預け入れか引き出しどっちだ」

 結構ゴツめの男が担当のようである。きっと、この世界にも強盗のような者がいて、それに太刀打ちするためにこうなっているのだろう。

「ボクは預け入れをお願いします」
「私も預け入れをお願い」

 受付にいた男性の問いに対し預け入れをすることを伝える。人にものを頼むのにタメ口をきくのは良くないし、相手は大人で今の自分は子供だ。だから俺は敬語を使うことにする。子供だから敬語を使えなくても多少なりと許されるのかもしれないが、使えるのであれば使った方がいいだろう。

「通帳を出してくれ」

 カリスは通帳を出すが俺は持っているわけがない。だから、少し俺はどうすればいいかよく分からず戸惑ってしまった。

「……初めてか?」

 それに気付いた男性はその見た目に反したとても優しい雰囲気で訊いてくれた。俺はその様子を見て少し安心する。

「はい。初めて利用します」

「なら、新しい通帳だ」

 下から新しい通帳が出てきた。その通帳はカリスの通帳の隣に置かれた。ただ、開いてではなく閉じてだった。

「君の名前を聞かせてもらってもいいかな?」

 名前を書くためにそうしてくれたようだ。


「ボクの名前はセシリア・ジェネレーティといいます」

「セシリア……ジェネレーティっとこれでいいか?」

 通帳に書いた名前が合ってるかどうか訊くためにこちらに向けて尋ねてきた。俺はそれに対し「それで合ってます。ありがとうございます」と合ってることとお礼の言葉を伝える。

「では、幾ら預けるんだ?」

 これでやっとカリスのやつと同じように書き込めるようになった。

「私は30万メタル」
「ボクは20万メタル」

 すると、驚きながら――――

「若いのに結構預けて偉いな、出してくれ」

 ―――褒めてくれた。

 俺達は金をカウンターに置く。

「終わりだ。はい、通帳だ」

 お金はこれで預けられたらしい。俺たちはお礼を言いその場を去った。


 そして、そのあとカリスが知っている宿に泊めさせてもらうことになった。因みに基本的に家は、ダンジョンなどで空ける人が多いため持たない人がほとんどで、カリスも家を持たないらしい。

 帰る道中で通帳について、俺はカリスに質問していた。

「手数料とかはあるのか?」

「手数料?無いよ」


「どこでも使えるのか?」

「お金の単位が同じところなら」


「引き下ろしや預け入れができるところはたくさんあるのか?」

「1つの街に幾つもあるよ」


 気がつくと目の前に目的の宿がある。カリスは俺に質問責めにされて少し疲れてしまった。代わりに俺もカリスに質問されたら誠意を持って答えることにしよう。

 早速宿に入り、一人から二人で泊まることを伝えてもらい、夕食を宿で食べることにする。


 ◇

 その宿で夕食のときに。

「セシリアちゃん、武器も持たずにダンジョンに入ったと思ったら、炎は出すし剣が出てきたて驚きすぎて疲れたよ。あの、できればこれからも一緒にダンジョン行ける?」

「勿論、まだボクも分からないことだらけで一人では大変だから、こちらからもお願いしたいぐらいだよ」

 こんな感じでカリスとこれからも過ごすことになった。

 しかし、同じ部屋で寝るというのはどこか、居心地が悪いような、うれし……何でもない。

 俺にそういった趣味は無いから安心して大丈夫だ。

 それに地球にいた頃もそうだが、ゲームやネットばかりで仮想の世界にいることが多かった俺は正直、ある程度耐性はついているし、エロゲをやらない自分にとって興味は無かった。こんな状況でも冷静に分析を出来ているのもこのおかげなのかもしれない。
 いや、どこかまだ現実として受け止めたくない自分がまだあってこうなっているのだろうか。


 それらはさておき、カリスと話や宿、食事をしていて気づいたがこの世界の〔メタル〕は〔円〕と同じくらいの価値であることが分かった。

 つまりいきなり、ダンジョンに初めて入ったら100万円分稼いでしまったらしい。
 これは、ベテランの攻略組の人でもなかなか稼げない金額で、新人の人は狩れる日や狩れない日で1日平均で5000メタルくらいということを教えてもらった。カリスは1日当たり数万メタル稼げて、上位の方だったのだがどうやら今日の成果は相当目立つものだったようだ。


 だめ押しで本当にゲームでないかステータスを表示しようとしたり、仲間と連絡を試みたりしたが、手応えは無い。それが出来ないのに未だ、魔法は使えるということは分からないことではあるが、今の状況下でいくら考えたとしても答えは導き出せないと思う。

 ただ1つ言えるとすれば本当にここはゲームではなく異世界ということ。

 それとも、これは全て夢だとでも言うのか?否、ここまで鮮明な感覚と思考は夢の中では不可能だ。

 まあ、仮に更ゲームでしたと言われて納得できるような状態では無くなっているが。
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