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第1章 異世界へ、そしてダンジョンへ
6. 明日に備えて
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「セシリアちゃん、セシリアちゃん」
朝から耳元で囁かれるというイベントは……ではなく、なんだろうか?
「おはよう、何時だ今?」
部屋にある時計を見る。
幸いにもこの世界の時間は単位は違うものの1日約24時間で地球と多分あまり変わらない。
因みに1秒と1キニは同じといっていいほど誤差はない。秒は "キニ" で分は "セク" 時は "トソ" だ。何故か、或いは運がいいのか60キニ60セク25トソで一日となっている。
「まだ2トソだぞ、こんなに早くにどうした?」
「だから、早く準備しましょう」
ジョークのつもりだろうか、毎回このようなのがくるとキツい。
流石に早すぎだろ。初めて遊園地に行くみたいに張り切ってるな、じゃあ俺もその雰囲気を壊さないようにしよう。
「ところで、ご飯はどうするんだ?」
「それは、いつも通り下の……ってまだやってない。ど、どうしよう?」
まさか、無計画でここまで早く起きるとはな。この時間に店を開いているところなんてないだろう。
「やること無いな。ちょっとそこから動かないように気を付けろ」
「わ、分かりま……した?」
俺は時間移行を使った。
何やら奇妙な空間にカリスと共に入った。
そこは眩しいような暗いようなよく分からない空間に歪みができたところが目に写る。そこに吸い込まれたようにその歪みに近づいてゆく。
それにしてもこの違和感どうにかなんないかな?
「カリス、大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ。平気よこんなの」
などと強がっているが、俺の手に少し震えながらしがみついている。流石にこれは怖かったか。
その後、歪みに触れたと思った瞬間、そのときには既に先程いた場所に戻った。俺もゲームのなかでは殆ど使わなかった。というか今は実験として使っただけだ。それにしてもゲームのときはモンスターの発生しているような特定の場所でしか使えなかったこの魔法が街中の宿の中で使えるとは……。やはり、ゲームのときとはどれにしても違いがあるようだ。
◇
「もう着いたぞ、じゃあご飯食べるか」
「うん、そうしよう!」
そういいながらもカリスは、待てばいいだけなのになどと呟いていた。
確かに正論ではあるが、今日は楽しみにしていたのだからそのスタートから待つというのはちょっと悲しい。
だから時間移動したが、それは逆効果になってしまった可能性が高そうだ。
この後、挽回出来るように今回みたいにならないように気を付けようと心の隅に残しておいた。カリスとしては自分のせいで気を遣わせたと思っているみたいだ。
それなら、カリスにも俺に対して動いてくれるようにお願いすればその罪悪感のようなものも消えてくれるのでないかなと思う。
いつものように宿の食堂でご飯を食べている。そこで早速、カリスの罪悪感を早く消すべくお願いをすることにした。
「ボク、この辺よく知らないから案内宜しくな」
「任せて!さっきセシリアちゃんが見せてくれた魔法に応えなきゃね」
若干暗く見えた表情は、やはり自然な明るい表情へと変わってくれた。俺の選択は良かったようだ。
「あのときは突然魔法を使って、怖い思いをさせて悪かった」
「そんなこと別に気にしてないよ。だから心配しなくて大丈夫だよ」
「そうか、それは良かった」
◇
宿を出てカリスの案内で、たくさんの人々で賑わう商店街に来ている。
「まずは、食べ物を買う?水は魔法で出せるみたいだけど一応水も少し買っておこっかー」
「万が一のことも考えてな。食べ物とかの量は気にしなくていいぞ。魔法で収納できるから。取り敢えず1週間分は用意しておくか。ここに仕舞えば時間の経過は無いから、腐る心配はいらない。無くなっても最悪の場合、入り口までとかに転移すれば問題は無いがな」
買ったものは、焼いてある肉、パン、サラダ(ぽいもの)、そして水。
シンプルだが、十分だ。
次に、防具だ。
これは、服に魔法付与する。
1つくらいしか出来ないが、問題はない。
早速、魔法付与していく。
攻撃無効化を付与する。
これは、一見無敵のように見えるが本人が認知できない攻撃、不意討ち等は防げない。
カリスのも魔法付与しておく。
カリスはよく理解できてないようだったが、とにかくいつも通りで行こうということになった。これが油断の原因で、危険な目に会うなんてことになったら元も子も無い。
「準備ってこんな感じでいいのか?」
「これで必要なものは全部揃ったと思うよ」
一先ず、全部揃ったようなので昼ごはんを食べることを提案する。
「昼ごはんでも食べるか」
「私のおすすめの店があるから行かない?」
「勿論行こう」
カリスのおすすめの店はどんな感じなんだろうか。楽しみだ。
◇
「ここだよ」
「いい店だな」
重厚感溢れる扉を開けると店内は黒を基調とした所々に美術的価値が付きそうな装飾が施されていた。今までの料理とは違いこの世界では貴重な塩や胡椒などのものを惜しみ無く使っていた。
所謂、高級料理店というやつだろう。だが、畏まった感じはあまり感じられなかった。そこが唯一の救いだろうか。もしかしたらお偉いさんがお忍びで来るところだからこんな感じなんだろうか?そういう知識は皆無だから合ってるのかなんて知らないけど。
俺たちは席についてメニューを選び始める。
「セシリアちゃんは何食べる?」
「俺はステーキかな」
こっちにも肉を焼いて食べるのはあったが野菜と一緒に食べて、味は殆ど無く正直好きではなかった。やっぱ、ステーキは塩胡椒で食べるのが1番好きだ。
「カリスは何を食べるんだ?」
「私もステーキにしようかな、たまに来るときもステーキだし」
というわけでステーキを食べることを決めた俺たちはウェイターさんにそのことを伝え料理が届くの待つのみとなった。
お洒落にソースがかけられたステーキが運ばれてきた。量もチョロっとで多分いい希少部位でも使っているのだろう。
やはりこの世界でこんなに美味しい料理はなかなか無い。いや、前世でもこんなに美味しいステーキは滅多に無かった。
そんな料理を食べながら今後の予定を話していた。若干………いや、大分場違いな内容であると思うが始まってしまったものはしょうがない。ただ、他の人たちには聞こえないように魔法で外に俺たちの会話が漏れないようにした。
◇
「もう、ダンジョンの準備終わったけどどうするの?」
「今からダンジョンってのもな~、魔法の練習でもしに行くか」
「確かにそれはいいね」
「森はどこら辺にあるか?」
「ここから真東に10キロくらい行ったところよ」
会計を済ませて人影の少ないところに向かう。今回の食事代は昼なのに二人で10,000円分くらいを超えてしまった。
このあとの訓練でその分を取り戻せるよう頑張ろうか。
「じゃあ、座標転移でそこまで行くぞ。今回は、変な空間には入らないから大丈夫だ」
カリスの賛否を訊くと一応頷いてくれた。座標転移を発動した瞬間景色だけが変わった。この発動した瞬間に効果を発揮するのはゲームのときと同じようだ。
だが、この時には魔法を使った時に起こるあの違和感を覚えなかった。気のせいかもしれない、今はそういうことにした。
「どうだ。一瞬で終わっただろ?」
「本当だ!というかもうセシリアちゃん自体が異常過ぎて怖いけどね」
「それは少し失礼では無いかな?まあ、確かに周囲の人間と比較すると異質なのは認めるが面と向かって言われると少し傷付くもんだ」
「それはほんとにごめん。なんか無神経だった」
俺は別に謝罪を求めての発言ではなかったつもりだったのに、こうも女の子に頭を下げさせてしまうとは……。以後、気を付けなくてはならないな。
「いやいや、カリスは特別だからいいんだ。俺としては逆に世辞ばかりの上辺だけの関係なんて嫌いだから正直に言ってくれるのはむしろ有り難いことだと思ってるよ」
「特……別?」
あれ?不味いこと言っちゃた感じ?
「そんな風に思ってくれてたなんて嬉しいよ!私の中でのセシリアちゃんは、もちろん既に特別な存在だよ!」
特別な存在?頭の中で何度もさっきの言葉を繰り返し再生してもはっきりと言っていた。
だが、これは恋愛感情から来たものではなく友情としてのものである。
どちらにせよ俺は嬉しい。
「ボクのことそんな風に思っていてくれたのか!ありがとな」
お礼の言葉を述べ、早速練習といこうか。
「本題に戻ろう。今までは、剣を魔法強化しただけだが、今回は放出系の魔法をやろう。感覚を共有するから心の準備――という程ではないか。まあ、今からボクとの感覚を共有するからそのつもりで」
「分かったよ!」
まず、火球を何回か放った。
「どうだ、感覚は伝わったか?」
「この感覚共有ってすごいね、まるで自分がやってるみたい!」
「じゃあ試しに打てそうか?」
「うん!」
カリスは火球を放った。
初めてなのに、威力が俺さっき放ったのとと大差が無い。俺が手を抜いたものとはいえ素晴らしい。
「凄いな、火球をパッと出来るなんて誰でも、というより殆どのは人はできないぞ」
少し照れてさっきよりも威力が上がっている、どうなっている?
「次は回復魔法を使おう、この2つさえ使えれば魔法のみで、ダンジョンに行けるかもしれないぞ?」
カリスに低位治癒をかけた。
「さあ、やってみようか」
俺は、指先を軽く切った。
「これを直せたら成功だ」
「こう、それとも……」
何度もやってるがうまく出来ない様子だ。
「大丈夫だ。もう無理しなくてもいいぞ、普通は回復魔法は数週間練習して出来れば早いと言われてるのだから」
どうやら、カリスは放出系の魔法が得意そうだ。
あれも数日はかかるものだからな。
「そうね、でも火球があるからだいぶ強くなれたよ」
「そろそろ帰るか。また記憶転移を使う。これは座標転移とあまり変わらないからさっきのが大丈夫なら心配はいらないぞ」
俺は記憶転移で宿を想像して、発動させた。これもさっきの座標転移と同じようにゲームのときと同じであった。
「もう着いたぞ」
「確かにあまり変わらないね」
「発動の仕方が違うだけだからな」
◇
俺はある計画を練っていた。
「カリス、今日の夕飯、ボクの作った料理食べる?」
「え、でもどうやっ……あ、もしかして魔法で作るの?材料はある?」
「実は余分に買っておいたから材料はある」
俺は一見何もない空間から次々に食材を取り出していく。ゲームその頃とは違いアイテムウィンドウなんて出てくるわけもなく最初は戸惑ったけど今はコツを摘んできたのでゲームの頃のように……その頃よりも早く取り出せている。
その食材の加工に移る。鍋の形をした金属を作るとそこに人参、じゃがいもの様なもの、肉などを入れる。
この世界は、気候などは地球と似ているためか食材もほぼ変わらないのである。
水を加え火の魔法で温められる。
その後、暫く煮込んだら四角い白いキューブ状のものを入れる。
その後、もう少し煮るとさらに皿に盛り付けて、パンを並べた。
何を作ったのか?それはシチューだ。
俺はパンと食べるシチューが好きなため、実は密かにゲームの中で作る練習をして食べることがあった。あの四角い白いキューブ状のものも試行錯誤してようやく辿り着いて作った俺の努力の結晶だ。
「何て言う料理なの?」
「シチューだ。おすすめの食べ方があるから見ていてくれ」
パンを俺は1つとりパンの端をシチューにダイブさせてから食べた。
「こうやって食べるとうまいぞ」
カリスはセシリアの真似をしてパンの端をシチューに浸し、食べてみた。
「セシリアちゃんはこんなことも知ってるだ!シチューとパンの組み合わせ最高だね」
「ボクのおすすめだからね」
この世界でも魔法で料理ができて、嬉しい気持ちで食べているセシリアと、魔法という最近知ったものによって作られた未知の料理に、感心しながら食べるカリスは、とても楽しそうだった。
その後も2人は食べて、シチューに関する食材が1~2人分削られていたが、気付かないほど無我夢中で食べるのであった。
朝から耳元で囁かれるというイベントは……ではなく、なんだろうか?
「おはよう、何時だ今?」
部屋にある時計を見る。
幸いにもこの世界の時間は単位は違うものの1日約24時間で地球と多分あまり変わらない。
因みに1秒と1キニは同じといっていいほど誤差はない。秒は "キニ" で分は "セク" 時は "トソ" だ。何故か、或いは運がいいのか60キニ60セク25トソで一日となっている。
「まだ2トソだぞ、こんなに早くにどうした?」
「だから、早く準備しましょう」
ジョークのつもりだろうか、毎回このようなのがくるとキツい。
流石に早すぎだろ。初めて遊園地に行くみたいに張り切ってるな、じゃあ俺もその雰囲気を壊さないようにしよう。
「ところで、ご飯はどうするんだ?」
「それは、いつも通り下の……ってまだやってない。ど、どうしよう?」
まさか、無計画でここまで早く起きるとはな。この時間に店を開いているところなんてないだろう。
「やること無いな。ちょっとそこから動かないように気を付けろ」
「わ、分かりま……した?」
俺は時間移行を使った。
何やら奇妙な空間にカリスと共に入った。
そこは眩しいような暗いようなよく分からない空間に歪みができたところが目に写る。そこに吸い込まれたようにその歪みに近づいてゆく。
それにしてもこの違和感どうにかなんないかな?
「カリス、大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ。平気よこんなの」
などと強がっているが、俺の手に少し震えながらしがみついている。流石にこれは怖かったか。
その後、歪みに触れたと思った瞬間、そのときには既に先程いた場所に戻った。俺もゲームのなかでは殆ど使わなかった。というか今は実験として使っただけだ。それにしてもゲームのときはモンスターの発生しているような特定の場所でしか使えなかったこの魔法が街中の宿の中で使えるとは……。やはり、ゲームのときとはどれにしても違いがあるようだ。
◇
「もう着いたぞ、じゃあご飯食べるか」
「うん、そうしよう!」
そういいながらもカリスは、待てばいいだけなのになどと呟いていた。
確かに正論ではあるが、今日は楽しみにしていたのだからそのスタートから待つというのはちょっと悲しい。
だから時間移動したが、それは逆効果になってしまった可能性が高そうだ。
この後、挽回出来るように今回みたいにならないように気を付けようと心の隅に残しておいた。カリスとしては自分のせいで気を遣わせたと思っているみたいだ。
それなら、カリスにも俺に対して動いてくれるようにお願いすればその罪悪感のようなものも消えてくれるのでないかなと思う。
いつものように宿の食堂でご飯を食べている。そこで早速、カリスの罪悪感を早く消すべくお願いをすることにした。
「ボク、この辺よく知らないから案内宜しくな」
「任せて!さっきセシリアちゃんが見せてくれた魔法に応えなきゃね」
若干暗く見えた表情は、やはり自然な明るい表情へと変わってくれた。俺の選択は良かったようだ。
「あのときは突然魔法を使って、怖い思いをさせて悪かった」
「そんなこと別に気にしてないよ。だから心配しなくて大丈夫だよ」
「そうか、それは良かった」
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宿を出てカリスの案内で、たくさんの人々で賑わう商店街に来ている。
「まずは、食べ物を買う?水は魔法で出せるみたいだけど一応水も少し買っておこっかー」
「万が一のことも考えてな。食べ物とかの量は気にしなくていいぞ。魔法で収納できるから。取り敢えず1週間分は用意しておくか。ここに仕舞えば時間の経過は無いから、腐る心配はいらない。無くなっても最悪の場合、入り口までとかに転移すれば問題は無いがな」
買ったものは、焼いてある肉、パン、サラダ(ぽいもの)、そして水。
シンプルだが、十分だ。
次に、防具だ。
これは、服に魔法付与する。
1つくらいしか出来ないが、問題はない。
早速、魔法付与していく。
攻撃無効化を付与する。
これは、一見無敵のように見えるが本人が認知できない攻撃、不意討ち等は防げない。
カリスのも魔法付与しておく。
カリスはよく理解できてないようだったが、とにかくいつも通りで行こうということになった。これが油断の原因で、危険な目に会うなんてことになったら元も子も無い。
「準備ってこんな感じでいいのか?」
「これで必要なものは全部揃ったと思うよ」
一先ず、全部揃ったようなので昼ごはんを食べることを提案する。
「昼ごはんでも食べるか」
「私のおすすめの店があるから行かない?」
「勿論行こう」
カリスのおすすめの店はどんな感じなんだろうか。楽しみだ。
◇
「ここだよ」
「いい店だな」
重厚感溢れる扉を開けると店内は黒を基調とした所々に美術的価値が付きそうな装飾が施されていた。今までの料理とは違いこの世界では貴重な塩や胡椒などのものを惜しみ無く使っていた。
所謂、高級料理店というやつだろう。だが、畏まった感じはあまり感じられなかった。そこが唯一の救いだろうか。もしかしたらお偉いさんがお忍びで来るところだからこんな感じなんだろうか?そういう知識は皆無だから合ってるのかなんて知らないけど。
俺たちは席についてメニューを選び始める。
「セシリアちゃんは何食べる?」
「俺はステーキかな」
こっちにも肉を焼いて食べるのはあったが野菜と一緒に食べて、味は殆ど無く正直好きではなかった。やっぱ、ステーキは塩胡椒で食べるのが1番好きだ。
「カリスは何を食べるんだ?」
「私もステーキにしようかな、たまに来るときもステーキだし」
というわけでステーキを食べることを決めた俺たちはウェイターさんにそのことを伝え料理が届くの待つのみとなった。
お洒落にソースがかけられたステーキが運ばれてきた。量もチョロっとで多分いい希少部位でも使っているのだろう。
やはりこの世界でこんなに美味しい料理はなかなか無い。いや、前世でもこんなに美味しいステーキは滅多に無かった。
そんな料理を食べながら今後の予定を話していた。若干………いや、大分場違いな内容であると思うが始まってしまったものはしょうがない。ただ、他の人たちには聞こえないように魔法で外に俺たちの会話が漏れないようにした。
◇
「もう、ダンジョンの準備終わったけどどうするの?」
「今からダンジョンってのもな~、魔法の練習でもしに行くか」
「確かにそれはいいね」
「森はどこら辺にあるか?」
「ここから真東に10キロくらい行ったところよ」
会計を済ませて人影の少ないところに向かう。今回の食事代は昼なのに二人で10,000円分くらいを超えてしまった。
このあとの訓練でその分を取り戻せるよう頑張ろうか。
「じゃあ、座標転移でそこまで行くぞ。今回は、変な空間には入らないから大丈夫だ」
カリスの賛否を訊くと一応頷いてくれた。座標転移を発動した瞬間景色だけが変わった。この発動した瞬間に効果を発揮するのはゲームのときと同じようだ。
だが、この時には魔法を使った時に起こるあの違和感を覚えなかった。気のせいかもしれない、今はそういうことにした。
「どうだ。一瞬で終わっただろ?」
「本当だ!というかもうセシリアちゃん自体が異常過ぎて怖いけどね」
「それは少し失礼では無いかな?まあ、確かに周囲の人間と比較すると異質なのは認めるが面と向かって言われると少し傷付くもんだ」
「それはほんとにごめん。なんか無神経だった」
俺は別に謝罪を求めての発言ではなかったつもりだったのに、こうも女の子に頭を下げさせてしまうとは……。以後、気を付けなくてはならないな。
「いやいや、カリスは特別だからいいんだ。俺としては逆に世辞ばかりの上辺だけの関係なんて嫌いだから正直に言ってくれるのはむしろ有り難いことだと思ってるよ」
「特……別?」
あれ?不味いこと言っちゃた感じ?
「そんな風に思ってくれてたなんて嬉しいよ!私の中でのセシリアちゃんは、もちろん既に特別な存在だよ!」
特別な存在?頭の中で何度もさっきの言葉を繰り返し再生してもはっきりと言っていた。
だが、これは恋愛感情から来たものではなく友情としてのものである。
どちらにせよ俺は嬉しい。
「ボクのことそんな風に思っていてくれたのか!ありがとな」
お礼の言葉を述べ、早速練習といこうか。
「本題に戻ろう。今までは、剣を魔法強化しただけだが、今回は放出系の魔法をやろう。感覚を共有するから心の準備――という程ではないか。まあ、今からボクとの感覚を共有するからそのつもりで」
「分かったよ!」
まず、火球を何回か放った。
「どうだ、感覚は伝わったか?」
「この感覚共有ってすごいね、まるで自分がやってるみたい!」
「じゃあ試しに打てそうか?」
「うん!」
カリスは火球を放った。
初めてなのに、威力が俺さっき放ったのとと大差が無い。俺が手を抜いたものとはいえ素晴らしい。
「凄いな、火球をパッと出来るなんて誰でも、というより殆どのは人はできないぞ」
少し照れてさっきよりも威力が上がっている、どうなっている?
「次は回復魔法を使おう、この2つさえ使えれば魔法のみで、ダンジョンに行けるかもしれないぞ?」
カリスに低位治癒をかけた。
「さあ、やってみようか」
俺は、指先を軽く切った。
「これを直せたら成功だ」
「こう、それとも……」
何度もやってるがうまく出来ない様子だ。
「大丈夫だ。もう無理しなくてもいいぞ、普通は回復魔法は数週間練習して出来れば早いと言われてるのだから」
どうやら、カリスは放出系の魔法が得意そうだ。
あれも数日はかかるものだからな。
「そうね、でも火球があるからだいぶ強くなれたよ」
「そろそろ帰るか。また記憶転移を使う。これは座標転移とあまり変わらないからさっきのが大丈夫なら心配はいらないぞ」
俺は記憶転移で宿を想像して、発動させた。これもさっきの座標転移と同じようにゲームのときと同じであった。
「もう着いたぞ」
「確かにあまり変わらないね」
「発動の仕方が違うだけだからな」
◇
俺はある計画を練っていた。
「カリス、今日の夕飯、ボクの作った料理食べる?」
「え、でもどうやっ……あ、もしかして魔法で作るの?材料はある?」
「実は余分に買っておいたから材料はある」
俺は一見何もない空間から次々に食材を取り出していく。ゲームその頃とは違いアイテムウィンドウなんて出てくるわけもなく最初は戸惑ったけど今はコツを摘んできたのでゲームの頃のように……その頃よりも早く取り出せている。
その食材の加工に移る。鍋の形をした金属を作るとそこに人参、じゃがいもの様なもの、肉などを入れる。
この世界は、気候などは地球と似ているためか食材もほぼ変わらないのである。
水を加え火の魔法で温められる。
その後、暫く煮込んだら四角い白いキューブ状のものを入れる。
その後、もう少し煮るとさらに皿に盛り付けて、パンを並べた。
何を作ったのか?それはシチューだ。
俺はパンと食べるシチューが好きなため、実は密かにゲームの中で作る練習をして食べることがあった。あの四角い白いキューブ状のものも試行錯誤してようやく辿り着いて作った俺の努力の結晶だ。
「何て言う料理なの?」
「シチューだ。おすすめの食べ方があるから見ていてくれ」
パンを俺は1つとりパンの端をシチューにダイブさせてから食べた。
「こうやって食べるとうまいぞ」
カリスはセシリアの真似をしてパンの端をシチューに浸し、食べてみた。
「セシリアちゃんはこんなことも知ってるだ!シチューとパンの組み合わせ最高だね」
「ボクのおすすめだからね」
この世界でも魔法で料理ができて、嬉しい気持ちで食べているセシリアと、魔法という最近知ったものによって作られた未知の料理に、感心しながら食べるカリスは、とても楽しそうだった。
その後も2人は食べて、シチューに関する食材が1~2人分削られていたが、気付かないほど無我夢中で食べるのであった。
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本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
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高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
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不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
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14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
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