ままたよ

Monokawa Shusuke

文字の大きさ
5 / 7

5.

しおりを挟む
「お、あった」

着いた。昨日見つけた祠だ。結局何を祀ってる所なのか分からなかったので知りたかったのだ。祠の側面とかも見てみるが、神様の名前とかは書かれていない。幽霊も神も超常現象という面では同じだと思っていたので、何かの手がかりになるかと思うのだが...。

そう思った時だった。

「あの、」

振り返ると、中年くらいの男の人が立っていた。私はどきりとした。まさかまじまじと見ていたから不審がられたのだろうか。

「はい」

なるべく自然に聞こえるよう、言った。しかし、私の心配は杞憂だったらしい。

「もしかして、興味がおありなんですか?」
「あ、はい。昨日ここに来た者なんですけど、何の神様を祀ってるのかなと思いまして...」
「ああ、この祠ですか。これは御雪様おゆきさまを祀っている祠なんです」
「御雪様?」
「はい。この辺りの土着神なんですよ。ほら、この辺りは雪が結構降りますから」
「ということは...御雪様は雪の神様なんですか?」
「ああいや、そうではないんですけど...。そうだ、そこに資料館があるんです。そこに行けば詳しく説明していると思いますよ」

その人は少し遠くの、小さな建物を指指して言った。

「ありがとうございます」
「いえいえ」

...

「あの、すいません」

入ってみると、そこには受付の女性(多分結構な年齢)がいて、快く展示を見せてくれた。しかも写真撮っていいらしい。

早速進んでみると、御雪様と、もう一つの別の神様の伝承や歴史についての展示が窮屈そうに置かれている。民俗学とかは全然知らないが、結構面白そうだ。早速、入口近くにあった解説パネルを見てみる。

...

御雪様(おゆきさま)は、室町時代頃から信仰されてきたとされる「変化」を司る神格です。柔らかな雪が溶け、やがて硬い氷へと姿を変えるように、「変化」そのものが成功や繁栄をもたらす兆しであると考えられてきました。

また、人は成長の過程で身体的・精神的にさまざまな変化を遂げることから、御雪様は人を生み出した存在、あるいは人の成長を導く存在であるとも解釈されています。こうした信仰は、主に岐阜県を中心に広がり、現在に至るまで多くの人々に受け継がれてきました。

御雪様信仰を示す儀礼の一つに「断髪式」があります。これは、変化の象徴とされる髪の毛を一寸(3センチメートルほど)に切り、これを焼納する儀式で、年に一度執り行われます。
髪を一寸に切る理由については、「一」という数字が、「これから訪れる新たな変化への期待」を象徴しているためであると伝えられています。

この儀式では、切り取られた髪の毛のほか、同じく変化の象徴とされる爪や、御雪様の好物であると伝承される白い饅頭がお供え物として供えられます。

...

あれ、爪?関係あるかもしれない

私はパネルの写真を撮り、奥に進む。次は伝承があった。古い紙に読めない文字で、何か書いてある。パネルに解説が載っていた。

...

御苫様は不変を愛し、御雪様は変化を愛し給ふ。
民を変化より隔て給ひし御苫様、その御心のありさまゆゑに、
信仰は次第に人々の心より失せたり。
かかるがために、民は御雪様をのみ信仰し奉るやうになりて、
御苫様は、つひに民の記憶より忘れ去られ給ひけり。

されば、並び立ちし二つの社は一つとなり、
その社、末永く世に立ち続けるものなり。



御苫様(おとまさま)は「変わらないこと」を尊び、御雪様は「変わること」を尊んでいた。
民を変化から遠ざけようとした御苫様のその在り方のために、
人々の心から御苫様への信仰は次第に失われていった。
その結果、民は御雪様のみを信仰するようになり、
御苫様はついに、人々の記憶から忘れ去られてしまった。

そこで、並んで建てられていた二つの祠は一つになり、
その祠は、末永くこの世に立ち続けることとなった。

...

御苫様おとまさま?そんな神様もいるのか。

私はこれの写真も撮り、さらに奥へ進む。今度は御苫様についての資料もあった。

...

本作品は、御苫様に仕えた人物として伝えられる「太与たよ」が、御苫様と初めて邂逅した場面を描いたものです。作者については明らかではありませんが、現在ではほとんど信仰の姿をとどめていない御苫様信仰を伝える、貴重な資料の一つとされています。

...

見てみると、森の中で髪の長い女性が黒色の服を着た人?に膝をついている姿を描いた絵があった。下には「画面に用いられている黒色は、他の色と交わらない性質を持つことから、御苫様を象徴する色として選ばれたものと考えられています。」という解説がついていた。多分、女性が太与さんで黒服の方が御苫様だろう。

どうやら、室町時代までは御苫様、それ以降は御雪様の信仰が行われていたらしい。

...

こうして色々見てみたが、やはり御雪様・御苫様とあの女は何かしらの関係がありそうだ。気づけば眠気を忘れて見入ってしまったが、資料館の外に出ると、どっと眠気に襲われた。

早く帰って乙瀬にも教えよう。あと、寝よう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

処理中です...