somewhere

somewhere

私は、頭を抱えた。

自室のデスクの上に置いてある紙1枚を見て、溜息をつく。
タイトルらしき文字列が上部に書かれている。

Ysk Ẅeybwl

全く理解ができない。このアルファベットの列挙が6, 7時間も、いや。正確に言うとしたら1カ月、この私の頭を悩ませている。



私の名は園水そのみな 京助きょうすけ。言語学習だ。自分で言うのも自慢に聞こえるだろうが、過去にいくつもの言語を解読や発見で有名だ。事実、東京国立国際大学に在学していた頃から言語学の研究を続けていた。

しかし、こんなに簡単に見える言語を解読できないなど。情報量が少ないにしてもそれが私の自尊心に傷を負わせるのは当然のことである。

「一旦休憩にするか...」

...

確かあの文字はウェールズ語にある文字だったな。だとしたら発音もウェールズ語から来ているのだろうか。...ダメだ。休憩になってない。

コーヒーを片手に頭をかきむしる。脳に焼き付いたあの文字列が、私を占拠している。

Ẅá týtel sakshẃhamýlze.
Ẅá sýstil sakshẃhamýlze.
Ẅá sástam sakshẃhamýlze.
Ẅá ẅwyst sakshẃhamýlze. 
Sakshẃhamýlze koys yn gtósys, Ás.
Sakshẃhamýlze. Á, sakshẃhamýlze.

ああ、クソ。何なんだ。単語の並びからして、詩のようなものなのだろう。分かるのはそれだけである。発見場所からして英語との関連性もなくはないが...。いや、今私は休憩をしているんだ。あれについて考えるのはもう十分だ。

Ysk Ẅeybwl...ウェールズ語のẄのような、wに近い発音なのか？いや、そもそもこれは文字だけで発音されない可能性も...。

彼は、なぜ自分がこの文字列について深く考え続けるのか、分からなかった。

...

Krýzという言語の解読、もしくはそれに関する発見を追い求めた彼は、今何をしているのだろうか。
しかし、少なくとも園水そのみな 京助きょうすけという名前を今後聞くことはもうないだろう。
彼は、助けを求めただろう。どこかで。「やめてくれ」と叫んだだろう。
しかしそんな願いは叶うはずない。彼の愚鈍な行為は彼の首をしめるだけ。死へ、歩き始める。
いや、正確に言うと彼は、もうそこに行き着いているのだ。

Sakshẃhamýlze. Á, sakshẃhamýlze.