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54.クロード視点+α
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その知らせを持ってきたのは、いつもオレのことを胡散臭げに見つめていたラバール侯爵令嬢の侍女だった。
「お嬢様がえん罪で騎士に連れて行かれてしまったのです」
そう、顔色を悪くして駆け込んできた。
その日の講義でラバール侯爵令嬢の姿を見かけなかったから、体調を崩したのだろうかと思っていたが、そんなことになっていたなんて。
詳しく事情を聞くと、狙われたのは明らかにラバール侯爵令嬢の方だというのに、弟の毒殺を企てたということにされていた。
一度目の時空で彼女が断罪された流れと近いものを感じてしまう。
(だが、今回は婚約者とうまくいっていたはずだが)
あの王太子が動くかどうかはさておき、この侍女が頼るとしたらそちらだと思ったが。尋ねると、侍女は言う。
「殿下は厳しい御方です。ジュリア様が婚約者だからと、動いて貰えるかは私にはわかりませんでした。それに私のような者が面会を申請しても、会っていただけません」
答えは酷く現実的な物で、オレは納得する。
「オレならば、動くと思ったのだな」
そう言って無言で侍女を見つめると、侍女は決まり悪げに頷いた。
実際、この侍女の見立て通りだから何も外れては居ないが。
「毒を盛った犯人に、心当たりはーー?」
といいつつ、オレの脳裏に先日の学芸祭でオレ達を罠にはめようとしかけてきたバシュレ公爵令嬢の姿が思い浮かぶ。
「お嬢様は奥様と折り合いが悪く、おそらくは奥様が。ですが、証拠は何も」
「他に何か変わったことは?」
「少し前から屋敷に勤めていた侍女が、事件後屋敷を辞めております。当時にお嬢様達に給仕をしていたうちの一人なので、もしかしたら何か関わりがあるかもしれません」
「どこに行ったかは?」
「……わかりません」
「わかった。こちらでも調査するが、その侍女と親しかった者からもどこか行きそうな場所がないかもう少し話を聞いてくれないか」
オレは侍女を帰らせ、休講手配を行うと、ラバール侯爵令嬢の元へと走った。
* * *
「罪を認めますか?」
「いいえ、認めません」
尋問とも言えない応酬は数日続いた。
いくら未来は変えられないかもしれないとはいえ、ケイトやクロード様が私を助けようと奮闘してくれている。そう簡単に未来を諦められなかった。
頑なに罪を認めない私に騎士も苛立つ様子はなく、淡々とした受け答えが繰り返された。
何度かケイトが差し入れを持ってきてくれたのもあり、記憶の中の牢よりもかなり快適で、このままずっとここで過ごすのも良いかもしれないと思う。
今日もまた、同じやり取りを繰り返すのかと思って騎士がやってくる頃合いを待っていると、いつもより足音が多い。
「……お母様。あの、エリクさんは?」
「その呼び方、やめてくださる? やっと私達家族ではなくなったのだから」
「それは……?」
意味のわからない私に向かって、継母――ラバール侯爵夫人は、扇で口元を隠し、嘲笑する。
「あら、察しが悪いのね。まだ罪を認めていないとはいえ、異母弟の毒殺を試みて騎士団に事情聴取されるようなご令嬢、王太子殿下の婚約者に相応しいと思う? あなたは殿下の婚約者から外されたの。そして、可愛い私の息子を害するような厄介者、侯爵家にはおいておけないから、我が家とも縁切りしたってわけ」
「え……」
「そうそう。エリクは無事だから。殺そうとしたのに、残念だったわね。平民ならどっちにしろ死罪だから、あなたは関係なかったかしら」
こんな状況でも、エリクさんが無事だと聞いてほっとした。
そんな私を置いて、夫人は笑い声を残して去って行った。
私は貴族でなくなってしまったらしいけれど、そんなに簡単に手続きが終わるものだろうか。
ラバール侯爵夫人の姿が見えなくなると、私は屈強な騎士により平民向けの牢に連れていかれた。
そこは、記憶にある通りの平民向けの牢で、思わず自嘲の笑みが零れる。
「そっか。もしかして、一度目に牢に入れられた時は、既に侯爵令嬢ではなかったのかもしれないわね」
薄汚い牢に入れられ笑う私を、騎士は気味悪そうに見ると素早く牢を出て行った。
「お嬢様がえん罪で騎士に連れて行かれてしまったのです」
そう、顔色を悪くして駆け込んできた。
その日の講義でラバール侯爵令嬢の姿を見かけなかったから、体調を崩したのだろうかと思っていたが、そんなことになっていたなんて。
詳しく事情を聞くと、狙われたのは明らかにラバール侯爵令嬢の方だというのに、弟の毒殺を企てたということにされていた。
一度目の時空で彼女が断罪された流れと近いものを感じてしまう。
(だが、今回は婚約者とうまくいっていたはずだが)
あの王太子が動くかどうかはさておき、この侍女が頼るとしたらそちらだと思ったが。尋ねると、侍女は言う。
「殿下は厳しい御方です。ジュリア様が婚約者だからと、動いて貰えるかは私にはわかりませんでした。それに私のような者が面会を申請しても、会っていただけません」
答えは酷く現実的な物で、オレは納得する。
「オレならば、動くと思ったのだな」
そう言って無言で侍女を見つめると、侍女は決まり悪げに頷いた。
実際、この侍女の見立て通りだから何も外れては居ないが。
「毒を盛った犯人に、心当たりはーー?」
といいつつ、オレの脳裏に先日の学芸祭でオレ達を罠にはめようとしかけてきたバシュレ公爵令嬢の姿が思い浮かぶ。
「お嬢様は奥様と折り合いが悪く、おそらくは奥様が。ですが、証拠は何も」
「他に何か変わったことは?」
「少し前から屋敷に勤めていた侍女が、事件後屋敷を辞めております。当時にお嬢様達に給仕をしていたうちの一人なので、もしかしたら何か関わりがあるかもしれません」
「どこに行ったかは?」
「……わかりません」
「わかった。こちらでも調査するが、その侍女と親しかった者からもどこか行きそうな場所がないかもう少し話を聞いてくれないか」
オレは侍女を帰らせ、休講手配を行うと、ラバール侯爵令嬢の元へと走った。
* * *
「罪を認めますか?」
「いいえ、認めません」
尋問とも言えない応酬は数日続いた。
いくら未来は変えられないかもしれないとはいえ、ケイトやクロード様が私を助けようと奮闘してくれている。そう簡単に未来を諦められなかった。
頑なに罪を認めない私に騎士も苛立つ様子はなく、淡々とした受け答えが繰り返された。
何度かケイトが差し入れを持ってきてくれたのもあり、記憶の中の牢よりもかなり快適で、このままずっとここで過ごすのも良いかもしれないと思う。
今日もまた、同じやり取りを繰り返すのかと思って騎士がやってくる頃合いを待っていると、いつもより足音が多い。
「……お母様。あの、エリクさんは?」
「その呼び方、やめてくださる? やっと私達家族ではなくなったのだから」
「それは……?」
意味のわからない私に向かって、継母――ラバール侯爵夫人は、扇で口元を隠し、嘲笑する。
「あら、察しが悪いのね。まだ罪を認めていないとはいえ、異母弟の毒殺を試みて騎士団に事情聴取されるようなご令嬢、王太子殿下の婚約者に相応しいと思う? あなたは殿下の婚約者から外されたの。そして、可愛い私の息子を害するような厄介者、侯爵家にはおいておけないから、我が家とも縁切りしたってわけ」
「え……」
「そうそう。エリクは無事だから。殺そうとしたのに、残念だったわね。平民ならどっちにしろ死罪だから、あなたは関係なかったかしら」
こんな状況でも、エリクさんが無事だと聞いてほっとした。
そんな私を置いて、夫人は笑い声を残して去って行った。
私は貴族でなくなってしまったらしいけれど、そんなに簡単に手続きが終わるものだろうか。
ラバール侯爵夫人の姿が見えなくなると、私は屈強な騎士により平民向けの牢に連れていかれた。
そこは、記憶にある通りの平民向けの牢で、思わず自嘲の笑みが零れる。
「そっか。もしかして、一度目に牢に入れられた時は、既に侯爵令嬢ではなかったのかもしれないわね」
薄汚い牢に入れられ笑う私を、騎士は気味悪そうに見ると素早く牢を出て行った。
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