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58.クロードと対面
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ケイトがケープを羽織らせ、髪を整えてくれた後、扉を開けに行った。
「クロード先生……?」
入ってきたのはクロード様だった。
筆頭魔術師のマントを羽織っている。
「……本当に目が、覚めたのか」
驚きに目を見張るクロード様に、私はなんとか頭を下げる。
「先生が助けてくださったのだと聞きました。本当に、ありがとうございます」
「あぁ、助けることができて、本当によかった……」
クロード様はベッドの隣に近づくと、ベッドの側にある椅子に座る。
「先生?」
「もう、先生ではないんだ。筆頭魔術師の地位に戻るに当たり、学園の教師の地位は返上した」
私が牢に入れられている間に、何が起きたのだろうか。
ケイトの説明ではその部分についての話はなかった。
「あの」
疑問に思う私を制し、クロード様が言う。
「ジュリアと、呼んで良いか?」
「もちろんです」
侯爵家を除名された私は、もう平民だ。
それ以外呼びようもないと思う。
そういえば、マティアス殿下は私は死んだことにされていると言っていたが、私はこれからどうなるのだろう。
「まずは謝罪を。助けるのが遅くなって申し訳なかった」
「いいえ。クロード様は本当に私を助けにきてくださいました。それに、私はクロード様の言葉があったから、頑張れたのです」
「そう言ってくれるのか? 一歩遅ければオレはジュリアを失っていたというのに」
拳を握りしめるクロード様の手に、私は自分の手を伸ばし重ねる。
「ジュリア?」
「よかったら、クロード様の話を聞かせてください。どうして、あの時第二王子殿下と共にいらっしゃったのか」
「だが、まだ体調が戻っていないだろう」
「たくさん寝たので、今は眠くないんです」
クロード様は困った様子でケイトを見るが、ケイトは私を止めるのは無理だという顔で首を振る。
「……体がつらくなったらすぐに言うんだ。それを約束できるのなら、話そう」
そうして、クロード様は話し始めた。
「ケイトからも聞いたと思うが、オレはバシュレ公爵家に毒を盛った侍女が匿われていることを突き止めた。だが、証拠はない。困っている時に、第二王子に声をかけられたんだ」
「面識がおありだったんですか?」
「筆頭魔術師をしていた頃にな。筆頭魔術師に戻って第二王子に忠誠を誓えば、ジュリアを助けてくれるっていうから、話に乗ったんだ」
「まだ、第一王子が私を貴族牢から連れ出す前の話ですよね?」
「あぁ。あの時点で、陛下達がどう思っていたのかはわからないが、第二王子はもう兄を見限っていたようだ。あんなのが王になっても、自分は支えるつもりはないと言い切っていた」
確かに、あの貴族牢で見た第二王子殿下は、かなり利発そうな印象だった。
「第一王子は、ジュリアに執着していた。それを良く思わないバシュレ公爵令嬢が何らかの形で動くだろうというのは簡単に想像がついた。こうまでうまく、第一王子まで巻き込んだ形で決着がつくとは思わなかったけどな」
クロード様の話は納得のいくもので、私は頷くと、気になっていたことを尋ねる。
「筆頭魔術師に戻られたということは、魔力はどうなさっているのですか?」
「今は魔石から補填している。だから、気にしなくて大丈夫だ。それに、考えていることがあるんだ」
「考えていること?」
「その時になったら、ジュリアにも協力を頼むつもりだ。だが、今日はそろそろ眠った方が良い。顔色が悪くなってきた」
クロード様に心配げに顔を見つめられ、私は頷いた。
「うん。それでいい。ケイト、後は頼むな」
「かしこまりました」
「ジュリア、では、また、明日も顔を見に来る」
クロード様は微笑むと再会を約束し、私は再び眠りに落ちた。
「クロード先生……?」
入ってきたのはクロード様だった。
筆頭魔術師のマントを羽織っている。
「……本当に目が、覚めたのか」
驚きに目を見張るクロード様に、私はなんとか頭を下げる。
「先生が助けてくださったのだと聞きました。本当に、ありがとうございます」
「あぁ、助けることができて、本当によかった……」
クロード様はベッドの隣に近づくと、ベッドの側にある椅子に座る。
「先生?」
「もう、先生ではないんだ。筆頭魔術師の地位に戻るに当たり、学園の教師の地位は返上した」
私が牢に入れられている間に、何が起きたのだろうか。
ケイトの説明ではその部分についての話はなかった。
「あの」
疑問に思う私を制し、クロード様が言う。
「ジュリアと、呼んで良いか?」
「もちろんです」
侯爵家を除名された私は、もう平民だ。
それ以外呼びようもないと思う。
そういえば、マティアス殿下は私は死んだことにされていると言っていたが、私はこれからどうなるのだろう。
「まずは謝罪を。助けるのが遅くなって申し訳なかった」
「いいえ。クロード様は本当に私を助けにきてくださいました。それに、私はクロード様の言葉があったから、頑張れたのです」
「そう言ってくれるのか? 一歩遅ければオレはジュリアを失っていたというのに」
拳を握りしめるクロード様の手に、私は自分の手を伸ばし重ねる。
「ジュリア?」
「よかったら、クロード様の話を聞かせてください。どうして、あの時第二王子殿下と共にいらっしゃったのか」
「だが、まだ体調が戻っていないだろう」
「たくさん寝たので、今は眠くないんです」
クロード様は困った様子でケイトを見るが、ケイトは私を止めるのは無理だという顔で首を振る。
「……体がつらくなったらすぐに言うんだ。それを約束できるのなら、話そう」
そうして、クロード様は話し始めた。
「ケイトからも聞いたと思うが、オレはバシュレ公爵家に毒を盛った侍女が匿われていることを突き止めた。だが、証拠はない。困っている時に、第二王子に声をかけられたんだ」
「面識がおありだったんですか?」
「筆頭魔術師をしていた頃にな。筆頭魔術師に戻って第二王子に忠誠を誓えば、ジュリアを助けてくれるっていうから、話に乗ったんだ」
「まだ、第一王子が私を貴族牢から連れ出す前の話ですよね?」
「あぁ。あの時点で、陛下達がどう思っていたのかはわからないが、第二王子はもう兄を見限っていたようだ。あんなのが王になっても、自分は支えるつもりはないと言い切っていた」
確かに、あの貴族牢で見た第二王子殿下は、かなり利発そうな印象だった。
「第一王子は、ジュリアに執着していた。それを良く思わないバシュレ公爵令嬢が何らかの形で動くだろうというのは簡単に想像がついた。こうまでうまく、第一王子まで巻き込んだ形で決着がつくとは思わなかったけどな」
クロード様の話は納得のいくもので、私は頷くと、気になっていたことを尋ねる。
「筆頭魔術師に戻られたということは、魔力はどうなさっているのですか?」
「今は魔石から補填している。だから、気にしなくて大丈夫だ。それに、考えていることがあるんだ」
「考えていること?」
「その時になったら、ジュリアにも協力を頼むつもりだ。だが、今日はそろそろ眠った方が良い。顔色が悪くなってきた」
クロード様に心配げに顔を見つめられ、私は頷いた。
「うん。それでいい。ケイト、後は頼むな」
「かしこまりました」
「ジュリア、では、また、明日も顔を見に来る」
クロード様は微笑むと再会を約束し、私は再び眠りに落ちた。
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