37 / 65
三十七.生贄娘、デートに行く三
しおりを挟む
「かわいい……」
再び大通りを歩きながら、香世は白麗にもう一度、飴細工の礼を伝えた。
「白麗様、ありがとうございます」
「香世が喜んでくれているようでよかった。それに、前から頼んでみたかったのだ。でも私一人では頼みづらくてな」
本当だろうか。白麗の顔を見上げるが、表情からは読み取れない。
「すぐに食べるか?」
白麗に尋ねられ、香世は首を横に振った。
「日持ちがすると聞きましたし、持って帰って、楓さんと桜さんに見せてからでもいいですか」
「構わんよ。二人も喜ぶだろう」
「どんな反応をしてくれるでしょうか」
「喜ぶだろうな」
そんな話をしながらしばらく行くと、今度は白麗は櫛や簪を扱う店に目を留めた。
「あちらにも寄っていいか?」
香世が頷くと、露天に向かう。
並んでいる商品はどれも高級そうである。
白麗のように、獣の姿を持つ神のためか、香世が白麗の毛繕いに使っている物と同じ形の櫛なども取り扱っているようだ。
(新しい物を購入されるのかしら)
一瞬、そう思った香世だったが、白麗が手に取ったのは女性向けの櫛だった。
すかさず店主が声をかける。
「旦那、奥方に贈り物かい?」
「そうだ」
「なら、こっちはどうだい? 同じ柄で簪もあるから、おすすめだよ」
「ほう」
差しだされたのは漆塗りの櫛で、螺鈿細工の花の文様が美しく彫られている。店主が勧めるように、同じ柄で簪もあった。簪の方は、縁に真珠の飾りが付いていて、その色が白麗の髪色と少し似ていた。
白麗は、簪を香世の頭に翳し、満足げな表情だ。
「確かに香世に似合うな」
白麗は並べられた他の櫛や簪にも目を走らせたが、他に気になるものはないようだ。
「うん。これが一番いいようだな。香世はどう思う?」
「美しいと思いますが、もう今日は買ってもらいすぎだと思います」
そう言うと、白麗は驚いたように首を振った。
「そんなことはない。本当は着物から一式揃えるつもりだったのだ。だが、それは香世に嫌がられるだろうと、楓と桜に止められて我慢しておるのだぞ」
「一式は、流石に」
「ということで、店主、こちらを頼む」
「毎度あり」
恐縮する香世に、白麗はさっさと店主に包むように伝えてしまう。
「屋敷に戻ったら渡すから、明日から使って欲しい」
「大事に使います」
「早く香世が身に付けている姿を見たいものだな」
白麗は受け取った包みを懐にしまうと、再び香世の手を繋いだ。
「他に見たい物は?」
「ありません」
「なら、そろそろ引き返そうか」
今度は通ってきた道の反対側の露天を見ながら、帰り道を歩いた。
再び大通りを歩きながら、香世は白麗にもう一度、飴細工の礼を伝えた。
「白麗様、ありがとうございます」
「香世が喜んでくれているようでよかった。それに、前から頼んでみたかったのだ。でも私一人では頼みづらくてな」
本当だろうか。白麗の顔を見上げるが、表情からは読み取れない。
「すぐに食べるか?」
白麗に尋ねられ、香世は首を横に振った。
「日持ちがすると聞きましたし、持って帰って、楓さんと桜さんに見せてからでもいいですか」
「構わんよ。二人も喜ぶだろう」
「どんな反応をしてくれるでしょうか」
「喜ぶだろうな」
そんな話をしながらしばらく行くと、今度は白麗は櫛や簪を扱う店に目を留めた。
「あちらにも寄っていいか?」
香世が頷くと、露天に向かう。
並んでいる商品はどれも高級そうである。
白麗のように、獣の姿を持つ神のためか、香世が白麗の毛繕いに使っている物と同じ形の櫛なども取り扱っているようだ。
(新しい物を購入されるのかしら)
一瞬、そう思った香世だったが、白麗が手に取ったのは女性向けの櫛だった。
すかさず店主が声をかける。
「旦那、奥方に贈り物かい?」
「そうだ」
「なら、こっちはどうだい? 同じ柄で簪もあるから、おすすめだよ」
「ほう」
差しだされたのは漆塗りの櫛で、螺鈿細工の花の文様が美しく彫られている。店主が勧めるように、同じ柄で簪もあった。簪の方は、縁に真珠の飾りが付いていて、その色が白麗の髪色と少し似ていた。
白麗は、簪を香世の頭に翳し、満足げな表情だ。
「確かに香世に似合うな」
白麗は並べられた他の櫛や簪にも目を走らせたが、他に気になるものはないようだ。
「うん。これが一番いいようだな。香世はどう思う?」
「美しいと思いますが、もう今日は買ってもらいすぎだと思います」
そう言うと、白麗は驚いたように首を振った。
「そんなことはない。本当は着物から一式揃えるつもりだったのだ。だが、それは香世に嫌がられるだろうと、楓と桜に止められて我慢しておるのだぞ」
「一式は、流石に」
「ということで、店主、こちらを頼む」
「毎度あり」
恐縮する香世に、白麗はさっさと店主に包むように伝えてしまう。
「屋敷に戻ったら渡すから、明日から使って欲しい」
「大事に使います」
「早く香世が身に付けている姿を見たいものだな」
白麗は受け取った包みを懐にしまうと、再び香世の手を繋いだ。
「他に見たい物は?」
「ありません」
「なら、そろそろ引き返そうか」
今度は通ってきた道の反対側の露天を見ながら、帰り道を歩いた。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる