【完結】生贄娘と呪われ神の契約婚

乙原ゆん

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四十四.生贄娘、紫水に教わる二

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「まず、今日から香世殿に教えようと思っているのは、扱いが難しい薬草や薬の知識だ。私の屋敷から持ち出しを禁じている薬草や、そういった薬草について書かれた書物も見てもらうことになる」
「図鑑など、空いた時間に書き写させていただきたいと思っていたのですが、難しいでしょうか」

 香世が尋ねると、紫水は頷く。

「全部はできないと思って欲しい。だが、手元にあった方が良い本というものもある。そちらは、むしろ積極的に写してもらいたい。書名については後で連絡しよう。それに、書庫にはおそらく香世殿が想像している以上に薬の本がある。だから、どのみち全部写すことは難しいと思う」
「わかりました」

 香世が頷くと紫水は言う。

「では、まずはここで保管している薬を一つずつ見ていこう。ちなみに、この作業場に置いている薬の類いは、触っても問題ない。劇物扱いの薬は専用の倉にしまってあるから安心してほしい」

 そうして、紫水はここで保管しているという薬を一つ一つ実物を見せながら説明してくれた。その中には薬草の生育地が遠く、香世が見たことがない物もあり、大変有意義な時間だった。
 気が付くと、紫水の眷属の一人が紫水と香世を呼びにやってきた。

「失礼いたします。そろそろ昼餉のお時間です」

 紫水も、香世もお互いに時間を忘れて熱中していたようだ。

「わかった。では、香世殿。続きは明日話そう。午後からは、眷属に書庫を案内するように言っておく。どれを見てもらっても問題ない」

 香世が頷くと、紫水は置いてある帳面を一枚破り、何かを書き付ける。
 そちらは本の題名のようだ。

「この本は、おそらく香世殿の役に立つだろう。それに書き写す分にも問題ない」
「お気遣いありがとうございます」

 紙を受け取り、持ってきていた帳面と共にしまうと紫水が立ち上がる。

「では、行こうか」

 待っていた眷属と共に、昼餉に向かった。


 白麗と砥青は朝と同じ場所に座り、香世達を待っていた。
 その白麗は朝より大分くたびれているように見える。
 何があったのだろうと思うも、すぐに昨日の砥青の言葉が蘇った。
 紫水様の眷属の方に根堀り葉堀り聞かれるだろうとおっしゃっていたから、そのせいかもしれない。

「白麗様、その、お疲れですか……?」

 言葉を選んで尋ねると、白麗は頷いた。

「うむ。紫水の眷属に色々と話を聞かれ答えていただけなのだが、覚悟はしていたが、流石、紫水の眷属と言ったところだった」
「ほほう、どういう意味だ?」

 紫水の言葉に、白麗は気まずげに視線をそらす。

「真面目で、どんな些細なことも聞き漏らさないしっかり者だ」
「つまりは、細かい上にしつこく話を聞かれたということだな」

 うんうんと頷く紫水に、白麗は溜息を吐く。

「せっかく、良い風に言ったというのに」
「そんな気遣いができるようになるとは、奥方の存在は偉大だな」
「紫水に気を遣っていなかっただけで前から気遣いはできたわっ」

 言い合う二人に、砥青が肩をすくめて言う。

「まぁまぁ、昼餉も準備ができたようですから、そのくらいで」

 はっとして、固まっている香世を見て紫水が微笑む。

「そうだな、食べようか。どうぞ、召し上がってくれ」

 昨日も思ったが、白麗と紫水は随分と打ち解けた関係のようだ。
 香世は少し羨ましく思いながらも昼餉に箸をつけた。
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