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第1章~変化~

不安

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目の前が光り輝き目を細める。徐々に慣れていき目を開けるとそこには何者かわからない
何かのシルエットだけが認識できる。そのシルエットが呟く。
「あなたはどんな困難にも負けず乗り越えられるでしょう。しかし、20XX年●月●日、あなたは死にます。」
――――――いつものようにここで目が覚める。最近よく夢やふとした瞬間に見るものだ。
いつも寿命を宣告されて目が覚める。この映像は一体何なのか…。

日本が支配されたといっても、まだ逃げ道はいくつかあった。賢い人間は目をつけられないように
こそこそ隠れながら暮らしていた。そして街の中心部から少し離れた汚いビル街の路地裏で2人の青年が密談をしていた。「おい倉敷、お前どう思うよ。謎の生物ってあいつら何者だ?」
「ん?あぁ、そうだなぁ。まだ何にもわからないけど、なんかちょっと変だよな。」
倉敷が質問に曖昧な返事をする。「逆にお前はどう考えてるんだよ佐伯。」倉敷が質問をそのまま返す。
「俺も違和感は感じてる。」佐伯は顎に手を当て考え込む様子で答える。
「だよな。確かに日本は支配されたけど、俺ら別に奴隷と化してひたすら働かされるとかそういうの無いもんな。」「あぁ、一体何がしたいんだあいつら。」最近の佐伯と倉敷はこの路地裏に集合しては謎の生物について考察していた。「しかも、ご機嫌取りすれば暮らしがどんどん豊かになるしな。」「そこなんだよな。侵略しに来たってこと以外、特に何もしてこないよな。」「あぁ、こっちが指示に従っていればな。」今日も2人は謎の生物の正体、目的、あらゆる疑問を話していた。佐伯は先程同様に、顎に手を当て俯く。倉敷は逆に両手を地面に付き、
背中を反らし空を見上げる。お互い考え込み沈黙が続く。5分くらいの沈黙の後、口を開いたのは佐伯だった。
「やっぱり、1か月前のあれが関係してんじゃね―の?」倉敷が空を見上げたまま答える。
「んあー、あれが起きてからだもんな。謎の生物が現れたの。」また沈黙になる。が、また沈黙を破ったのは
佐伯だった。「なあ、現場にいってみるか?」倉敷は上体をお越し驚きを隠せない表情で佐伯を見る。
「本気で言ってんのかよ。」「当たり前だろ。このまま今の暮らしがずっと続くなんて俺は嫌だし、
何とかしようぜ。俺らが日本を取り返すんだよ!」佐伯は謎の生物に支配された生活を1か月体験し、
見せしめもしっかりその目で見た。それでも反抗する考えでいるらしい。「・・・。」倉敷から返事は返ってこない。佐伯はなんとか説得しようともう一度口を開こうとしたその時、「俺ら、ガキの頃からずっと一緒だったよな。」倉敷が口を開く。この一言で佐伯はニヤついた。幼馴染だからか何かを察したようだ。
倉敷がまた口を開く。「で、お前あれの場所どこかわかってんの?」「ざっくりとな。」佐伯はざっくりなのに何故か自信満々の様子で答えた。「まぁ、ネットで調べれば細かい情報も出てくんだろ。」
「そうだな。ずっとどこの局もそのニュースを取り上げっぱなしだったもんな。
あ、そういえばさ、そのニュースの前日に放送されてたんだけど・・・」倉敷が少し渋い顔をして話そうとしている
内容を何とか思い出している「ん?なんだよ。」佐伯は気になって倉敷を急かす。
「んーっと、なんかさSNSで人探しする人が急増してるとかで、なんでも居なくなったって言われてるのがゲイとかレズの人達ばっかりなんだってよ。」「なんだそれ。新手のいたずらか?」佐伯のツッコミを無視して倉敷が続ける。「ネットでは『LGBT失踪事件』とかって言われてるらしいよ。」
「へー、知らなかったな。で、誰一人として見つかってないのかよ?」「あぁ、まだ誰も見つかったって話は聞いたことがない。」「てか、失踪とか言われるとそれも深刻な話ではあるけど、話ズレすぎだろ!」佐伯がツッコむ。「ぷっ、、、ごめんごめん。なんかちょっと今思い出しちゃったからつい。」倉敷が佐伯のツッコミに少し吹き出しながら謝る。「んじゃ、今夜詳しい位置を調べといて明日さっそく現場行ってみるか。」
佐伯がそういうと、倉敷は無言で頷く。そして好奇心でわくわくしているのか、2人は顔を見合わせてお互い小さく笑った。

『この世にはLGBTと呼ばれる人たちがいる。女性同性愛者・男性同性愛者・両性愛者・性別越境者。
これらの英単語の頭文字をとった単語で、性的少数者の総称のひとつである。』

翌日、2人は軍手やショベルなど、それっぽい道具を揃えて早朝から待ち合わせ場所で合流。
さっそく目的地へと向かう。・・・つもりがいきなり出鼻を挫かれた。どうやら謎の生物が散歩をしていたらしい。「ちょっとそこのお2人さん、そんな格好してこんな朝早くにどこへ行くの?」当然話しかけられる。
(まずい…。素直にお前らから日本を取り戻すためになんて言えないし、でも格好は普通じゃないし…。)
佐伯が苦い顔をした。こういう時に機転が利くのは倉敷だった。
「あ、おはようございます。今日は天気もいいですし、これから2人で山でも登って山菜を採ってこようとおもいまして。」満面の笑みで愛想よく振る舞う。(おっ、さすが倉敷!頼りになるなぁ。)佐伯はホッとし、心の中で呟く。「あら、そうなの。じゃあ今日あなたたちが採ってきた山菜で私が夕飯をご馳走してあげるわ。」2人が違和感を
抱くのはこういうところだ。国を支配して、人間より上の立場にいるのにも関わらず、食事を振る舞うとは。
当然2人は断りたい。しかし、断れば気分を損ねて評価が下がってしまう。これが自由なようで自由ではない暮らしの実態だ。決して無茶なおねだりはしてこない代わりに、言われたことには必ず従わなければならない。
「わかりました。では、何時頃にどちらへ向かえばよいでしょうか?」倉敷が謎の生物との会話を続ける。
佐伯は沈黙したまま状況が悪化しないことだけを願うばかりだった。
「そうねぇ、料理の時間もあるし16時頃ここに集合にしましょうか。」佐伯の顔が歪む。
現在朝の7時、目的地までは片道3時間かかる。往復で6時間。ということは、3時間程度しか時間は残されていないうえに、その中でそれなりに山菜を採らなくてはいけない。となるとかなり時間がない。
佐伯は頭の中でひたすら焦るだけだった。「あ、あの…」焦った頭で佐伯は何か言おうとした。
それを遮ったのは倉敷だった。「すみません。私たちは気分屋でして登山素人ですし山菜にも詳しくないにも
かかわらず、急遽山菜でも採りに行こうとなったものですから、たくさん採るのにそれなりに時間がかかってしまいますし、慣れない遠出をするものですから、もう少し時間をいただけませんか。20時頃はどうでしょうか?」
あくまで下からの姿勢を崩さず交渉に出る。(さすが倉敷!)佐伯は感心するしかなかった。
「だめです。20時に集まってそれから食事の準備なんていくらなんでも遅すぎるわ!」 非常識な提案だ!
と言わんばかりに、強めに否定してきた謎の生物。(おいおいおいおい、なんか怒ってるぞ。大丈夫か?)
再び脳内で慌てる佐伯。昨日はあんなに強気で謎の生物から日本を取り返すなんて堂々宣言したくせに、
肝心な場面では感情の起伏が激しく、すぐに不安に煽られる。
「失礼しました。しかし、我々も折角招待していただくので、山を登った汗だくの格好でお会いすることはできませんので、一度自宅に帰り身支度を整えてからここへ来たいと思います。なので少し遅いですが18時ではどうでしょうか。」「んー、そうね。少し遅いけどあなたの言うこともわかるわ。じゃあ18時にここに集合にしましょう。」何とか2時間延長できた。「では、さっそく山菜を採ってきますので失礼します。」倉敷が頭を下げると少し遅れて佐伯も頭を下げる。「楽しみにしてるわ。」謎の生物はそう言い残してその場を去っていく。
「ふぅ~、危なかったぁ。」佐伯がようやくまともに声を出す。「おい、倉敷危なかったな。危うくキレられるとこ
だったぞ。」何もできなかった佐伯が倉敷に文句を言う。
「わざとだよ。あえて最初に遅すぎる時間を提案することで、2回目に提示した時間が早く感じるように錯覚させ
たんだ。さらに相手を敬っていることのアピールも忘れずにな。」倉敷は冷静に語る。
「え?あ、一回家に帰ってってやつか!じゃあ、全部お前の計算通りかよ!俺ヒヤヒヤしてたぞ。」佐伯は倉敷に
感服するしかなかった。「そんなことよりさっさと行こうぜ。時間は限られてるからな。」「おう。」
2人は街を出て行った。目的地へ向かってからは何事もなく歩みを進め、無事現地へ着いた。
日本を支配されたといっても、むやみやたらにそこら中にいるというわけではないようだ。
「何も問題なく来れたおかげで2時間半で着いたな。」佐伯が額の汗を拭いながら言う。
「あぁ、まずはある程度先に山菜を集めるか。山菜なら軽いし後で重い物背負いながら時間に追われるよりいいだろ。本来の目的はまた来ようと思えば来られるし。」佐伯につられたかのように額の汗を拭いながら倉敷は答える。
「そうだな。先に問題を片付けておこう。」2人は予定にない山菜取りを始めた。
「ふぅ~、これだけあればいいだろう。」そういうと、倉敷がちょうどいい高さの岩に腰を掛けて水を飲む。
「んじゃ、ちょっと休んだら本来の目的に移行するか。」佐伯も疲れていないわけではないが、好奇心が勝って
早く行きたいようだ。「30分くらい休んで11時から向かおう。」倉敷はすでにわりとヘトヘトのようだ。
「OK!」佐伯が軽く答える。そして11時ちょうどに動きはじめる。歩いて10分ほどで一気に景色が変わった。外観は完全に森林だったのに、今目の前にある景色は瓦礫だらけの荒れ地と化していた。
「な、なんだこれは・・・。」2人は唖然とする。

そして、佐伯の脳内でまた再生される不思議な映像。
目の前が光り輝き目を細める。徐々に慣れていき目を開けるとそこには何者かわからない
何かのシルエットだけが認識できる。そのシルエットが呟く。
「あなたはどんな困難にも負けず乗り越えられるでしょう。しかし、20XX年●月●日、あなたは死にます。」
――――――いつものようにここで目が覚める。最近よく夢やふとした瞬間に見るものだ。
いつも寿命を宣告されて目が覚める。この映像は一体何なのか…。
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