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第2章~黎明~
崖っぷちからの脱出
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今いる位置がちょうど森林と荒地の境目。しかしそこは荒地から森林への入り口ではなく、
森林の中に存在する荒地。中央には瓦礫の山があり、辺りにも瓦礫は散乱している。
まるで隕石が落ちてきたと言わんばかりの巨大なクレーターとなっていた。現在時刻は12時。
帰りは疲弊していることも加味し、3時間近くかかるとして、約3時間は調査できそうだ。
「ここが天才科学者・桂城大の研究所か。こんなことになる前に一度くらい研究所を覗いてみたかったな・・・。」倉敷は少しさみしそうな顔をする。「ふー…よし、降りよう。」佐伯は倉敷の言葉には反応せず一呼吸してから言う。倉敷は黙って頷き、クレーターの急斜面を降りる。最下部まで降りてから頭上を見上げて倉敷は言った。
「かなりの急斜面だったな。これ降りるのは簡単だけど、登れるのか?」「大丈夫だよ。」佐伯は自信なさげな顔をしながらも強がった。「まあ、降りちまったし、物色しようぜ。」佐伯は切り替えて瓦礫の山へ向かう。
倉敷も佐伯に続く。「うっ・・・。」2人は思わず口を手で覆う。何とも表現しがたい特殊な臭いがした。
単純に臭いという表現だけでは足らない、何か吸ってはいけないような異様さを感じる臭いだ。
2人はマスクをして手袋もつけ探索を開始する。
1時間ほど経っただろうか。2人は既にヘトヘトになっていた。瓦礫の山となっていた研究所を調査するにはまず、爆発で崩れ去ったこの数々の瓦礫を退かすことからだった。「さすがに1時間も瓦礫の排除なんてしてたら腰がやばいな。」佐伯はわずかに見える床に座り込む。それをちらっと横目で確認した倉敷も瓦礫に腰掛ける。
「桂城が何してたかはわからないけど、資料系はほぼ灰になってるよな。」
「あぁ、なんか見つかるといいんだけど。そもそも謎の生物と関連してるかまだ分からないしね。」休憩がてら
雑談をしていた2人。瓦礫の座り心地が悪かったのか、倉敷が一度立ち上がろうとした。
「よっこらせ…う、うわっ!!」バタンッ!ガラガラガラガラ…。「いてててて…。」「おい、大丈夫かよ。」
佐伯は心配した様子で倉敷の顔を覗き込む。「あぁ、なんとか大丈夫そうだ。」倉敷は佐伯が差しのべた手を掴み
立ち上がる。すると、カランカランと微かに音が鳴る。音は足元付近で聞こえた。
「なんだその丸いの。」見つけたのは佐伯だった。「え?」倉敷からはちょうど瓦礫の陰に隠れているような場所にあり未だに見えていない。佐伯は屈みそれを拾う。それはボーリングの玉ほどの大きさで透明の容器。
材質はわからないが、とても軽いにもかかわらずこの瓦礫の下に埋もれていながら全く傷がついていない頑丈なものだった。その透明の容器の中には、丸みを帯びたとても小さい青白い光が5つ不規則な動きを続けており、
容器の壁面に衝突しては角度が変わりまた壁面へと衝突を繰り返していた。その5つの青白い光自体はどれも衝突することなく、絶妙な動きをしている。それには2人が惹きつけられる何かがあった。
佐伯も倉敷も無言でその球体の中の青白い光の様子に見入っていた。その青白い光は最初は気付かなかったが、
壁面に衝突し跳ね返るたび徐々に移動速度が増しているようにも感じられた。
いや、確実に速くなっていた。スピードが上がるということは、壁面への衝撃なども強くなり響く音もだんだんと
大きくなる。尚も見守り続ける2人の片眉がクイッと上がる。ピキピキ!ついに透明の容器が衝突を繰り返す5つの青白い光により耐久度が低下しヒビが入ってしまう。そのヒビはやがて大きな亀裂へと変わる。
バキバキッ!!もはや青白い光の動きは目で追えないほどの俊敏な動きになっていた。「倉敷、これやばいぞ。」
これは感覚の話だ。倉敷は当然、やばいぞといった佐伯自身にも何がやばいのか、わかっていなかった。
パリン!容器の一部が欠けた。その隙間から1つの青白い光が飛び出した!「あっ・・・」倉敷は呆然とするだけだった。しかし、こういう時に咄嗟の判断で動き出せるのが佐伯だった。
両手を広げ飛び出した青白い光を包み込む。バリン!!瓦礫の下敷きになっても割れなかった頑丈な容器も大きな
亀裂が入り、欠けている部分もあればそれは脆いものだった。佐伯が飛び出した1つの青白い光を掴み取るのに夢中になり、容器を下に落としてしまったのだ。「倉敷!!・・・。」佐伯は名前を呼ぶことで精一杯だった。
高速で動き回る青白い光を捕まえてくれ!なんて言い切る時間はなかった。
それでも倉敷は名前を呼ばれただけで体が動いた。伊達に幼馴染をやってきたわけではない。意思の疎通が完璧だ。しかし、それでも当然倉敷1人で残りの4つの青白い光を捕まえることなどできはしない。「くそ!」倉敷は小さく一言呟き1つ捕まえることしかできなかった。残りの3つは空高く舞い、そのあと3つの青白い光が衝突し、
それぞれ3方向にバラバラに散らばっていった。
シュンシュンシュンシュン―――――。青白い光は掌をぐるぐると回り続けている。
やがてその距離は近づいていき、掌に吸収されていく。しかし、2人の身体に異変はない。
「・・・。一体なんだったんだ。」倉敷が呟く。佐伯は無言のまま立ち尽くしている。
飛び散っていった3つの光は当然ながら、2人が抑えた2つの光も掌に吸収されて無くなっていった。
覚悟はしていたが、ここに来てからというもののあまりにも情報量が多くて全く処理できない状態だ。
完全にパニックになっている。「まぁ、考えてもわからないもんはわからねーわな。」「そうだな。続きやろうぜ。」「おう。」固まっていた2人だが、佐伯の切り替えの良さにまた作業を再開した。
しかし、頭の中にどーんとどでかい印象を残した青白い光。なんせ5つの内、2つは2人の体内に吸収されてしまったのだ。それか何かわからない怖さ。そして、もともと2人は謎の生物との関連性があるとみてここへ来ている。
自然と2人の頭の中には、あの青白い光が謎の生物になる要素で自分たちも何かの拍子に奴らのようになるのではないかと不安な気持ちに駆られていた。そんな上の空で作業はまるで自ら危険を呼び寄せるようなものだ・・・。「ん?なんだこれ・・・。」倉敷はそれに何かを感じたが、正直その感覚がなんなのかさっぱりわからないし、
燃えたときの煤などでよく見えない部分も多いため役には立たない思い、佐伯には何も言わずなんとなくポケットに仕舞い込んだ。「なぁ、倉敷~、瓦礫も大体片付いたな。」「あぁ、俺の方は後このでかいのを退かすことができればって感じなんだけど、これがでかすぎて動かないんだ。」「おぉ、それはちょっと厄介だな~。」瓦礫をおおかた片し終えたところで2人は会話をする。今日はもう疲れたし、終わろうといった雰囲気だ。
気付けば研究所の床がだいたい見えるようになっている。少し離れているから2人は少し声を張って会話をしている。「ところで、佐伯の方はなんか見つかったか?」「特になにも~。瓦礫片すの優先にしてたからな。でも、これで次来たときは調査に専念できそうだ。」「そうか。俺も今回はこれといって有力な情報はなかったよ。」どうやら2人とも収穫はなかったようだ。「あとは、お前の後ろにあるでかい瓦礫だけ何とか退かしたいな。」
「あぁ、これな。」倉敷は後ろを振り返る。その時、「あっ!!」佐伯が大声を出す。
「うわっ!」ドンッ、その声に驚き倉敷は足元の瓦礫に躓き大きな瓦礫に寄り掛かる。
「なんだよ佐伯~、急に大声なんか出して。」倉敷は体勢を立て直し、佐伯の方を向き文句を言う。
「倉敷、やばいぞ。・・・時間。」「・・・。え?」倉敷は佐伯に言われ時間を確認する。
現在の時刻16時40分。散々動き回り疲弊したこの状態で、来る時より早くなんて確実に無理な話だ。
2人の顔が青ざめる。夢中で・・・いや、上の空で作業していたことで、時間のことを2人ともすっかり忘れてしまっていたのだ。「確実に間に合わないな。どうするよ。」「やばいなぁ。」
グラ・・・、グラッグラッ・・・グラ~ングラ~ン・・・。
ただでさえ疲れで足もおぼつかないこの状況に叩きつけられた時間の現実。
「ははは・・・。」倉敷は力のない声で笑う。顔は青ざめたままで。そして佐伯の顔も当然青ざめていた。が、
それは時間ではなくその青ざめている別の原因をしっかり目で捉えていた。「お、おお、おい。倉敷!逃げろ!!」佐伯は叫ぶ。「え?」倉敷は状況がわかっていない。「逃げるってなん・・・。」倉敷はそう言いかけたとき、
自分が何大きな影に覆われているのがわかった。
大きすぎて唯一退かせなかった巨大な瓦礫が倉敷をぺちゃんこ潰す勢いで倒れてきた。
「倉敷!!!」佐伯は助けたい気持ちはあるが初動が遅かった。助けられる位置にはいなかった。
「くっ!ちくしょー!」倉敷は2、3歩前に踏み出し悪あがきともいえる程度のジャンプした。
何が悪あがきかって、佐伯から見た倉敷はジャンプしたところで全然巨大な瓦礫の範疇に居たのだ。
佐伯は思わず目を閉じて現実から目を逸らす。(倉敷!!悪い!!)もはや声に出す余裕もなく心の中で謝罪するだけだった・・・。
ガッシャーン!!!ガラガラガラ、ドンッドンッドンッ!・・・パラパラパラ・・・。
盛大に倒れてきた巨大な瓦礫は、これまた盛大な音を響かせその衝撃で粉々に砕け散る。
音が止んでも暫く佐伯は目を開けられなかった。悲惨な目の前の現実を受け入れる勇気がなかった。
そのまま地面に崩れ落ち、下を向いたまま少しだけ目を開く。その瞬間、堪えていた涙が溢れ出し床が濡れていく。佐伯はゆっくり少しずつ目線をあげていき、倒れた瓦礫の方に視線を向ける。まだ微かに煙が舞っており、
倉敷の姿は確認できない。「倉敷・・・。くっ。」佐伯はもう何も考えられなくなっていた。
「あっはっはっはっ!!佐伯なに変な顔して泣いてんだよ!」佐伯は依然として涙を流しながら目を丸くする。
目の前の煙はいつの間にか消え去り視界良好になっているが、倉敷の姿は見当たらない。
「おーい、佐伯!上だよ上!」佐伯は聞こえる倉敷らしき声のいうことを信じそのまま頭上を見上げる。
「く、倉敷!!」なんとそこには空中浮遊している倉敷の姿があった。「え・・・?倉・・・敷・・・。」
佐伯は今視界に入っている状況が理解できない。それはそうだ。倉敷が空を飛んでいるのだ。
ぽかーんとしている佐伯のもとへ倉敷が降りてくる。「俺もびっくりしたよ。」倉敷は佐伯の唖然とした顔を見ながら話す。「これは終わったと思いながらも、死にたくないから目を閉じて我武者羅に飛んだらそのまま空飛べちゃってさ、何とか助かったよ。なんだこれ。すげーよ。」佐伯は何も返事を返さない。そしていつの間にか泣き止んでいた涙がまた溢れ出す。そして小さな声でポツリ呟く。「よかった・・・。」
倉敷の生存を確認してから2人は少し話し合った。2人の見解はごく自然といえるだろう。
寧ろ他の理由が思いつかない。そうあの青白い光だ。あれを吸収したことにより、倉敷は飛べるようになったと考えた。そこでいろいろと試したが、どうやら倉敷は飛ぶこと以外は何もできなかった。
そして同じく青白い光を吸収した佐伯に関しては空を飛ぶことすらできなかった。そこで導き出した答えは、
5つの青白い光にはそれぞれ何かしらの能力が備わっており、それが倉敷は空を飛べる能力だったのだ。
そして佐伯に関しては、未だになんの能力かわかっていないが、何かしらの力を得たのだろう。
その答えもこの研究所のどこかに答えがあるのだろうが、もう探している時間はない。
2人は空を飛べる倉敷の能力を使い、急いで街へと帰っていった。倉敷もまだ完全に能力を使いこなせているわけではないが、高度や速度をそれなりに使い、誰にも空を飛んでいる姿を見られず街へ到着した。
2人はすぐに身支度を整え18時に無事、集合場所へ集まる。
「あらぁ、2人ともちゃんといるわね。たくさんとれたかしら?」謎の生物が来た。
「えぇ、思ったより収穫が多くて本日はとても楽しみです。」謎の生物との会話は基本的に倉敷に任せている。
「そう、それは楽しみだわ。ではさっそく行きましょう。」2人は謎の生物についていく。
その後、佐伯はなるべく静かに粗相のないように振る舞い、謎の生物の対応は倉敷がうまく対応し、
無事食事会を終えた。「2人とも今日はありがとうね。とてもおいしい山菜だったわ。」
「いえ、こちらこそこのような素敵な食事会に招待していただきありがとうございました。」
社交辞令を済ませ2人は退散する。「それでは失礼します。」
森林の中に存在する荒地。中央には瓦礫の山があり、辺りにも瓦礫は散乱している。
まるで隕石が落ちてきたと言わんばかりの巨大なクレーターとなっていた。現在時刻は12時。
帰りは疲弊していることも加味し、3時間近くかかるとして、約3時間は調査できそうだ。
「ここが天才科学者・桂城大の研究所か。こんなことになる前に一度くらい研究所を覗いてみたかったな・・・。」倉敷は少しさみしそうな顔をする。「ふー…よし、降りよう。」佐伯は倉敷の言葉には反応せず一呼吸してから言う。倉敷は黙って頷き、クレーターの急斜面を降りる。最下部まで降りてから頭上を見上げて倉敷は言った。
「かなりの急斜面だったな。これ降りるのは簡単だけど、登れるのか?」「大丈夫だよ。」佐伯は自信なさげな顔をしながらも強がった。「まあ、降りちまったし、物色しようぜ。」佐伯は切り替えて瓦礫の山へ向かう。
倉敷も佐伯に続く。「うっ・・・。」2人は思わず口を手で覆う。何とも表現しがたい特殊な臭いがした。
単純に臭いという表現だけでは足らない、何か吸ってはいけないような異様さを感じる臭いだ。
2人はマスクをして手袋もつけ探索を開始する。
1時間ほど経っただろうか。2人は既にヘトヘトになっていた。瓦礫の山となっていた研究所を調査するにはまず、爆発で崩れ去ったこの数々の瓦礫を退かすことからだった。「さすがに1時間も瓦礫の排除なんてしてたら腰がやばいな。」佐伯はわずかに見える床に座り込む。それをちらっと横目で確認した倉敷も瓦礫に腰掛ける。
「桂城が何してたかはわからないけど、資料系はほぼ灰になってるよな。」
「あぁ、なんか見つかるといいんだけど。そもそも謎の生物と関連してるかまだ分からないしね。」休憩がてら
雑談をしていた2人。瓦礫の座り心地が悪かったのか、倉敷が一度立ち上がろうとした。
「よっこらせ…う、うわっ!!」バタンッ!ガラガラガラガラ…。「いてててて…。」「おい、大丈夫かよ。」
佐伯は心配した様子で倉敷の顔を覗き込む。「あぁ、なんとか大丈夫そうだ。」倉敷は佐伯が差しのべた手を掴み
立ち上がる。すると、カランカランと微かに音が鳴る。音は足元付近で聞こえた。
「なんだその丸いの。」見つけたのは佐伯だった。「え?」倉敷からはちょうど瓦礫の陰に隠れているような場所にあり未だに見えていない。佐伯は屈みそれを拾う。それはボーリングの玉ほどの大きさで透明の容器。
材質はわからないが、とても軽いにもかかわらずこの瓦礫の下に埋もれていながら全く傷がついていない頑丈なものだった。その透明の容器の中には、丸みを帯びたとても小さい青白い光が5つ不規則な動きを続けており、
容器の壁面に衝突しては角度が変わりまた壁面へと衝突を繰り返していた。その5つの青白い光自体はどれも衝突することなく、絶妙な動きをしている。それには2人が惹きつけられる何かがあった。
佐伯も倉敷も無言でその球体の中の青白い光の様子に見入っていた。その青白い光は最初は気付かなかったが、
壁面に衝突し跳ね返るたび徐々に移動速度が増しているようにも感じられた。
いや、確実に速くなっていた。スピードが上がるということは、壁面への衝撃なども強くなり響く音もだんだんと
大きくなる。尚も見守り続ける2人の片眉がクイッと上がる。ピキピキ!ついに透明の容器が衝突を繰り返す5つの青白い光により耐久度が低下しヒビが入ってしまう。そのヒビはやがて大きな亀裂へと変わる。
バキバキッ!!もはや青白い光の動きは目で追えないほどの俊敏な動きになっていた。「倉敷、これやばいぞ。」
これは感覚の話だ。倉敷は当然、やばいぞといった佐伯自身にも何がやばいのか、わかっていなかった。
パリン!容器の一部が欠けた。その隙間から1つの青白い光が飛び出した!「あっ・・・」倉敷は呆然とするだけだった。しかし、こういう時に咄嗟の判断で動き出せるのが佐伯だった。
両手を広げ飛び出した青白い光を包み込む。バリン!!瓦礫の下敷きになっても割れなかった頑丈な容器も大きな
亀裂が入り、欠けている部分もあればそれは脆いものだった。佐伯が飛び出した1つの青白い光を掴み取るのに夢中になり、容器を下に落としてしまったのだ。「倉敷!!・・・。」佐伯は名前を呼ぶことで精一杯だった。
高速で動き回る青白い光を捕まえてくれ!なんて言い切る時間はなかった。
それでも倉敷は名前を呼ばれただけで体が動いた。伊達に幼馴染をやってきたわけではない。意思の疎通が完璧だ。しかし、それでも当然倉敷1人で残りの4つの青白い光を捕まえることなどできはしない。「くそ!」倉敷は小さく一言呟き1つ捕まえることしかできなかった。残りの3つは空高く舞い、そのあと3つの青白い光が衝突し、
それぞれ3方向にバラバラに散らばっていった。
シュンシュンシュンシュン―――――。青白い光は掌をぐるぐると回り続けている。
やがてその距離は近づいていき、掌に吸収されていく。しかし、2人の身体に異変はない。
「・・・。一体なんだったんだ。」倉敷が呟く。佐伯は無言のまま立ち尽くしている。
飛び散っていった3つの光は当然ながら、2人が抑えた2つの光も掌に吸収されて無くなっていった。
覚悟はしていたが、ここに来てからというもののあまりにも情報量が多くて全く処理できない状態だ。
完全にパニックになっている。「まぁ、考えてもわからないもんはわからねーわな。」「そうだな。続きやろうぜ。」「おう。」固まっていた2人だが、佐伯の切り替えの良さにまた作業を再開した。
しかし、頭の中にどーんとどでかい印象を残した青白い光。なんせ5つの内、2つは2人の体内に吸収されてしまったのだ。それか何かわからない怖さ。そして、もともと2人は謎の生物との関連性があるとみてここへ来ている。
自然と2人の頭の中には、あの青白い光が謎の生物になる要素で自分たちも何かの拍子に奴らのようになるのではないかと不安な気持ちに駆られていた。そんな上の空で作業はまるで自ら危険を呼び寄せるようなものだ・・・。「ん?なんだこれ・・・。」倉敷はそれに何かを感じたが、正直その感覚がなんなのかさっぱりわからないし、
燃えたときの煤などでよく見えない部分も多いため役には立たない思い、佐伯には何も言わずなんとなくポケットに仕舞い込んだ。「なぁ、倉敷~、瓦礫も大体片付いたな。」「あぁ、俺の方は後このでかいのを退かすことができればって感じなんだけど、これがでかすぎて動かないんだ。」「おぉ、それはちょっと厄介だな~。」瓦礫をおおかた片し終えたところで2人は会話をする。今日はもう疲れたし、終わろうといった雰囲気だ。
気付けば研究所の床がだいたい見えるようになっている。少し離れているから2人は少し声を張って会話をしている。「ところで、佐伯の方はなんか見つかったか?」「特になにも~。瓦礫片すの優先にしてたからな。でも、これで次来たときは調査に専念できそうだ。」「そうか。俺も今回はこれといって有力な情報はなかったよ。」どうやら2人とも収穫はなかったようだ。「あとは、お前の後ろにあるでかい瓦礫だけ何とか退かしたいな。」
「あぁ、これな。」倉敷は後ろを振り返る。その時、「あっ!!」佐伯が大声を出す。
「うわっ!」ドンッ、その声に驚き倉敷は足元の瓦礫に躓き大きな瓦礫に寄り掛かる。
「なんだよ佐伯~、急に大声なんか出して。」倉敷は体勢を立て直し、佐伯の方を向き文句を言う。
「倉敷、やばいぞ。・・・時間。」「・・・。え?」倉敷は佐伯に言われ時間を確認する。
現在の時刻16時40分。散々動き回り疲弊したこの状態で、来る時より早くなんて確実に無理な話だ。
2人の顔が青ざめる。夢中で・・・いや、上の空で作業していたことで、時間のことを2人ともすっかり忘れてしまっていたのだ。「確実に間に合わないな。どうするよ。」「やばいなぁ。」
グラ・・・、グラッグラッ・・・グラ~ングラ~ン・・・。
ただでさえ疲れで足もおぼつかないこの状況に叩きつけられた時間の現実。
「ははは・・・。」倉敷は力のない声で笑う。顔は青ざめたままで。そして佐伯の顔も当然青ざめていた。が、
それは時間ではなくその青ざめている別の原因をしっかり目で捉えていた。「お、おお、おい。倉敷!逃げろ!!」佐伯は叫ぶ。「え?」倉敷は状況がわかっていない。「逃げるってなん・・・。」倉敷はそう言いかけたとき、
自分が何大きな影に覆われているのがわかった。
大きすぎて唯一退かせなかった巨大な瓦礫が倉敷をぺちゃんこ潰す勢いで倒れてきた。
「倉敷!!!」佐伯は助けたい気持ちはあるが初動が遅かった。助けられる位置にはいなかった。
「くっ!ちくしょー!」倉敷は2、3歩前に踏み出し悪あがきともいえる程度のジャンプした。
何が悪あがきかって、佐伯から見た倉敷はジャンプしたところで全然巨大な瓦礫の範疇に居たのだ。
佐伯は思わず目を閉じて現実から目を逸らす。(倉敷!!悪い!!)もはや声に出す余裕もなく心の中で謝罪するだけだった・・・。
ガッシャーン!!!ガラガラガラ、ドンッドンッドンッ!・・・パラパラパラ・・・。
盛大に倒れてきた巨大な瓦礫は、これまた盛大な音を響かせその衝撃で粉々に砕け散る。
音が止んでも暫く佐伯は目を開けられなかった。悲惨な目の前の現実を受け入れる勇気がなかった。
そのまま地面に崩れ落ち、下を向いたまま少しだけ目を開く。その瞬間、堪えていた涙が溢れ出し床が濡れていく。佐伯はゆっくり少しずつ目線をあげていき、倒れた瓦礫の方に視線を向ける。まだ微かに煙が舞っており、
倉敷の姿は確認できない。「倉敷・・・。くっ。」佐伯はもう何も考えられなくなっていた。
「あっはっはっはっ!!佐伯なに変な顔して泣いてんだよ!」佐伯は依然として涙を流しながら目を丸くする。
目の前の煙はいつの間にか消え去り視界良好になっているが、倉敷の姿は見当たらない。
「おーい、佐伯!上だよ上!」佐伯は聞こえる倉敷らしき声のいうことを信じそのまま頭上を見上げる。
「く、倉敷!!」なんとそこには空中浮遊している倉敷の姿があった。「え・・・?倉・・・敷・・・。」
佐伯は今視界に入っている状況が理解できない。それはそうだ。倉敷が空を飛んでいるのだ。
ぽかーんとしている佐伯のもとへ倉敷が降りてくる。「俺もびっくりしたよ。」倉敷は佐伯の唖然とした顔を見ながら話す。「これは終わったと思いながらも、死にたくないから目を閉じて我武者羅に飛んだらそのまま空飛べちゃってさ、何とか助かったよ。なんだこれ。すげーよ。」佐伯は何も返事を返さない。そしていつの間にか泣き止んでいた涙がまた溢れ出す。そして小さな声でポツリ呟く。「よかった・・・。」
倉敷の生存を確認してから2人は少し話し合った。2人の見解はごく自然といえるだろう。
寧ろ他の理由が思いつかない。そうあの青白い光だ。あれを吸収したことにより、倉敷は飛べるようになったと考えた。そこでいろいろと試したが、どうやら倉敷は飛ぶこと以外は何もできなかった。
そして同じく青白い光を吸収した佐伯に関しては空を飛ぶことすらできなかった。そこで導き出した答えは、
5つの青白い光にはそれぞれ何かしらの能力が備わっており、それが倉敷は空を飛べる能力だったのだ。
そして佐伯に関しては、未だになんの能力かわかっていないが、何かしらの力を得たのだろう。
その答えもこの研究所のどこかに答えがあるのだろうが、もう探している時間はない。
2人は空を飛べる倉敷の能力を使い、急いで街へと帰っていった。倉敷もまだ完全に能力を使いこなせているわけではないが、高度や速度をそれなりに使い、誰にも空を飛んでいる姿を見られず街へ到着した。
2人はすぐに身支度を整え18時に無事、集合場所へ集まる。
「あらぁ、2人ともちゃんといるわね。たくさんとれたかしら?」謎の生物が来た。
「えぇ、思ったより収穫が多くて本日はとても楽しみです。」謎の生物との会話は基本的に倉敷に任せている。
「そう、それは楽しみだわ。ではさっそく行きましょう。」2人は謎の生物についていく。
その後、佐伯はなるべく静かに粗相のないように振る舞い、謎の生物の対応は倉敷がうまく対応し、
無事食事会を終えた。「2人とも今日はありがとうね。とてもおいしい山菜だったわ。」
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