代償

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第3章~肉薄~

初動と緊張

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不格好ながらもとても頑丈そうな見た目。辺りは誰一人近づく者は居らず閑散としている。
どことなくこの辺り一帯は常に薄暗い天気だ。そのせいもあってか建物はどこか不気味な雰囲気を漂わせている。
「やっぱり塔付近には遮蔽物は一切ないな。ここから塔までの距離はざっと50Mくらいか。」そういうと佐伯は
ゴクリと唾を飲む。それもそのはず、ファーストコンタクトは佐伯なのだ。佐伯が透明になり、実際の塔の様子を
窺うところから始まる。佐伯の透明の能力は自身が触れているものを意志によって透明化すること、
またはその逆で透明化しないこともできる。その佐伯が先陣を切って塔の外周から調査を始める。
最大で5分間の調査。5分経つと透明化は自然と解除されその後10分間は透明化することは出来ない。
もちろん現在の待機所まで戻ってくる時間を含めての話だ。「佐伯、一発目頼んだ。」「おう、行ってくる。」
佐伯は能力を使い透明化したのち、塔へ駆けていく。遠くから眺めたときはただの不気味な塔だったが、近くで見る
とかなり頑丈な造りに監視カメラや施錠などセキュリティーもしっかりされているようだ。
さらには謎の生物が数名、塔の周りを巡回している。身動きの音は消すことは出来ない佐伯は動作音と謎の生物との距離感に細心の注意を払いスマホを片手にどんどん写真を取っていく。写真に関しては無音アプリを使って音を消している。それでもやはり、行動までは無音とはいかない。「ん?何の音だ?」巡回中の謎の生物が佐伯の動く音に
気付く。(やべ・・・!)佐伯の足が止まる。謎の生物が音だけを頼りに近づいてきた。
しかし、今は佐伯は動いていない。透明化は消えるわけではない。見えなくなるだけで、そこに接触すれば触ることは出来る。つまりは自分の意志ではない何か、例えばペンキなどを被せられれば佐伯の存在は一瞬にしてバレてしまう。佐伯は意味はないが、見つかってほしくないあまり、目を閉じた。(見つかりませんように・・・!!)その場に留まり願うことしかできなかった。「気のせいか?」暫く佐伯の周りをうろついていた謎の生物は謎の生物は何も
認識できなかったため、その場を離れ巡回に戻る。「はぁー。」思わずため息がこぼれる佐伯。
その後すぐに自分の軽率な行動に体が硬直し視線だけで辺りを見渡す。佐伯がそんな危機一髪の状況を繰り返しながらも塔周辺を調査している一方で、倉敷は持参した双眼鏡で塔の周辺を見回していた。倉敷と角田が隠れている小屋は塔から離れているとはいえ、たったの50M。塔からは十分把握できる位置に存在している。ここからの調査も油断はできない。そして角田には塔とは反対側の街の方を目視でチェックしてもらっていた。街にいる謎の生物が塔に来るかもしれないからだ。そもそもこの小屋が何のためにあるのか誰が建てたのかわからないが丁度、街と塔の中間地点にポツリと存在している。塔の周辺が何もなさ過ぎてあまり考えずにこの小屋を活動拠点としたが、これがもし謎の生物たちが何かの目的で建てたものなら危険である。「なあ倉敷、俺たちの作戦が失敗したら即刻死刑かな?」
3分と経たずに角田が話しかけてきた。集中力の無さはなんとなく気づいていたが、ここまで短いとは思わなかった倉敷は軽くため息をつき、角田に端的に返事をする。「そうだね。」
「だよなぁ・・・。」角田がこちらを向いたまま腕組みをし始めたので倉敷は注意した。
「いつ何が起きるかわからないからちゃんと街側の監視してよ。」「あぁ。わかってる。」角田は素直に返事をして振り返ったその時、ガチャ!小屋のドアが開いた。倉敷と角田は瞬時にドアとは真逆の位置に避難し身構える。
ガチャ!ドアが閉まる。しかし、そこには誰も居なかった。倉敷は急ぎたかったが極力音を立てないように慎重に
窓際に移動し小屋周辺の外の様子を確認した。誰の姿も見当たらなかった。「何してんだよお前ら2人して。」声と同時にその声の主の姿を目にして倉敷と角田は安堵する。正体は佐伯だった。「んだよ、佐伯かよ。ビビッて損したぜ。」角田はその場に座り込む。「能力切れてから戻ってくるんじゃ遅いからそりゃ透明のまま戻ってくるよ。」
佐伯はニヤけながら答える。「そうだな。でも今度からはメール入れてくれ。帰ってくるときは。」倉敷はどんな
些細なことでも問題があればすぐに修正を入れてくる。「それもそうだな。わかった。」佐伯は二つ返事で返す。「じゃあ、今度は佐伯と角田で待機と監視頼む。」「おう。」会話を終え今度は倉敷が空を飛び上空から塔や
その周辺の様子を窺う。時間にして10分程度だろうか。そして3人は小屋に居座るのは危険と考え、なにかあるたびに街へと一旦引き揚げることになっている。

街に戻ると以前から佐伯と倉敷が利用していたビル街の路地裏でミーティングをする。
「まずは俺から話すわ。」佐伯が口火を切る。「さっき帰ってる途中に撮った写真は2人に送っておいたから話を
聞きながら見てほしい。」「あぁ。わかった。」「そうだな。結論から言うとわかったことは2つ。セキュリティーがかなり高いということ。そしてもう1つは謎の生物たちだけが所有してる鍵があって、それが塔の中に入れる唯一の手段ってこと。」「なるほどな。調査の過程も教えてくれるか?」倉敷が聞く。「あぁ、俺が見た数分では塔の周りを巡回しているのが4体。それぞれがある程度の距離感を保って見張ってる。それに塔のあちこちに監視カメラが設置されてるな。」「なんか攻略難しそうだなぁ。」角田がボソッと呟く。倉敷はちらっと角田を見た後、
そのことには触れず佐伯に話の続きをするよう促す。「一応、塔の外周を1周できたんだけど、地上に扉は4つ東西南北に1つずつだな。軽く上空も見てみたけど、扉は地上だけじゃないみたいだな。でもどこに何個あるとか正確な数や位置は把握できてない。そして鍵に関しては巡回してる謎の生物が集まってこそこそ話してるとこを盗み聞きしてわかったんだ。鍵をなくしちまった奴がいて自分は鍵もってないんだって。それがバレたらやばいぞとかって話してたな。とまぁこんなところかな。」「初動の調査は全てが貴重な情報だ。佐伯ありがとう。」
倉敷が佐伯に礼をいい、続けて話す。「俺が上空で把握できたのは塔の外壁は完全に中が見えないように光が差し込む程度の小さな窓が各所についてるってことだな。」倉敷は一旦、水を飲み話を続ける。「あとは塔の天辺は天井がガラス張りになってる。つまり塔の頂上だけは丸見えだったというわけだ。」「へぇ、それでどんな感じだったんだよ。」角田が聞く。「塔の天辺には真ん中にでかい丸いテーブルが置いてあって、4つだけ派手な椅子があった。
たぶん東京にいるSランクの4人があそこで会議でもして今後の方針とか決めてるんじゃないかな。憶測だけど。
俺がみたのはこれくらいかな。」倉敷はひとしきり話し終える。
「危なかったな。その時誰かがいて見られてたらやばかったろ。」佐伯が驚いた顔をする。それを見て倉敷が
少し笑いながら答える。「あぁ、最初見たときは焦った。でも誰の姿も見えなかったからちょっと観察してみた。」「2人とも凄いな。俺そういうのたぶん苦手だわ。」角田が感心した。
「たぶんじゃなくて絶対無理だよ。」その言葉を聞いた佐伯と倉敷は同時に角田にツッコんだ。
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