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第7章
しおりを挟む鈴のおかげで、予定していた1週間の出張が5日間になった。
早く帰れることが嬉しくて、大和にはサプライズで連絡せずに帰ることにした。
鈴から色々なバイヤー知識を叩き込まれ、少しは成長した気がした。
それに、久しぶりに大和に会えるのが嬉しくて、急いで家に帰る。
日本には夜中に着いたから、家に着くのは朝方になってしまった。
そっとドアを開けると、見慣れないヒールが玄関に置いてある。
違和感を感じながらも、スーツケースを置いてベッドルームへ向かう。
ドアが開いていて、中に入ると驚愕の光景が広がっていた。
「え!? どちら様ですか?」
目の前には見たこともない女性が、大和に抱かれて眠っている。
心臓がドキッと鳴る音が自分でも聞こえた。
理解ができなかった。
「誰なの?」
ベッドの下には、使い古されたゴムが散らばっている。
香は震える足で動けない。
「いつから?」「何で?」
息が止まりそうだった。
ダメだ、冷静にならなきゃ。
まだ起きているだろうと思い、鈴にすぐにメールを送ると、すぐに返信が返ってきた。
まだ手が震えていて、現実を受け入れることができずにいた。
「いい? 落ち着いてね。とりあえず、証拠を取って。写真を撮ること!女の顔もね。バッグその辺にない?」
「ある」
「免許証もクレジットカードも、写真を撮るんだよ」
鈴は冷静にアドバイスをくれた。
その言葉に従って、私は言われた通りに証拠を撮った。
「バレないように出てきて」
「うちに来ていいよ」
鈴の冷静なメールに、取り乱すことなく、その場を離れることができた。
写真と動画を撮って、鈴の家に向かった。
大通りに戻り、タクシーを拾う。
タクシーの中でも状況が理解できず、涙すら出なかった。
何も考えられない…
「私たちの結婚生活はうまくいってたよね?」
わからない、わからない。 二人が抱き合う姿が頭をよぎる。
怒り、それとも悲しみ?
どちらも正しいのか、正しくないのか、よくわからない。
私とのセックスは出来ない。
でも、あの使い終わったゴムの数。
それがショックなのか、何も考えることができない。
頭の中が真っ白になるとは、まさにこのことだろう。
その時、
「お客さん、この辺りでいいですか?」
その声さえも、遠くに聞こえる。
「はい、ありがとうございます。」
うちから鈴の家までタクシーで30分ほど。
すぐに着いた。
インターホンを鳴らし、オートロックを開けてもらい、エレベーターで鈴の部屋に向かう。
鈴がドアを開けて出迎えてくれた。
「香、大丈夫?」
「何とか……」
「今だに信じられなくて」
「どうしよう?」
「まず、写真見せて?」
「とりあえず、ソファに座って。」
「ハーブティー入れてくるから。」
「ありがとう。」
鈴はハーブティーを入れてくれた。
その後、写真と動画を見せた。鈴も顔を険しくしていた。
「香、どうするの?」
「私の直感だけど、この関係は長いと思う。」
「どうしてそう思うの?」
「なんとなく寝方とかバックの置き方とか、 気が合ってる感じがする。」
「写真だけならわからないけど、
動画を見ると、だんだん感じてくる。」
「私はずっと騙されていたってことなのかな?」
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