異世界賢者は世界を弄ぶ

神無ノア

文字の大きさ
上 下
20 / 24
本編

刷り込まれていた「非常識」

しおりを挟む
 死体というものを見慣れない、現代日本人には刺激が強すぎる旅となった。
 稔憲は元がこちらなだけあって、魔獣もその死体も、解体も慣れている。隆文はこちらで修行するようになってから慣れた、、、。本人曰く、「飢えるくらいなら、ゴミ漁りだろうが解体だろうがやる」ということなのだが。
 とどのつまり、隆文が受けていた虐待はかなりひどかったといえる。

「取りあえず、俺のやっていることからは遠ざかって。慣れるまでは、本当にトニーからナイフの使い方、薬草採取方法のレクチャー受けて」
「で……でも」
「ぶっちゃけ言うとね、魔法のごり押しとか力業で倒されると素材がなくなる。それどころか食べる部分もなくなる。だから、時間をかけて慣れて」
 吐くほどつらいなら、こっちに近づかないで欲しいというのが隆文の偽りない本心だ。
「倒すだけが勇者じゃない。人を癒すことも必要だ。あなた方はそちらに重点を置いた方がいいのでは?」
 稔憲にしては珍しく、真っ当なことを提案していた。
「い……いいんですか?」
「何で?」
 そこで躊躇するのが分からない。
「だって、トニーさんとテディさんは神殿関係者ですよね」
一応、、はね。俺は護衛とか警護とか。つまりは戦闘要員」
「……で、でも」
 どっちがどっちだが忘れてしまったが、二人揃って腑に落ちないということだ。

 とするなら……と隆文はあたりをつけた。
「もしかして、あの国の神殿で『神殿関係者は不殺生だ』とかとでも言われた?」
 ビンゴだ。二人揃って、こくこくと何度も頷いていた。
「それじゃ護衛できないよね? もっとも俺もトニーも破門されたわけだからどっちにしても問題ないよ。
 ついでに言うなら、神殿での『捧げもの』は基本神官が揃えるからね」
「そ……そうなのですか?」
「そう。だから気にする必要ない」
 そこまで言えば、二人ともほっとした顔になり、稔憲の方へと向かって行った。

「そんな理由で不殺生だったら、神殿関係者死んでるっつーの」
 二人に聞こえないように思わず呟いた。

 それくらいヘブンズという世界は死が隣り合わせなのである。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

Symmetry-First story-

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

残忍な印は口と下腹部で淡く輝く

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

縁起のいい友達がみょうちくりんな件について

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:0

春の天使に逢いに行こう。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

妹に何もかも奪われたら親友が出来ました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:2,826

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:1

ぼくの淫魔ちゃん

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:4

祭囃子と森の動物たち

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:1

処理中です...