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始まりの章
数日ぶりのクエストの始まり
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数日振りにVRの世界ヘ行ったカナリアは、すぐさまジャッジに怒られた。
「俺が怒るのは筋違いだが……。リアルのメアド交換しておくか?」
カナリアが来ない数日間、ジャッジは待ちぼうけを食らった形だった。
「私、自分のメルアド分からないんです」
しょんぼりとしてカナリアは言う。
「全部そういうの私が管理している訳じゃないので。電話番号ならすぐ分かるんですけど」
「だとSMSでやり取りすればいい。俺の番号はこれ。覚えておけ。あとでカナリアという名前で送信してくれればいいし、電話でも構わな……」
「私の番号を教えておきます。使い方よく分かんないので、ジャッジさんから入れててもらえればいいです」
頑ななカナリアに、ジャッジは少しばかり疑問を覚えた。
「あと、本分は学生なので、テスト期間とかは来れないと思います」
「学校以外の予定は?」
「ないです」
その言葉のあとに続くものがあることに気がついていたら、何かが違ったかも知れないと、ジャッジは後悔することになる。
「そういや保護者同伴しないでゲームできる年齢って十五歳からだったな。ってことは、高校生か。……最低でも十歳は離れてるのか……」
ぼそりと呟いたジャッジの言葉に、カナリアは思わず笑った。
「ジャッジさんって、先生とか似合いそうですよね」
「阿呆。誰好んであんな面倒なことするか」
二人でくすくす笑いあい、カナリアのクエストに向かうことにした。
今日やるクエストは携帯をレイピアとして使うことだった。
「モンスターにも魔法防御が高いのがいる。その場合はどうしても武器に頼るしかない」
「はい」
「杖で殴るのも一つの手段だが、それだと倒すまでに時間がかかる。だったらレイピアのようなものを使って、弱点を一撃で狙えればそれに越したことはないし、杖よりも攻撃力はあるからな」
「はい」
一つ一つのことに、カナリアは頷きながら聞いている。
クエストを受注させてきたが、始める前に休息場でまったりと紅茶を飲みながらスコーンを食べるのは、どうなのだろうとジャッジは思う。カナリアの方をちらりとうかがったが、あまり気にしていないようだ。
今回も一撃を加えたら下がる、というのを変えずにやることと、今日の獲物はエアラビットというかなり跳ぶ兎だということを教える。
「だと先日倒した熊さんは……」
「俺のほうでやっておく。セバスはいつものように肉を回収。カナリアは皮を回収しておけ」
「ジャッジさんは?」
「エアラビットは毛皮を装飾で使うか、食用肉として使うしか選択肢がないんだ。だから要らん。その代わり、他のモンスターのやつは貰う」
小さいことも気にするカナリアに、ジャッジは思わず笑った。
「それで、だ」
急に難しそうな顔をしたジャッジに、カナリアはきょとんとしていた。
「この状態、おかしくねぇ?」
このゲームを始めてからジャッジが今まで味わったことのない、ほのぼのさがそこには漂っていた。
「俺が怒るのは筋違いだが……。リアルのメアド交換しておくか?」
カナリアが来ない数日間、ジャッジは待ちぼうけを食らった形だった。
「私、自分のメルアド分からないんです」
しょんぼりとしてカナリアは言う。
「全部そういうの私が管理している訳じゃないので。電話番号ならすぐ分かるんですけど」
「だとSMSでやり取りすればいい。俺の番号はこれ。覚えておけ。あとでカナリアという名前で送信してくれればいいし、電話でも構わな……」
「私の番号を教えておきます。使い方よく分かんないので、ジャッジさんから入れててもらえればいいです」
頑ななカナリアに、ジャッジは少しばかり疑問を覚えた。
「あと、本分は学生なので、テスト期間とかは来れないと思います」
「学校以外の予定は?」
「ないです」
その言葉のあとに続くものがあることに気がついていたら、何かが違ったかも知れないと、ジャッジは後悔することになる。
「そういや保護者同伴しないでゲームできる年齢って十五歳からだったな。ってことは、高校生か。……最低でも十歳は離れてるのか……」
ぼそりと呟いたジャッジの言葉に、カナリアは思わず笑った。
「ジャッジさんって、先生とか似合いそうですよね」
「阿呆。誰好んであんな面倒なことするか」
二人でくすくす笑いあい、カナリアのクエストに向かうことにした。
今日やるクエストは携帯をレイピアとして使うことだった。
「モンスターにも魔法防御が高いのがいる。その場合はどうしても武器に頼るしかない」
「はい」
「杖で殴るのも一つの手段だが、それだと倒すまでに時間がかかる。だったらレイピアのようなものを使って、弱点を一撃で狙えればそれに越したことはないし、杖よりも攻撃力はあるからな」
「はい」
一つ一つのことに、カナリアは頷きながら聞いている。
クエストを受注させてきたが、始める前に休息場でまったりと紅茶を飲みながらスコーンを食べるのは、どうなのだろうとジャッジは思う。カナリアの方をちらりとうかがったが、あまり気にしていないようだ。
今回も一撃を加えたら下がる、というのを変えずにやることと、今日の獲物はエアラビットというかなり跳ぶ兎だということを教える。
「だと先日倒した熊さんは……」
「俺のほうでやっておく。セバスはいつものように肉を回収。カナリアは皮を回収しておけ」
「ジャッジさんは?」
「エアラビットは毛皮を装飾で使うか、食用肉として使うしか選択肢がないんだ。だから要らん。その代わり、他のモンスターのやつは貰う」
小さいことも気にするカナリアに、ジャッジは思わず笑った。
「それで、だ」
急に難しそうな顔をしたジャッジに、カナリアはきょとんとしていた。
「この状態、おかしくねぇ?」
このゲームを始めてからジャッジが今まで味わったことのない、ほのぼのさがそこには漂っていた。
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