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調合師教育計画
ヴァルッテリの欲求不満
しおりを挟む学問所開設は、帝国内であっという間に話題となった。
無論、その質問に答えるのは帝都で唯一仕事をしているヴァルッテリである。
「俺だってよく分からない」
そう言いたいのは山々だが、ここはマイヤ曰く「特大の猫」を被って対応せざるを得ない。
「人材発掘です」
そう微笑んで答えれば、黄色い声を出して倒れる侍女がちらほらといた。仕事しろ、と内心で毒ついておく。
以前から思っていたが、マイヤ基準となった今となってはそれが余計目につく。
「お前の婚約者が異常な」
誰もいないところでニーロに言われた。ニーロとしてもあの侍女どもどうなのよ、というのは同じなようで何よりだ。
だが、男性の社交界ではヴァルッテリの取る方法は「少数派」とされた。公爵家だが、王家とあまり仲がよろしくないため、人材がいないだけとまで言われた。
「王家の人材って、碌なの居ないんだけど」
「あまり大きな声でそういうことは」
ぼそりと呟いた声を拾ったウルヤナから、窘められることもしばしばだった。
学問所で学んだからといって即戦力の人材が発掘されるのは稀だという。その辺りを、貴族どもの大半は分かっていないというのが、感想だったりする。
「自分たちだってすぐに前線にたてるわけじゃないだろうに」
「それ以前に、後ろでふんぞり返って『無能どもが』とかわめき散らしそうな気がします」
現在、いるのが帝都にある公爵邸だが、ヴァルッテリとウルヤナは言いたい放題である。
そして、それを嗜めることのない執事長と侍女長。
実のところ、侍女長は二人の意見に頷いて同意していたのだ。
「坊ちゃま。早くマイヤ様とご結婚なさって、若旦那様と呼ばせてくださいませ」
「私も同意見です」
あっさりと執事長までもが、同意してきた。
「マイヤにそれとなく伝えてはいるんだけどねぇ。毎回『これが片付いてから』って言われる」
結婚以前の問題で、マイヤは「婚約した」ことすら忘れていそうなのは、黙っておく。
……が、執事長と侍女長にはお見通しで、「せめて、結婚に前向きなご意見をいただいてください」と懇願される羽目になるのだった。
「俺だって! 今すぐにでも結婚したいんだよ!!」
そうむくれたヴァルッテリを慰める者は、この館にはいなかった。
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