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婚約者とマイヤ
マイヤと舌打ち
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今後の予定、というものを店内にいる人間に話せば、思いっきり呆れられた。……失礼な。
「その薬を買うのは……」
「とりあえずわたくしがストックしておきますわ。失敗したものを流通されると困るのはアベスカ男爵家ですもの」
使用できるレベルまで行ったら、それを販売する。アベスカ男爵領で取っている方策の一つだ。失敗作は二束三文。二流、三流品は低価格。成功したものだけが定価で買い取られる。
「その規定は……」
「マニュアルがありますわ。それにわたくしでは分からないので、一度アベスカ男爵領へ持っていかなくてはいけませんの。わたくしが転移術を使えるのなら、王都まで持って行ってお父様にお願いできるのですけど……」
父親までこき使う気だ! その場にいた全員が思ったことだが、誰一人口にできなかった。
「マイヤ!!」
店に慌てて入って来た人物を見て、マイヤは舌打ちしたくなった。
「初日からいなくならないで!!」
「それとなく、情報は置いてきましたわよ」
侍女の服をわざと分かるように減らしたり、「ここから出ましたよ」と言わんばかりに脱出経路を分かりやすく示してきた。
「一つ申し上げれば、あんな簡単に出れるとは思いませんでしたわ。もう少し安全面を考慮すべきでは?」
「それについては、うちの護衛たちが青くなってるよ!」
噛みつかんばかりの勢いで話す、ヴァルッテリを店内にいる連中はぽかんとしてみていた。
……何しろ、スラム街どころか、この国の爪はじき者である連中ですら知っている。父親は現国王の王兄。つまりは甥っ子。家柄としてもかなり格が上。
「……お嬢さん、色々聞きてぇんだが」
「いくらでも答えますわよ。わたくしの『自称』婚約者なのだそうです。一応、わたくしにも先日グラーマル王国国王の王命が下りましたけど」
「何で?」
「わたくしの髪色が、この王室の血を引く者に稀に出てくるらしくて」
「それだけ?」
「それだけですわ」
じろり。連中の目がヴァルッテリに行く。しかし、ヴァルッテリは一切引かない。
「ちょっとそりゃないわなぁ。お嬢さんの内面知らずに顔どころか、髪だけ? まぁ、俺らとしては大変ありがたいけどよぉ」
「わたくしとしても、骨のあるあなた方にあえたのは嬉しいですけどね」
彼らをどうやってアベスカ男爵領まで連れて行けというのだ。アベスカ男爵領よりも、他国へ逃がしたほうがいいだろうが、しばらくの生活費と手に職がなければ暮らしていけない。
「ヴァルッテリ様!!」
今日の従者はウルヤナらしく、外で待っていた。
「ヴァルッテリ様のようなお方が入るような店ではございません! このような……」
「随分なことをおっしゃいますのね、ヴァルッテリ様の従者は」
じろり、とマイヤはウルヤナを睨みつけた。
「言わせていただきますが、ここにいる方々とあなたのどこに違いがありまして? 血の色ですか? それとも手足の数ですか? 皆同じでしょう」
「奴らはグラーマルとの混血……」
「あら、それでしたらわたくしもですわね。……ねぇ、ヴァルッテリ様」
「なんだい?」
「そんなにわたくしと婚約したくないのでしたら、さっさと破棄していただけません事? 陰で従者や侍女を使って文句を言わせるのはいただけませんわ」
「……はい?」
「あら、それとも教育がなっていないのかしら? 昨日から数名にわたくし『忌まわしき混血児』と言われておりますし。ウルヤナ様もそうおっしゃりたいようですし。
こちらの方々がおっしゃるように髪色だけで求婚されても嬉しくありませんの。そんな邪魔な髪は要りませんし、その髪色がグラーマル王国やアベスカ男爵領にあるというのが気に入らないとおっしゃるなら、お約束いたしますわ。この先婚姻することなく、生涯を終えると」
これ以上に言いたいことはあるが、まずはこのあたりで止めておこう。
マイヤは茶をすすった。
「その薬を買うのは……」
「とりあえずわたくしがストックしておきますわ。失敗したものを流通されると困るのはアベスカ男爵家ですもの」
使用できるレベルまで行ったら、それを販売する。アベスカ男爵領で取っている方策の一つだ。失敗作は二束三文。二流、三流品は低価格。成功したものだけが定価で買い取られる。
「その規定は……」
「マニュアルがありますわ。それにわたくしでは分からないので、一度アベスカ男爵領へ持っていかなくてはいけませんの。わたくしが転移術を使えるのなら、王都まで持って行ってお父様にお願いできるのですけど……」
父親までこき使う気だ! その場にいた全員が思ったことだが、誰一人口にできなかった。
「マイヤ!!」
店に慌てて入って来た人物を見て、マイヤは舌打ちしたくなった。
「初日からいなくならないで!!」
「それとなく、情報は置いてきましたわよ」
侍女の服をわざと分かるように減らしたり、「ここから出ましたよ」と言わんばかりに脱出経路を分かりやすく示してきた。
「一つ申し上げれば、あんな簡単に出れるとは思いませんでしたわ。もう少し安全面を考慮すべきでは?」
「それについては、うちの護衛たちが青くなってるよ!」
噛みつかんばかりの勢いで話す、ヴァルッテリを店内にいる連中はぽかんとしてみていた。
……何しろ、スラム街どころか、この国の爪はじき者である連中ですら知っている。父親は現国王の王兄。つまりは甥っ子。家柄としてもかなり格が上。
「……お嬢さん、色々聞きてぇんだが」
「いくらでも答えますわよ。わたくしの『自称』婚約者なのだそうです。一応、わたくしにも先日グラーマル王国国王の王命が下りましたけど」
「何で?」
「わたくしの髪色が、この王室の血を引く者に稀に出てくるらしくて」
「それだけ?」
「それだけですわ」
じろり。連中の目がヴァルッテリに行く。しかし、ヴァルッテリは一切引かない。
「ちょっとそりゃないわなぁ。お嬢さんの内面知らずに顔どころか、髪だけ? まぁ、俺らとしては大変ありがたいけどよぉ」
「わたくしとしても、骨のあるあなた方にあえたのは嬉しいですけどね」
彼らをどうやってアベスカ男爵領まで連れて行けというのだ。アベスカ男爵領よりも、他国へ逃がしたほうがいいだろうが、しばらくの生活費と手に職がなければ暮らしていけない。
「ヴァルッテリ様!!」
今日の従者はウルヤナらしく、外で待っていた。
「ヴァルッテリ様のようなお方が入るような店ではございません! このような……」
「随分なことをおっしゃいますのね、ヴァルッテリ様の従者は」
じろり、とマイヤはウルヤナを睨みつけた。
「言わせていただきますが、ここにいる方々とあなたのどこに違いがありまして? 血の色ですか? それとも手足の数ですか? 皆同じでしょう」
「奴らはグラーマルとの混血……」
「あら、それでしたらわたくしもですわね。……ねぇ、ヴァルッテリ様」
「なんだい?」
「そんなにわたくしと婚約したくないのでしたら、さっさと破棄していただけません事? 陰で従者や侍女を使って文句を言わせるのはいただけませんわ」
「……はい?」
「あら、それとも教育がなっていないのかしら? 昨日から数名にわたくし『忌まわしき混血児』と言われておりますし。ウルヤナ様もそうおっしゃりたいようですし。
こちらの方々がおっしゃるように髪色だけで求婚されても嬉しくありませんの。そんな邪魔な髪は要りませんし、その髪色がグラーマル王国やアベスカ男爵領にあるというのが気に入らないとおっしゃるなら、お約束いたしますわ。この先婚姻することなく、生涯を終えると」
これ以上に言いたいことはあるが、まずはこのあたりで止めておこう。
マイヤは茶をすすった。
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