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婚約者とマイヤ
王国と帝国の違い……なのか
しおりを挟む怪我が治るまでに一月要した。その間、ほぼ毎日ヴァルッテリは見舞いに来るという、暴挙に出ていた。
時折、公爵夫妻や王太后陛下も見舞いに来るため、そのたびにダニエルが呼び出されていたが。
「マイヤ~~。帝国に行っちゃうの?」
男爵の威厳はどこに? と誰一人聞かないのは、アベスカ男爵領だけだろう。
「仕方ないです。破棄していただければ、すぐに戻ってまいりますから」
「待ってるよ!」
子供の婚約破棄を願う親がどこにいる、という突っ込みの代わりに、ゾルターンがダニエルにこれでもかと、領内の仕事を押し付けていた。
「だから破棄はしないからね!」
そう、ヴァルッテリどころか、オヤヤルヴィ公爵夫妻に王太后陛下のがいる前での発言である。
ゾルターンが恭しく頭を下げて、ダニエルを引きずっていった。
「彼もオヤヤルヴィ家に欲しい人材だね」
「そうね。ヴァルを#物理的__、、、_#に黙らせてくれる、貴重な人材になりそうだわ」
いいのかそれで。流石のマイヤもそう思った。
「アハトはヴァルが公爵位に就いたら、従者辞めるそうだし。ウルヤナでは、ヴァルを戒められない」
公爵は誰よりも息子の心配をしていたつもりのようである。
「マイヤちゃんには、公爵領の取り纏めをしてもらうと考えると、もう一人くらいヴァルを抑えられる人物が欲しいのよ」
「父上、母上?」
「母上、誰かいい人物はいませんかね」
「老婆を使うものではありませんよ。お前も親に容赦ないんだったら。わたくしは政とあの子たちのやることから一切の手を引くのを条件に、今まで通り要職に部下を残して置けた、力ない女ですわよ」
なるほど、とマイヤは思った。帝国が王国ほど斜陽の一途を辿らないのは、その要職に就いている方々の涙ぐましい努力のおかげなのだと。
王族に馬鹿が蔓延すると大変なことになる、それは王国を見れば明らかであり、帝国もいずれは王国のようになるのだろう。
「させないよ」
ヴァルッテリが断言した。
「だから、マイヤも協力して」
「嫌です」
考えるよりも先に、言葉として出ていた。マイヤに好意貴族の夫人など務まらない。己の実力くらい把握している。
「大丈夫、俺も両親も破棄しようなんて思わないから。雁字搦めに繋いでおきたいくらいだよ」
ヴァルッテリの言葉に、公爵夫妻たちがうんうんと頷いていた。
解せぬ。
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ある意味、ヴァルッテリは親に信用されていない模様。
次回から新章に入ります(^▽^)/
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