37 / 99
婚約者とマイヤ
王国と帝国の違い……なのか
しおりを挟む怪我が治るまでに一月要した。その間、ほぼ毎日ヴァルッテリは見舞いに来るという、暴挙に出ていた。
時折、公爵夫妻や王太后陛下も見舞いに来るため、そのたびにダニエルが呼び出されていたが。
「マイヤ~~。帝国に行っちゃうの?」
男爵の威厳はどこに? と誰一人聞かないのは、アベスカ男爵領だけだろう。
「仕方ないです。破棄していただければ、すぐに戻ってまいりますから」
「待ってるよ!」
子供の婚約破棄を願う親がどこにいる、という突っ込みの代わりに、ゾルターンがダニエルにこれでもかと、領内の仕事を押し付けていた。
「だから破棄はしないからね!」
そう、ヴァルッテリどころか、オヤヤルヴィ公爵夫妻に王太后陛下のがいる前での発言である。
ゾルターンが恭しく頭を下げて、ダニエルを引きずっていった。
「彼もオヤヤルヴィ家に欲しい人材だね」
「そうね。ヴァルを#物理的__、、、_#に黙らせてくれる、貴重な人材になりそうだわ」
いいのかそれで。流石のマイヤもそう思った。
「アハトはヴァルが公爵位に就いたら、従者辞めるそうだし。ウルヤナでは、ヴァルを戒められない」
公爵は誰よりも息子の心配をしていたつもりのようである。
「マイヤちゃんには、公爵領の取り纏めをしてもらうと考えると、もう一人くらいヴァルを抑えられる人物が欲しいのよ」
「父上、母上?」
「母上、誰かいい人物はいませんかね」
「老婆を使うものではありませんよ。お前も親に容赦ないんだったら。わたくしは政とあの子たちのやることから一切の手を引くのを条件に、今まで通り要職に部下を残して置けた、力ない女ですわよ」
なるほど、とマイヤは思った。帝国が王国ほど斜陽の一途を辿らないのは、その要職に就いている方々の涙ぐましい努力のおかげなのだと。
王族に馬鹿が蔓延すると大変なことになる、それは王国を見れば明らかであり、帝国もいずれは王国のようになるのだろう。
「させないよ」
ヴァルッテリが断言した。
「だから、マイヤも協力して」
「嫌です」
考えるよりも先に、言葉として出ていた。マイヤに好意貴族の夫人など務まらない。己の実力くらい把握している。
「大丈夫、俺も両親も破棄しようなんて思わないから。雁字搦めに繋いでおきたいくらいだよ」
ヴァルッテリの言葉に、公爵夫妻たちがうんうんと頷いていた。
解せぬ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ある意味、ヴァルッテリは親に信用されていない模様。
次回から新章に入ります(^▽^)/
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる