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海の章
参、黒龍の切なる願い(後)
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参、「黒龍の切なる願い」(後)
三龍王会談は、長い時間をかけて空、地、海の領域を明確に成文化。その後、地平龍王ルー・ソンへの殺害未遂を犯したタオ老師は、情状酌量を求めた空の民の請願もあり、テムが護っていた霊廟の守り役に移封とされた。霊廟には死んだタオの娘と孫も祀られることとなり、タオの後任は弟子の一人から選ばれた。
会談の終わりにエイシャ王が、六歌仙の収集と三秘宝の抽出を提案し、受諾された。すべてが終わった時にはすっかり日も暮れ、皆がばらばらに国へと帰っていく。
「セツカ姫様」
王に付いて帰ろうとしたセツカに、すっかり元の姿となったリナリア女王が浮遊椅子ではなく、脇をフロン元帥に支えられながら駆け寄ってきた。
「リナリア女王、どうかご無理はなさらず」
「ありがとうございます。あの……ツーエン将軍は、本日お姿を拝見できておりませぬゆえ、まだ眠られたままなのですね?」
「……はい。三日前に封じたままです」
「眠ったままの将軍から、秘宝を取り出しても大丈夫なのでしょうか……?」
「わたくしには、なんとも言えません。ただ、始祖の龍の怒りに触れないことを祈るばかりです」
リナリアは、寂しそうに笑うセツカに「ご無事をお祈り申し上げます」と深く一礼すると、フロン元帥と去っていった。
セツカも踵を返すと、なぜかセツカを待っているエイルを発見した。セツカが来るまで霧を避けて、星を見上げていたらしい。
「エリン、王と一緒に帰られなかったの?」
セツカが首を傾げると、エイルは唇を尖らせてむくれた。セツカが近寄って、膨らんだエイルの頬を「えいっ」と両手で挟めば「むうっ!!」と眉間に皺が寄る。
「義姉上!!」
「うふふ、ごめんなさい。なにを拗ねているのかしら?」
「父上と真君が……」
「恋人でも作れとおっしゃられた?」
「……やっぱり義姉上とロンはそっくりですね。俺はそんなにわかりやすいのかな」
「伊達にあなたの成長を見守ってきてはいません」
自分の頬をこねるエイルの頭を撫でてやれば、図体ばかりは大きくなってもまだ甘えたな節がある弟は、嫌がりもせずに撫でられている。
「ロンに、相談したいのに……まだ起きないから……」
「わたくしを待ってくれていたのね。そうですねえ。女性のわたくしから助言できるとしたら、どんな困難でもこの方と添い遂げたい――そんな強い意思。外見や性格も判断材料なのでしょうけれど、理屈は要らないわ。たくさんの女性と話してみることはいい機会だと思いますよ」
エイルは「添い遂げたい意思」と呟く。セツカは頬をいじるエイルの手を取って「その先は竜宮でゆっくりお考えなさい」と渋るエイルを立ち上がらせて、泉に押し込んだ。続いてセツカ自身も水流に身を任せて流れていく。
「義姉上は……俺の相手は、王后たる資質を持つ女性とは言わないのですね」
「あなたの場合はそれ以前の問題だもの。たくさんの出逢いを経験しないと、その資質すらも見出せません」
「なるほど。じゃあ、ちょっと不安だけど、真君に付いて行ってきます……」
「世の中にはちゃんと、『王子』ではない『エイル』を愛してくれる人が居るわ」
「はい。義姉上も、早くロンと祝言を挙げてください。じれったいです」
セツカは目を丸くしてから「ねぼすけな旦那様が起きたら、すぐにでも」と返した。
◇
セツカは湯から上がって、とっぷりと暮れた竜宮の廊下を歩いていた。寝る前に一目でも姿を見ようと、音も立てないようにロンの部屋に入った。扉を慎重に閉めていると、夜陰に消えてしまいそうな声音で「……姫様……」と聞こえた。
急いで振り返り、寝間着に羽織を引っ掛けただけの姿で駈け寄れば、寝台の上でロンが微笑んでいる。
「……ロン……いつ……」
目が覚めたのか、という問いは言葉にならなかった。ロンは呻きながら硬直している上半身を無理やり起こして、セツカを抱き寄せた。セツカも上半身裸のロンに腕を回す。ロンの匂いがする。毎日身体を拭いているので、決して汗の不快な匂いではなく、セツカを安心させてくれる彼自身の匂い。
「意識が戻ったのは半刻ほど前です。それまでは、夢の中で『始祖の龍』と語らっていました」
「始祖は、なんと?」
「悠久の孤独を嘆いていました……寂しいと……だが、俺の中以外で泣いてしまうとたくさんの生き物の命を奪ってしまった。その罪から身体が真っ黒になってしまった、と」
海に散らばっていた残留思念もひどく哀しい思いだった。セツカはロンに抱き着く力を強める。
「姫様、俺は始祖と約束をしました。俺の妻になって下さるとおっしゃるならば、どうか聞いてください」
「約束?」
「はい。始祖は孤独に耐えきれず、死が訪れる身体を欲しています。俺と姫様の子として、始祖にただの海底龍神族の生涯を与えてやりたい――だが、産むのはあなただ。男の無茶を押し付けている自覚はあります。強制などできようはずがない。それでもあなたは俺の妻となり、子を産んで、未来を歩んでくださいますか――?」
セツカの肩を掴んで、ロンは真剣な表情で訴えかけてくる。セツカは「あなたは……また一人で決めてしまうのね」とやや棘のある言葉を選んだ。ロンは「申し訳ございません」とうつむいた。
ロンを選べば、始祖の龍が二人の子として産まれてくる。恐怖が先立つのは当然のことだ。幼い頃から変わらないお人好しなロン――出逢った時からなにも変わらないこの気質は彼の生まれ持ったものだ。
「あなたは、わたくしに蓬莱華をくれたのではありませんか」
「はい。俺には、あなた以外考えられなかったから……」
「出産は女にとって、いつでも命がけです。それはわたくしも覚悟の上。わたくしが拒否すれば、あなたは別の女に子を産ませるの?」
「……いえ、他の方法を模索するつもりです。ただ龍に身体を与えてやりたいだけじゃない。正体がなんであろうとも、姫様が産んでくれる子供です。兄弟も与えてやりたい。家族で食卓を囲んで、そんな月並みの幸せを――」
「本当に、変わらない人だわ」
セツカは苦笑して、ロンの唇を無理やり塞いだ。ロンの腕が寝台に乗り上げたセツカの腰に回る。深く、互いの奥を探り合うような口づけを交わした後で、セツカは呪符の上から左眼に口づける。
「姫様……」
「嫌。二人の時は名前で呼んで」
「セツカ、産んでくれるか……――?」
「あなたが出産に立ち会ってくれるなら。わたくしは、ロン・ツーエン以外の妻になる気は毛頭ありません。怖くないかと問われれば、怖いけれど、でも、あなたが他の女に産ませる方が許せない。愛しんで、たくさん抱きしめてあげましょう……」
「ありがとう。夢のようだ……焦がれて、焦がれて、貪欲なまでに欲しかった君が俺を愛してくれる」
「私もよ」
その夜は、二人で抱き合いながら眠った。今度は二人で同じ夢を見た――一匹の龍が、随喜の涙を流している夢を――。
朝の微睡の陽光を受けながらも、セツカは飛び起きた。ロンがくすりと笑っていた。
「おはよう。俺なら、もう大丈夫だ」
「……よかった。また、あなたが眠ってしまったのではないかと思って……恥ずかしい」
ロンは起き上がったセツカの身体を腹の上に乗せて「俺しか見ていないから、構わない」と乱れた彼女の前髪を払ってやった。
セツカは少しだけ頬を朱に染めて、視線を逸らす。ロンはまたくすりと笑んで、セツカの髪を一房をすくい上げて口づけた。
「もう待ちくたびれた。早く祝言を挙げないとな」
「うん……義父上様に報告しましょう。秘宝を取り出したら、花嫁衣裳を選びたいわ」
「君は、何色でも似合うが……そうだな。華美なものより優しい色の方が似合うはずだ」
出仕と朝餉の呼びがかかるまで、二人は寝台の中で笑い合いながら語り合った。
花嫁衣裳の色、飾る花、子供の数――話題は尽きない。ロンの呪符が外れたら、それはすべて現実になる。
未来は明るい。数多の困難を乗り越えよう。
あなたとなら、君となら、乗り越えられると信じている―――。
◇
共に出仕してきたロンとセツカから正式な婚約の報告を受け、エイシャ王の眼には涙が浮かんでいた。
「長く生きた甲斐があったものだ。儂の後見は外そう。六歌仙の集いは七日後だ。それまでに婚礼の衣裳を選べばよい。セツカ、宰相の仕事が増えるが無理のない程度にな」
「はい、ありがとうございます。心してお役目も果たしますゆえ、ご安心ください」
セツカの微笑みに、エイシャ王は娘の頬をそっと撫でた。そして、はた、とロンに視線をやると、苦笑を浮かべる。ロンが首を傾げた。
「……ロン、身体が本調子になってからでよい。エイルの相談にのってやってくれまいか?」
「王子の? なにかございましたか?」
エイシャとセツカの間に流れる微妙な空気に、ロンはいくつもの疑問符が浮かんでくる。
ロンが事の真相を知るのは、三日後のこと――。
続...
三龍王会談は、長い時間をかけて空、地、海の領域を明確に成文化。その後、地平龍王ルー・ソンへの殺害未遂を犯したタオ老師は、情状酌量を求めた空の民の請願もあり、テムが護っていた霊廟の守り役に移封とされた。霊廟には死んだタオの娘と孫も祀られることとなり、タオの後任は弟子の一人から選ばれた。
会談の終わりにエイシャ王が、六歌仙の収集と三秘宝の抽出を提案し、受諾された。すべてが終わった時にはすっかり日も暮れ、皆がばらばらに国へと帰っていく。
「セツカ姫様」
王に付いて帰ろうとしたセツカに、すっかり元の姿となったリナリア女王が浮遊椅子ではなく、脇をフロン元帥に支えられながら駆け寄ってきた。
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「ありがとうございます。あの……ツーエン将軍は、本日お姿を拝見できておりませぬゆえ、まだ眠られたままなのですね?」
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「眠ったままの将軍から、秘宝を取り出しても大丈夫なのでしょうか……?」
「わたくしには、なんとも言えません。ただ、始祖の龍の怒りに触れないことを祈るばかりです」
リナリアは、寂しそうに笑うセツカに「ご無事をお祈り申し上げます」と深く一礼すると、フロン元帥と去っていった。
セツカも踵を返すと、なぜかセツカを待っているエイルを発見した。セツカが来るまで霧を避けて、星を見上げていたらしい。
「エリン、王と一緒に帰られなかったの?」
セツカが首を傾げると、エイルは唇を尖らせてむくれた。セツカが近寄って、膨らんだエイルの頬を「えいっ」と両手で挟めば「むうっ!!」と眉間に皺が寄る。
「義姉上!!」
「うふふ、ごめんなさい。なにを拗ねているのかしら?」
「父上と真君が……」
「恋人でも作れとおっしゃられた?」
「……やっぱり義姉上とロンはそっくりですね。俺はそんなにわかりやすいのかな」
「伊達にあなたの成長を見守ってきてはいません」
自分の頬をこねるエイルの頭を撫でてやれば、図体ばかりは大きくなってもまだ甘えたな節がある弟は、嫌がりもせずに撫でられている。
「ロンに、相談したいのに……まだ起きないから……」
「わたくしを待ってくれていたのね。そうですねえ。女性のわたくしから助言できるとしたら、どんな困難でもこの方と添い遂げたい――そんな強い意思。外見や性格も判断材料なのでしょうけれど、理屈は要らないわ。たくさんの女性と話してみることはいい機会だと思いますよ」
エイルは「添い遂げたい意思」と呟く。セツカは頬をいじるエイルの手を取って「その先は竜宮でゆっくりお考えなさい」と渋るエイルを立ち上がらせて、泉に押し込んだ。続いてセツカ自身も水流に身を任せて流れていく。
「義姉上は……俺の相手は、王后たる資質を持つ女性とは言わないのですね」
「あなたの場合はそれ以前の問題だもの。たくさんの出逢いを経験しないと、その資質すらも見出せません」
「なるほど。じゃあ、ちょっと不安だけど、真君に付いて行ってきます……」
「世の中にはちゃんと、『王子』ではない『エイル』を愛してくれる人が居るわ」
「はい。義姉上も、早くロンと祝言を挙げてください。じれったいです」
セツカは目を丸くしてから「ねぼすけな旦那様が起きたら、すぐにでも」と返した。
◇
セツカは湯から上がって、とっぷりと暮れた竜宮の廊下を歩いていた。寝る前に一目でも姿を見ようと、音も立てないようにロンの部屋に入った。扉を慎重に閉めていると、夜陰に消えてしまいそうな声音で「……姫様……」と聞こえた。
急いで振り返り、寝間着に羽織を引っ掛けただけの姿で駈け寄れば、寝台の上でロンが微笑んでいる。
「……ロン……いつ……」
目が覚めたのか、という問いは言葉にならなかった。ロンは呻きながら硬直している上半身を無理やり起こして、セツカを抱き寄せた。セツカも上半身裸のロンに腕を回す。ロンの匂いがする。毎日身体を拭いているので、決して汗の不快な匂いではなく、セツカを安心させてくれる彼自身の匂い。
「意識が戻ったのは半刻ほど前です。それまでは、夢の中で『始祖の龍』と語らっていました」
「始祖は、なんと?」
「悠久の孤独を嘆いていました……寂しいと……だが、俺の中以外で泣いてしまうとたくさんの生き物の命を奪ってしまった。その罪から身体が真っ黒になってしまった、と」
海に散らばっていた残留思念もひどく哀しい思いだった。セツカはロンに抱き着く力を強める。
「姫様、俺は始祖と約束をしました。俺の妻になって下さるとおっしゃるならば、どうか聞いてください」
「約束?」
「はい。始祖は孤独に耐えきれず、死が訪れる身体を欲しています。俺と姫様の子として、始祖にただの海底龍神族の生涯を与えてやりたい――だが、産むのはあなただ。男の無茶を押し付けている自覚はあります。強制などできようはずがない。それでもあなたは俺の妻となり、子を産んで、未来を歩んでくださいますか――?」
セツカの肩を掴んで、ロンは真剣な表情で訴えかけてくる。セツカは「あなたは……また一人で決めてしまうのね」とやや棘のある言葉を選んだ。ロンは「申し訳ございません」とうつむいた。
ロンを選べば、始祖の龍が二人の子として産まれてくる。恐怖が先立つのは当然のことだ。幼い頃から変わらないお人好しなロン――出逢った時からなにも変わらないこの気質は彼の生まれ持ったものだ。
「あなたは、わたくしに蓬莱華をくれたのではありませんか」
「はい。俺には、あなた以外考えられなかったから……」
「出産は女にとって、いつでも命がけです。それはわたくしも覚悟の上。わたくしが拒否すれば、あなたは別の女に子を産ませるの?」
「……いえ、他の方法を模索するつもりです。ただ龍に身体を与えてやりたいだけじゃない。正体がなんであろうとも、姫様が産んでくれる子供です。兄弟も与えてやりたい。家族で食卓を囲んで、そんな月並みの幸せを――」
「本当に、変わらない人だわ」
セツカは苦笑して、ロンの唇を無理やり塞いだ。ロンの腕が寝台に乗り上げたセツカの腰に回る。深く、互いの奥を探り合うような口づけを交わした後で、セツカは呪符の上から左眼に口づける。
「姫様……」
「嫌。二人の時は名前で呼んで」
「セツカ、産んでくれるか……――?」
「あなたが出産に立ち会ってくれるなら。わたくしは、ロン・ツーエン以外の妻になる気は毛頭ありません。怖くないかと問われれば、怖いけれど、でも、あなたが他の女に産ませる方が許せない。愛しんで、たくさん抱きしめてあげましょう……」
「ありがとう。夢のようだ……焦がれて、焦がれて、貪欲なまでに欲しかった君が俺を愛してくれる」
「私もよ」
その夜は、二人で抱き合いながら眠った。今度は二人で同じ夢を見た――一匹の龍が、随喜の涙を流している夢を――。
朝の微睡の陽光を受けながらも、セツカは飛び起きた。ロンがくすりと笑っていた。
「おはよう。俺なら、もう大丈夫だ」
「……よかった。また、あなたが眠ってしまったのではないかと思って……恥ずかしい」
ロンは起き上がったセツカの身体を腹の上に乗せて「俺しか見ていないから、構わない」と乱れた彼女の前髪を払ってやった。
セツカは少しだけ頬を朱に染めて、視線を逸らす。ロンはまたくすりと笑んで、セツカの髪を一房をすくい上げて口づけた。
「もう待ちくたびれた。早く祝言を挙げないとな」
「うん……義父上様に報告しましょう。秘宝を取り出したら、花嫁衣裳を選びたいわ」
「君は、何色でも似合うが……そうだな。華美なものより優しい色の方が似合うはずだ」
出仕と朝餉の呼びがかかるまで、二人は寝台の中で笑い合いながら語り合った。
花嫁衣裳の色、飾る花、子供の数――話題は尽きない。ロンの呪符が外れたら、それはすべて現実になる。
未来は明るい。数多の困難を乗り越えよう。
あなたとなら、君となら、乗り越えられると信じている―――。
◇
共に出仕してきたロンとセツカから正式な婚約の報告を受け、エイシャ王の眼には涙が浮かんでいた。
「長く生きた甲斐があったものだ。儂の後見は外そう。六歌仙の集いは七日後だ。それまでに婚礼の衣裳を選べばよい。セツカ、宰相の仕事が増えるが無理のない程度にな」
「はい、ありがとうございます。心してお役目も果たしますゆえ、ご安心ください」
セツカの微笑みに、エイシャ王は娘の頬をそっと撫でた。そして、はた、とロンに視線をやると、苦笑を浮かべる。ロンが首を傾げた。
「……ロン、身体が本調子になってからでよい。エイルの相談にのってやってくれまいか?」
「王子の? なにかございましたか?」
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