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第3章
第86話:銀髪の守護者
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ヨハンが、新しい包帯と清潔な水を取りに一度席を外したとき、重い沈黙が支配する部屋には、僕と騎士のライル、そして傷ついた羽を休めるレイブンだけが残された。
ライルは、まるで隙あらば毒を盛る機会を伺う暗殺者を警戒するように、あるいはいつ爆発するか分からない爆弾を見張るように、一歩もその場を動かず僕を監視し続けている。彫刻のように整った顔立ちに宿る、その鋭すぎる銀色の視線が肌を切り裂くようで、僕は耐えきれず、汚れた毛布を喉元まで引き上げ身を縮めた。
「……何を見ている。貴様がどれほどそのように弱々しい、今にも消え入りそうなふりをしようと、私は決して騙されんぞ。王都での冷酷な悪名、そして今このストルムベルク領を襲っている魔物の暴走という未曾有の災厄……すべては『魔法使い』という異質な貴様が元凶として存在するからこそ起きていることだ」
ライルの低く、氷の刃のような声が部屋に響く。それは、彼が今まで守り抜いてきた騎士としての正義そのものだった。僕は激痛に震える唇をぎゅっと噛み締めながら、それでも、逃げることなく彼の銀色の瞳をまっすぐに見つめ返した。
「……すみません。僕が……怖いですよね。いつ何をされるか分からないから、そんなに厳しく僕を見るんですよね」
「……何だと? 怖がっているだと? 私は騎士として警戒しているだけで――」
「僕が、僕のような化け物がここにいなければ、ヨハン――領主様はもっと楽になれたはずです。街の人も、貴方も、僕を疑ったり憎んだりして心を乱さなくて済んだはずなのに。……守ってくれている貴方たちをこんなに苦しめてしまって、本当に、ごめんなさい」
僕は、自分を激しく責め立てるライルに対しても、ただただ申し訳なくて、胸の奥から溢れ出した精一杯の謝罪を口にした。 ライルは、僕から返ってきたのが呪詛でも言い訳でもなく、震える声での「謝罪」であったという予想外の反応に、一瞬言葉を失い、銀色の眉を深くひそめた。その端正な顔に、制御しきれない動揺が走る。
その時、窓際にいたレイブンが僕の異変を察したのか、バサバサと羽を震わせて僕の肩に飛び乗り、心配そうに「カァ、カァ」と短く鳴いて、僕の頬にそっと嘴を寄せてきた。
「大丈夫だよ、レイブン。怖くないよ。……ライルさんは、ヨハンの守るこの街のために、お仕事をしているだけだから。怒っちゃだめだよ」
僕はレイブンの柔らかな、けれど少し傷ついた羽をそっと撫で、彼を安心させるように、痛みに耐えながら無理に微笑みかけた。 ライルは、その慈愛に満ちた光景――化け物と恐れられる魔法使いが、一羽の鳥を心から愛しみ、自分を蔑む騎士を庇うという矛盾した姿を、信じられないものを見るような、あるいはこれまでの自分の価値観が音を立てて崩れていくのを感じるような目で見つめていた。
彼の銀色の瞳の中で、鋭い殺気は影を潜め、代わりに名前のない複雑な感情が渦巻き始めていた。
ライルは、まるで隙あらば毒を盛る機会を伺う暗殺者を警戒するように、あるいはいつ爆発するか分からない爆弾を見張るように、一歩もその場を動かず僕を監視し続けている。彫刻のように整った顔立ちに宿る、その鋭すぎる銀色の視線が肌を切り裂くようで、僕は耐えきれず、汚れた毛布を喉元まで引き上げ身を縮めた。
「……何を見ている。貴様がどれほどそのように弱々しい、今にも消え入りそうなふりをしようと、私は決して騙されんぞ。王都での冷酷な悪名、そして今このストルムベルク領を襲っている魔物の暴走という未曾有の災厄……すべては『魔法使い』という異質な貴様が元凶として存在するからこそ起きていることだ」
ライルの低く、氷の刃のような声が部屋に響く。それは、彼が今まで守り抜いてきた騎士としての正義そのものだった。僕は激痛に震える唇をぎゅっと噛み締めながら、それでも、逃げることなく彼の銀色の瞳をまっすぐに見つめ返した。
「……すみません。僕が……怖いですよね。いつ何をされるか分からないから、そんなに厳しく僕を見るんですよね」
「……何だと? 怖がっているだと? 私は騎士として警戒しているだけで――」
「僕が、僕のような化け物がここにいなければ、ヨハン――領主様はもっと楽になれたはずです。街の人も、貴方も、僕を疑ったり憎んだりして心を乱さなくて済んだはずなのに。……守ってくれている貴方たちをこんなに苦しめてしまって、本当に、ごめんなさい」
僕は、自分を激しく責め立てるライルに対しても、ただただ申し訳なくて、胸の奥から溢れ出した精一杯の謝罪を口にした。 ライルは、僕から返ってきたのが呪詛でも言い訳でもなく、震える声での「謝罪」であったという予想外の反応に、一瞬言葉を失い、銀色の眉を深くひそめた。その端正な顔に、制御しきれない動揺が走る。
その時、窓際にいたレイブンが僕の異変を察したのか、バサバサと羽を震わせて僕の肩に飛び乗り、心配そうに「カァ、カァ」と短く鳴いて、僕の頬にそっと嘴を寄せてきた。
「大丈夫だよ、レイブン。怖くないよ。……ライルさんは、ヨハンの守るこの街のために、お仕事をしているだけだから。怒っちゃだめだよ」
僕はレイブンの柔らかな、けれど少し傷ついた羽をそっと撫で、彼を安心させるように、痛みに耐えながら無理に微笑みかけた。 ライルは、その慈愛に満ちた光景――化け物と恐れられる魔法使いが、一羽の鳥を心から愛しみ、自分を蔑む騎士を庇うという矛盾した姿を、信じられないものを見るような、あるいはこれまでの自分の価値観が音を立てて崩れていくのを感じるような目で見つめていた。
彼の銀色の瞳の中で、鋭い殺気は影を潜め、代わりに名前のない複雑な感情が渦巻き始めていた。
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