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終章
第178話:目覚め
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「いた! レリル! ルクシオ! 探したぞ!」
ヨハンの焦燥に満ちた声で、僕は意識を浮上させた。ゆっくりと目を開けると、そこは森の奥深く。朝の光が木々の隙間から差し込み、露に濡れた草の匂いが鼻を突く。
「……ヨ、ハン?」
「こんなところでずっと喋っていたのか!? 邪魔されたくないのは分かるが、レリルの身体は軟弱なんだ! 風邪でも引いたらどうする!」
僕を抱き起こしながら、ヨハンがまくし立てる。久しぶりに会ったからだろうか、以前にも増して世話焼きになっている気がして、僕は思わず苦笑した。その腕の力強さが、僕が今ここに生きていることを実感させてくれる。
傍らでは、ルクシオが放心状態で座り込んでいた。泣き疲れたのか、それとも本物のレリルとの「手合わせ」で全てを出し切ったのか。その瞳には、かつての凍りついたような絶望はもうなかった。
「……僕は大丈夫です。帰りましょう、あの塔へ」
「……レリルは、本当にあの塔が好きなのか? 君にとってあそこは突然閉じ込められ、魔力を奪われ続けた場所だろう?」
ヨハンが複雑そうな表情で問いかける。確かに、最初は辛いだけの場所だった。けれど――。
「ええ。ヨハンがいつも美味しい食べ物を持ってきてくれたり、レイブンと本を読んだり……あそこで過ごした時間は、僕にとって大切な宝物なんです。僕の人生は、あそこから始まったようなものですから」
僕の言葉に、ヨハンは毒気を抜かれたように息を吐き、愛おしそうに僕の髪を撫でた。
「そうだ、レイブンは? レイブンはどうなったんですか」
僕が辺りを見回すと、ヨハンが首を振った。
「わからない。本物のレリルの魂が入ったレイブンがお前の胸に突撃したかと思ったら、そのまま光になって消えて……その後、お前の身体が動き出したんだ。その時の記憶はあるのか?」
「うっすら、夢の中で何かを見ていたような……。でも、はっきり感じたのは、彼がとても穏やかな気持ちで、この身体を僕に預けて出ていったことだけです」
その言葉に、ルクシオがわずかに、けれど深く反応した。
「レリルは……僕が約束通り寿命を全うすることを、信じて疑っていないわけか。はは、あいつらしいな」
ルクシオは自嘲気味に笑ったが、その瞳にはこれまで見たことのない強い光が宿っていた。
あの日、レリルを捕らえ、その罪を自分一人で被せようとした時、ルクシオは「自分だけが生き残る」ことを、逃れられない呪いのように感じていたはずだ。けれど今は違う。
(……君は、僕が君を追いかけて自暴自棄になることも、君なしでは生きる意味を見失うことも、全部わかっていたんだね。その上で、僕を信じて『生きろ』と命じた。再会という報酬まで用意して……)
それはルクシオにとって、神の宣告よりも重く、どんな魔法よりも確かな「絆」の証だった。裏切ることなど到底できない、親友からの無条件の信頼。それが、死を望んでいた彼の心に、何よりも強固な「生きる理由」を楔のように打ち込んでいた。
「レリルが僕を信じたのなら、僕はそれに応えるしかない。……この世界で、あいつが次に会った時に驚くような研究をやり遂げて、最高に幸せな人生だったと笑って報告してやるよ」
ルクシオの笑った顔は、初めて会った時よりもずっと、晴れやかだった。
ヨハンの焦燥に満ちた声で、僕は意識を浮上させた。ゆっくりと目を開けると、そこは森の奥深く。朝の光が木々の隙間から差し込み、露に濡れた草の匂いが鼻を突く。
「……ヨ、ハン?」
「こんなところでずっと喋っていたのか!? 邪魔されたくないのは分かるが、レリルの身体は軟弱なんだ! 風邪でも引いたらどうする!」
僕を抱き起こしながら、ヨハンがまくし立てる。久しぶりに会ったからだろうか、以前にも増して世話焼きになっている気がして、僕は思わず苦笑した。その腕の力強さが、僕が今ここに生きていることを実感させてくれる。
傍らでは、ルクシオが放心状態で座り込んでいた。泣き疲れたのか、それとも本物のレリルとの「手合わせ」で全てを出し切ったのか。その瞳には、かつての凍りついたような絶望はもうなかった。
「……僕は大丈夫です。帰りましょう、あの塔へ」
「……レリルは、本当にあの塔が好きなのか? 君にとってあそこは突然閉じ込められ、魔力を奪われ続けた場所だろう?」
ヨハンが複雑そうな表情で問いかける。確かに、最初は辛いだけの場所だった。けれど――。
「ええ。ヨハンがいつも美味しい食べ物を持ってきてくれたり、レイブンと本を読んだり……あそこで過ごした時間は、僕にとって大切な宝物なんです。僕の人生は、あそこから始まったようなものですから」
僕の言葉に、ヨハンは毒気を抜かれたように息を吐き、愛おしそうに僕の髪を撫でた。
「そうだ、レイブンは? レイブンはどうなったんですか」
僕が辺りを見回すと、ヨハンが首を振った。
「わからない。本物のレリルの魂が入ったレイブンがお前の胸に突撃したかと思ったら、そのまま光になって消えて……その後、お前の身体が動き出したんだ。その時の記憶はあるのか?」
「うっすら、夢の中で何かを見ていたような……。でも、はっきり感じたのは、彼がとても穏やかな気持ちで、この身体を僕に預けて出ていったことだけです」
その言葉に、ルクシオがわずかに、けれど深く反応した。
「レリルは……僕が約束通り寿命を全うすることを、信じて疑っていないわけか。はは、あいつらしいな」
ルクシオは自嘲気味に笑ったが、その瞳にはこれまで見たことのない強い光が宿っていた。
あの日、レリルを捕らえ、その罪を自分一人で被せようとした時、ルクシオは「自分だけが生き残る」ことを、逃れられない呪いのように感じていたはずだ。けれど今は違う。
(……君は、僕が君を追いかけて自暴自棄になることも、君なしでは生きる意味を見失うことも、全部わかっていたんだね。その上で、僕を信じて『生きろ』と命じた。再会という報酬まで用意して……)
それはルクシオにとって、神の宣告よりも重く、どんな魔法よりも確かな「絆」の証だった。裏切ることなど到底できない、親友からの無条件の信頼。それが、死を望んでいた彼の心に、何よりも強固な「生きる理由」を楔のように打ち込んでいた。
「レリルが僕を信じたのなら、僕はそれに応えるしかない。……この世界で、あいつが次に会った時に驚くような研究をやり遂げて、最高に幸せな人生だったと笑って報告してやるよ」
ルクシオの笑った顔は、初めて会った時よりもずっと、晴れやかだった。
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