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終章
第180話:喝采
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街道を屋敷へと進む道中、そこには信じられない光景が広がっていた。
「あ! レリル様だ!」
「魔物を退治してくださって、ありがとうございます!」
家々の窓から身を乗り出す人、道端で作業を止めて駆け寄る人。人々が次々と、弾んだ声でこちらを振り返り、口々に言葉をかけてくる。
「レリル……様?」
信じられなかった。ほんの数日前まで、僕は「大罪人」や「化け物」と呼ばれ、顔も見たことのない住民からも恐れられていたのだ。それが今では、誰もが憧憬と感謝の混じった瞳で僕を見つめている。あまりの変貌ぶりに、悪い夢でも見ているのではないかと頬をつねりたくなった。
「……驚いただろう」
手綱を握るヨハンが、背後から包み込むような低い声で静かに語りかける。その胸の鼓動が、馬の揺れを通して僕に伝わってくる。
「言い訳に聞こえるかもしれないが……この領地の人々は、冬が近づくと命がけで家族を守らなければならない重圧で、どうしてもピリピリしてしまうんだ。余裕を失い、理解できないものを排除しようとして結果、…あの日の襲撃は起こってしまったんだと思う。そんな中で、圧倒的な力で魔物を一掃してくれた君には、皆、心から救われたんだ。……領主としても、一人の男としても、改めて礼を言わせてほしい。ありがとう、レリル」
背中から伝わるヨハンの温もりと、向けられるまっすぐな言葉に、なんだかむず痒いような気恥ずかしさが込み上げる。僕は俯きながら、小さく「……いえ」と答えるのが精一杯だった。
やがて見えてきたヨハンの屋敷は、質実剛健でありながら、庭の木々や手入れされた石造りの壁にどこか温かみがある。それはまさに、不器用で誠実な「ヨハン」という男をそのまま形にしたような建物だった。
「あ! レリル様だ! みんな、領主様とレリル様が帰ってきたぞ!」
見張りの若い騎士が上げた声を合図に、屋敷の前に集まっていた領民たちが一斉にこちらを向いた。
「レリル様、昨日は本当にありがとうございました! あの雷光、一生忘れません!」
「これ、少ないですけどお礼に……うちで採れた一番いいやつです、食べてください!」
馬を降りる暇もないほど、矢継ぎ早に差し出される立派な野菜や果物。そして、雨のように降り注ぐ感謝の言葉。戸惑い、おどおどとしてしまう僕の耳に、一人の男の素直な感想が飛び込んできた。
「あれ? レリル様、なんか昨日と雰囲気が違わないか? 昨日はもっとこう、近寄りがたいくらい怖かったっていうか……。魔法を使うと人格が変わるとか……ひえー、どっちもかっこいいな!」
「あ、あはは……」
確かに、昨日の本物のレリルが見せた、神をさえ見下ろすような傲岸な態度を知る人からすれば、今の僕は頼りなく見えるだろう。魔法も使えない、ただの僕。
けれど、差し出された林檎を抱え、困ったように笑う僕を、領民たちは温かな笑い声で受け入れてくれた。
彼らの笑顔は、朝日よりもずっと眩しかった。
「あ! レリル様だ!」
「魔物を退治してくださって、ありがとうございます!」
家々の窓から身を乗り出す人、道端で作業を止めて駆け寄る人。人々が次々と、弾んだ声でこちらを振り返り、口々に言葉をかけてくる。
「レリル……様?」
信じられなかった。ほんの数日前まで、僕は「大罪人」や「化け物」と呼ばれ、顔も見たことのない住民からも恐れられていたのだ。それが今では、誰もが憧憬と感謝の混じった瞳で僕を見つめている。あまりの変貌ぶりに、悪い夢でも見ているのではないかと頬をつねりたくなった。
「……驚いただろう」
手綱を握るヨハンが、背後から包み込むような低い声で静かに語りかける。その胸の鼓動が、馬の揺れを通して僕に伝わってくる。
「言い訳に聞こえるかもしれないが……この領地の人々は、冬が近づくと命がけで家族を守らなければならない重圧で、どうしてもピリピリしてしまうんだ。余裕を失い、理解できないものを排除しようとして結果、…あの日の襲撃は起こってしまったんだと思う。そんな中で、圧倒的な力で魔物を一掃してくれた君には、皆、心から救われたんだ。……領主としても、一人の男としても、改めて礼を言わせてほしい。ありがとう、レリル」
背中から伝わるヨハンの温もりと、向けられるまっすぐな言葉に、なんだかむず痒いような気恥ずかしさが込み上げる。僕は俯きながら、小さく「……いえ」と答えるのが精一杯だった。
やがて見えてきたヨハンの屋敷は、質実剛健でありながら、庭の木々や手入れされた石造りの壁にどこか温かみがある。それはまさに、不器用で誠実な「ヨハン」という男をそのまま形にしたような建物だった。
「あ! レリル様だ! みんな、領主様とレリル様が帰ってきたぞ!」
見張りの若い騎士が上げた声を合図に、屋敷の前に集まっていた領民たちが一斉にこちらを向いた。
「レリル様、昨日は本当にありがとうございました! あの雷光、一生忘れません!」
「これ、少ないですけどお礼に……うちで採れた一番いいやつです、食べてください!」
馬を降りる暇もないほど、矢継ぎ早に差し出される立派な野菜や果物。そして、雨のように降り注ぐ感謝の言葉。戸惑い、おどおどとしてしまう僕の耳に、一人の男の素直な感想が飛び込んできた。
「あれ? レリル様、なんか昨日と雰囲気が違わないか? 昨日はもっとこう、近寄りがたいくらい怖かったっていうか……。魔法を使うと人格が変わるとか……ひえー、どっちもかっこいいな!」
「あ、あはは……」
確かに、昨日の本物のレリルが見せた、神をさえ見下ろすような傲岸な態度を知る人からすれば、今の僕は頼りなく見えるだろう。魔法も使えない、ただの僕。
けれど、差し出された林檎を抱え、困ったように笑う僕を、領民たちは温かな笑い声で受け入れてくれた。
彼らの笑顔は、朝日よりもずっと眩しかった。
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