復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

文字の大きさ
34 / 45
第7章 勇者視点

第2話:失われた鎖と空虚な自由

しおりを挟む
洞窟の裏側の抜け道から山脈を降り、数日後、俺は王城の追跡が及ばない、辺境の小さな町に潜んでいた。

身体から魔力抑制の効力が抜け、聖炎は再び以前の強さを取り戻している。俺の力は自由になった。王城の命令も、騎士団の監視もない。

しかし、俺の心は、空虚だった。

いつも俺の首に巻き付いていたはずのノアールの鎖は、今、俺の胸に痛いほど食い込んでいる。

(鎖が……ない)

俺は、自分の首の銀の鎖を無意識に握りしめた。ノアールが俺につけた鎖ではない。俺が、彼との関係の証として、肌身離さず身につけていた、俺自身の鎖だ。

ノアールが俺のそばにいた時、俺の復讐心は、満たされていた。彼の存在が、俺の孤独を埋めていた。彼を支配下に置くことで、俺は自己の存在価値を確認していた。

だが、彼が王城に連れ去られた今、俺の復讐は、ターゲットを失った。

「ノアール……お前は、俺の復讐の完結を望んだのか?」

彼の「愛は終わった」という言葉が、俺の耳から離れない。

俺が彼を愛していた3年間は、偽りだったのだろうか?俺が彼を鎖で繋いだのは、自己満足だったのだろうか?

俺が王城で受けた孤独と苦痛は、すべて彼の裏切りの代償だと信じていた。だが、彼を失った今、俺に残されたのは、以前よりも深い、絶望的な孤独だけだった。

俺は、ノアールを滅却させるわけにはいかない。彼は、俺の復讐の唯一の燃料だ。

俺は、すぐに王城の情報を集め始めた。ノアールがどこに拘束されているのか、そして、彼が本当に滅却されていないかを確かめる必要がある。

辺境の町の酒場で、俺は王城から来た商人の会話を耳にした。

「勇者セレが、魔王を王城の追跡隊に引き渡したそうだ。これで、勇者の裏切りはなかったことになり、魔王は厳重な監視下に置かれているとか」

王城は、俺を裏切り者ではなく、光の英雄として処理したのだ。ノアールを引き渡した行為を、王城への忠誠心の証として利用したに違いない。

(ふざけるな。俺は、お前たちに忠誠を誓ったわけではない)

ノアールは生きている。厳重な監視下にあるという。

俺の胸に、新たな憎悪の炎が燃え上がった。

王城への憎しみ、俺を孤独にした世界への憎しみ、そして、俺の鎖から逃れようとしたノアールへの裏切りの憎しみ。
俺の復讐のターゲットは、再び明確になった。

ノアールを取り戻す。そして、彼を支配する。

そのために、俺はまず、王城のすべてを支配下に置く必要がある。

俺は立ち上がり、辺境の町を後にした。俺の瞳の金色は、以前の復讐の炎よりも、さらに強く、すべてを焼き尽くす光の怪物のように輝いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

処理中です...