クロノスの子供達

ひとりぼっち

マリッサを追って客車に向かうが、降りる客で混雑してきた為、姿を見つける事ができない。
人の流れに逆らって歩くのは、ゴーフルの小さな身体では簡単な事ではなかった。
「ちょっと邪魔よ」
「なんだよ、このガキ！どけよ」
ゴーフルにぶつかり、あからさまに不機嫌になる客もいる。
「すみません……」
消え入りそうな声で謝る。
ゴーフルが自分の席に戻ると、マリッサは既に荷物を持って立ち去っていた。
ぽつんと残されたゴーフルの子供用のリュックには、未使用のオムツが数枚と降りる駅の切符があるだけだった。
「どうしよう」
途方に暮れるゴーフルの目から涙が溢れる。
「あらあら、どうしたのかしら」
「あ、大丈夫……です」
見知らぬ年配の女性が心配そうにこちらを見ていた。
「君はどこまで行くの？お母さんと一緒じゃないのね」
ゴーフルはうなずく。
サマードレスの下からチラリと見えたオムツに、女性が気づく。
「こんなに小さい子に、１人で旅をさせるなんて……どういうつもりかしら」
「すみません、ちょっと動揺しただけです。もう、落ち着きました」
ゴーフルは、自分がかよわい子供ではなく大人だったという事を思い出す。