クロノスの子供達

迷子の子猫

降り立った駅は静かで人が少ない所だった。
そもそも研究所の性質からいって、あまり都会には建てることはできないからだ。
ゴーフルは唯一の荷物である熊のリュックを背負って列車から降りた。
小さなゴーフルには、ちょっとした隙間や段差も障害となる。
「ふぅ、着いたけど……」
周囲の人が心配そうにゴーフルの様子を見ていた。
チケットを駅員に渡して改札口を出る。
都会には自動運転のタクシーが並んでいるはずだが、ここには無かった。
「期待はしてなかったけど、迎えはないのか」
心細い気持ちを抑え込み、とりあえず研究所を目指して歩き出す。
「あら、可愛い。お嬢ちゃんどこに行くの？」
サマードレスのせいで、男とは思われない。
「え、えーっとガルニエ研究所です」
「ガルニエ研究所、知らないわね。そこにご両親がいるのね？」
「はい。パパが研究所で働いてるの。この街の人？」
無理矢理、子供っぽい話し方を試みる。
「そうよ、でも近くにそんな名前の研究所は無いわね」
降りる駅は、チケットを確認したので間違いないはずだ。
「他の人に聞いてみます。ありがとうございました」
「まぁ、小さいのに礼儀正しいのね」
仕方なく、見当をつけて道行く人に尋ねて回ったが誰一人研究所の存在を知るものはいなかった。
「……ここまで来て手がかりがない」
ゴーフルはヘトヘトになってベンチに座り込む。