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すべては無かったことに
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「シラー、2人の生活は守られるのか?」
「もちろん、2人には研究素体であるマノン様を育てるという役割がある」
「マノン?どこかで聞いた名前だけど」
「我が機関の最大の成果物はマノン様自身の若返りだった。それが成功した今、あなたはもう必要なくなった」
「俺は殺されるのか」
「……もし貴方が望むのであれば、4人で何も知らずに幸せな人生を送るという選択肢もありますが」
「機関の陰謀に目をつむる代わりにって事か?」
「私はどちらでもいいんですよ」
「俺の記憶は改竄されるんだよな」
「されません」
「え?」
シラーが予想とは違う返答をした事に驚く。
「記憶の改竄といっても、万能ではないんですよ。何か齟齬がある度に都合よく情報を書きかえる訳にはいかない」
シラーが本当の事を言っている保障はなかったが、嘘をつく理由は見当たらない。
「マノン様がもともと2人の子供だったという情報を刷り込む事はできる。けれど、もともと大人としての人生を生きてきた貴方の記憶をすべて辻褄があう情報に塗り替える事は難しいんですよ」
「なるほど」
「機関の事忘れてくれますよね?妹さんの命と引き換えなら安いものでしょう」
「わかった。俺はそれで構わない」
それ以外の選択は無いのだろう。
「そう言ってくださると思っていました。それでは、少しだけ忘れてもらいましょう。今日の出来事と不都合な真実はすべて無かったことになる」
シラーはヘルメット状の機械を頭に被せた。
ゴーフルは抵抗しなかった。
脳の中に直接響いてくる歌声があった。
今までの出来事が頭の中を駆け巡っていくが、その場面にどうしても見えない白い空白がある。
思い出そうとすると、そこには何か得たいの知れないものがある。
見ることも触れることもできない。
ただそこにあったという違和感だけがモヤモヤと残るのだった。
「マリッサ」
ゴーフルは妹の名前を呼んだ。
返事をするものはない。
「もちろん、2人には研究素体であるマノン様を育てるという役割がある」
「マノン?どこかで聞いた名前だけど」
「我が機関の最大の成果物はマノン様自身の若返りだった。それが成功した今、あなたはもう必要なくなった」
「俺は殺されるのか」
「……もし貴方が望むのであれば、4人で何も知らずに幸せな人生を送るという選択肢もありますが」
「機関の陰謀に目をつむる代わりにって事か?」
「私はどちらでもいいんですよ」
「俺の記憶は改竄されるんだよな」
「されません」
「え?」
シラーが予想とは違う返答をした事に驚く。
「記憶の改竄といっても、万能ではないんですよ。何か齟齬がある度に都合よく情報を書きかえる訳にはいかない」
シラーが本当の事を言っている保障はなかったが、嘘をつく理由は見当たらない。
「マノン様がもともと2人の子供だったという情報を刷り込む事はできる。けれど、もともと大人としての人生を生きてきた貴方の記憶をすべて辻褄があう情報に塗り替える事は難しいんですよ」
「なるほど」
「機関の事忘れてくれますよね?妹さんの命と引き換えなら安いものでしょう」
「わかった。俺はそれで構わない」
それ以外の選択は無いのだろう。
「そう言ってくださると思っていました。それでは、少しだけ忘れてもらいましょう。今日の出来事と不都合な真実はすべて無かったことになる」
シラーはヘルメット状の機械を頭に被せた。
ゴーフルは抵抗しなかった。
脳の中に直接響いてくる歌声があった。
今までの出来事が頭の中を駆け巡っていくが、その場面にどうしても見えない白い空白がある。
思い出そうとすると、そこには何か得たいの知れないものがある。
見ることも触れることもできない。
ただそこにあったという違和感だけがモヤモヤと残るのだった。
「マリッサ」
ゴーフルは妹の名前を呼んだ。
返事をするものはない。
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