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小児病棟にて
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ゴーフルは、チラチラと目の前に漂う光を見ていた。
焦点が合いそうで合わない。
「……フル、ゴーフル気が付いたのか? 」
「アルフレッド、そこに居るのか? 」
自分の声なのに、ゴーフルの耳には不自然に高く聴こえる。
「ああ、そのままでいい。1週間も眠っていたんだ。急に動かない方がいい。それに……」
「それに? 」
「いや、何でもない」
アルフレッドは言葉を濁した。
ようやく、明るさに慣れてきたようでゴーフルはアルフレッドの顔を見る事ができた。
「なんだか、君が大きく見えるよ。それに声が変な感じがする」
「ふむ、まぁそうだろうな」
そして、軽く首を動かして周囲を確認してみた。
「病院なのか? 」
「病院には、違いない。いろいろ事情があって個室をおさえている」
ゴーフルの頭の中に、疑問がいくつか沸いていた。
「やけに、ファンシーな壁紙だな。それに部屋も大きな気がする」
ゴーフルが言うように、病室の壁紙は薄いブルーを基調としており、輪郭のふわりとしたユニコーンや熊のイラストがちりばめられていた。
「この部屋が大きな訳じゃない。君が小さくなったんだよ」
「小さく? 冗談はよしてくれ」
「残念ながら、ジョークじゃない。ここはとある小児病棟の一室で、君は事故で若返り退行をしてしまったんだ」
ゴーフルは、アルフレッドの言葉を聞いてもまだ完全には状況を理解していなかった。
その時、病室のドアがゆっくり開いた。
「あら、もしかして目が覚めたのかしら? 」
やけに、明るい声が聞こえるがアルフレッドの位置からは正体が掴めない。
「すみません、病み上がりに長々と話してしまって」
「構いませんよ。急に目が覚めて知らない部屋に居たら。心細くて泣いてしまうかもしれませんし」
「ええ、ちょっとショックが大きいみたいです。看護士さんからいろいろ話してやって下さいませんか? 」
「わかりました。でもその前にやる事をやってしまいましょう」
「すみません。気が付かなくて」
2人の会話を聞いても、ゴーフルには何の事かさっぱり分からない。
「さぁ、アーシャちゃん気持ち悪かったでしょう? すぐに取り替えてあげますよ」
ようやく、ゴーフルの目の前に看護士の姿が見えてきた。
かなり若い女性の看護で手には何か衣類のようなものを持っていた。
「ああ、包帯ですか……そうか身体が麻痺して気が付かなかったけど怪我をしてるのか」
「大丈夫、アーシャちゃんが寝ている間は私がいつも世話をしてあげてたんだから」
女性が、ベットの下で何かを準備していた。
しかし、ゴーフルの予想に反して女性は布団を捲りあげ始めた。
「ちょ、ちょっと待ってください。何を!?」
「さすがにお布団をどけないと取り替えにくいわ」
「そ、そうですか」
ゴーフルはそこで初めて自分が妙な格好をしている事に気付いた。
色がピンク色だという事は見てわかったが、素材が病院服らしく無いのだ。
それは、頭からすっぽり被るタイプの服で無駄にフリル等の装飾が施されていた。
ゴーフルには、それをどこかで見たような記憶があった。
「あぁ、そいつはマリッサが昔来ていた服だよ。サイズが合うのがそれしかなくてな」
アルフレッドが視線に気付いて説明する。
なんと、それはマリッサが幼き日に来ていたネグリジェだったのだ。
「な、なんで?」
「言っただろう。今の君にお似合いの服がそれしか無かったんだ」
アルフレッドは観念したように真実を打ち明けた。
まさか、この年齢になって妹のお古に袖を通すとはゴーフルは考えてもいなかった。
そしてその事実は、そのまま彼の身体が小さくなったという事の証明に他ならない。
「うう、恥ずかし過ぎる」
ゴーフルは赤面して思わず顔を隠した。
しかし、隠そうとして出した手首にはリボンの装飾がついており恥ずかしさが増しただけだった。
焦点が合いそうで合わない。
「……フル、ゴーフル気が付いたのか? 」
「アルフレッド、そこに居るのか? 」
自分の声なのに、ゴーフルの耳には不自然に高く聴こえる。
「ああ、そのままでいい。1週間も眠っていたんだ。急に動かない方がいい。それに……」
「それに? 」
「いや、何でもない」
アルフレッドは言葉を濁した。
ようやく、明るさに慣れてきたようでゴーフルはアルフレッドの顔を見る事ができた。
「なんだか、君が大きく見えるよ。それに声が変な感じがする」
「ふむ、まぁそうだろうな」
そして、軽く首を動かして周囲を確認してみた。
「病院なのか? 」
「病院には、違いない。いろいろ事情があって個室をおさえている」
ゴーフルの頭の中に、疑問がいくつか沸いていた。
「やけに、ファンシーな壁紙だな。それに部屋も大きな気がする」
ゴーフルが言うように、病室の壁紙は薄いブルーを基調としており、輪郭のふわりとしたユニコーンや熊のイラストがちりばめられていた。
「この部屋が大きな訳じゃない。君が小さくなったんだよ」
「小さく? 冗談はよしてくれ」
「残念ながら、ジョークじゃない。ここはとある小児病棟の一室で、君は事故で若返り退行をしてしまったんだ」
ゴーフルは、アルフレッドの言葉を聞いてもまだ完全には状況を理解していなかった。
その時、病室のドアがゆっくり開いた。
「あら、もしかして目が覚めたのかしら? 」
やけに、明るい声が聞こえるがアルフレッドの位置からは正体が掴めない。
「すみません、病み上がりに長々と話してしまって」
「構いませんよ。急に目が覚めて知らない部屋に居たら。心細くて泣いてしまうかもしれませんし」
「ええ、ちょっとショックが大きいみたいです。看護士さんからいろいろ話してやって下さいませんか? 」
「わかりました。でもその前にやる事をやってしまいましょう」
「すみません。気が付かなくて」
2人の会話を聞いても、ゴーフルには何の事かさっぱり分からない。
「さぁ、アーシャちゃん気持ち悪かったでしょう? すぐに取り替えてあげますよ」
ようやく、ゴーフルの目の前に看護士の姿が見えてきた。
かなり若い女性の看護で手には何か衣類のようなものを持っていた。
「ああ、包帯ですか……そうか身体が麻痺して気が付かなかったけど怪我をしてるのか」
「大丈夫、アーシャちゃんが寝ている間は私がいつも世話をしてあげてたんだから」
女性が、ベットの下で何かを準備していた。
しかし、ゴーフルの予想に反して女性は布団を捲りあげ始めた。
「ちょ、ちょっと待ってください。何を!?」
「さすがにお布団をどけないと取り替えにくいわ」
「そ、そうですか」
ゴーフルはそこで初めて自分が妙な格好をしている事に気付いた。
色がピンク色だという事は見てわかったが、素材が病院服らしく無いのだ。
それは、頭からすっぽり被るタイプの服で無駄にフリル等の装飾が施されていた。
ゴーフルには、それをどこかで見たような記憶があった。
「あぁ、そいつはマリッサが昔来ていた服だよ。サイズが合うのがそれしかなくてな」
アルフレッドが視線に気付いて説明する。
なんと、それはマリッサが幼き日に来ていたネグリジェだったのだ。
「な、なんで?」
「言っただろう。今の君にお似合いの服がそれしか無かったんだ」
アルフレッドは観念したように真実を打ち明けた。
まさか、この年齢になって妹のお古に袖を通すとはゴーフルは考えてもいなかった。
そしてその事実は、そのまま彼の身体が小さくなったという事の証明に他ならない。
「うう、恥ずかし過ぎる」
ゴーフルは赤面して思わず顔を隠した。
しかし、隠そうとして出した手首にはリボンの装飾がついており恥ずかしさが増しただけだった。
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